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どこからどこまでが対象範囲?正しく知っておきたい安全配慮義務

安全配慮義務についてご存じでしょうか。それなりに経験ある人事・総務の担当者であれば、実務で携わったこともあるかもしれません。今回は、重要なのに見落とされがちな安全配慮義務について、定義と事例、注意したい具体的なポイントも挙げて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.安全配慮義務とは何か
  2. 2.「配慮する」とは一体どこまで?
  3. 3.気をつけたいケース
    1. 3.1.パワーハラスメント
    2. 3.2.過重労働
    3. 3.3.危険地域への海外赴任・出張
  4. 4.安全に配慮することが企業の活性化にも寄与

安全配慮義務とは何か

安全配慮義務とは、労働契約法第5条で定められている、使用者(企業)が従業員の安全に配慮する義務のことです。言い換えると、従業員が安全に働けることは法律で定められており、企業が必ず守らなければならないということでもあります。

違反の際の具体的な罰則については労働契約法では触れられていませんが、安全配慮義務を怠った企業には損害賠償が請求されるおそれがあります。

最近の判例

理解を深めるためにも、安全配慮義務違反の最近の判例として「サニックス事件」について見てみましょう。2018年に判決が下った裁判で、発電設備の製造・販売などを行う株式会社サニックスに対して約1,592万円の損害賠償が命じられたのです。

当該企業では、新人研修として施設に約2週間泊まり込み、朝6時半から夜7時まで座学や試験を行うという過酷な研修を実施していました。このうち休日は1日だけで個人の財布・携帯電話は事前に回収、夜間の外出も禁止されていたといいます。そのなかでも、特に目玉となっていたのが24kmを5時間で歩き通す歩行訓練。原告となった48歳の男性は、歩行訓練中に足をくじき病院に行かせてほしいと講師に訴えたものの、許可されませんでした。

結果として男性は、24kmの歩行訓練を続行し、足に障害が残ってしまったのです。判決では、無理のあるプログラムであり、病院に行きたいという申し出を拒否した企業側の安全配慮義務違反が認定されました。外出禁止やけがの場合にも病院に行かせないなど、典型的なパワーハラスメント(パワハラ)行為に関する判例で、パワハラを許すことは安全配慮義務違反に相当することがよくわかります。


「配慮する」とは一体どこまで?

企業としては十分気をつけたい安全配慮義務ですが、条文を読むだけでは、「従業員の安全」について具体的にどこからどこまで、企業が心がけなくてはならないのかはわかりません。安全配慮義務を履行するには、以下のような人事施策を取ることが基本だと言えるでしょう。

■施設や備品の管理の徹底
■各従業員の労働実態の把握
■健康診断や産業医面談の実施

バイクやトラックを業務で使用している場合には、業務上の災害や事故などが発生しないように常に整備しておくことが必要です。平時とは異なる事態においても、それらを予見し従業員の安全を守る義務が企業にあるということです。

また、長時間労働を行わせる・放置することも安全配慮義務違反と見なされます。企業側は従業員が健康を害する(最悪の場合過労死・過労自殺につながる)ことを予見できるためです。この点からも、各従業員の労働の実態を把握し、なおかつ健康診断を実施することが大切なのです。

従業員一人ひとりの健康状態にまで配慮するというと非常に大変に思われますが、自社だけで完結させようとせず、外部に委託するという手もあります。最近では、健康診断はもちろん、保健指導やストレスチェックなどのサービスが企業向けに提供されています。こうした専門業者の支援を受けることは、適正かつ効率的に従業員の労働・健康管理を行うポイントのひとつだと言えるでしょう。


気をつけたいケース

ここまで見てきたように、安全配慮義務の対象は広範にわたります。そのなかでも、昨今の社会情勢から人事担当者として気をつけておきたい項目をピックアップしました。

パワーハラスメント

働き方改革とともにここ数年、メディアでも頻繁に取り上げられるのがパワーハラスメント(パワハラ)です。例えば、部下に対して大声で怒鳴るような上司がいたとします。こうした態度を放置した結果、部下がうつ病を発症するようなことがあれば、それはもう上司個人の問題ではありません。企業としても安全配慮義務違反と認定されるおそれがあるからです。

通常、人事・総務部門は現場の人間関係に介入することはあまりないかもしれません。しかし、パワハラやセクシャルハラスメント(セクハラ)のような行為が発生しないよう適切な人事施策を実行していく必要があります。先に見たサニックス事件は、まさに常態化したパワハラの結果、安全配慮義務違反として企業側に損害賠償が課されており、人事担当者としては理解を深めておきたいところです。

過重労働

同様に、働き方改革の流れのなかで大きく問題視されているのが長時間労働です。過剰な残業や長時間労働はうつ病のような精神疾患、最悪の場合には過労死や過労自殺を引き起こすことが明らかになっており、国も月80時間を超える時間外労働・休日労働をいわゆる「過労死ライン」と設定しています。

すでに見てきたように、これらを超える、あるいは近い形での過重労働が自社で行われていた場合、安全配慮義務違反のおそれがあります。従業員が「安全に働ける」こととは、企業が労働の実態を正確に把握し、もしリスクがあった場合には適正な対策を取ることなのです。参考になる判例としては、2014年に横浜市で長時間の深夜勤務を終えて帰宅中の男性がバイク事故を起こし死亡した事件で、勤務先の企業が安全配慮義務違反を根拠に約1億円の賠償請求を起こされたケースがあります(2018年に和解勧告)。

危険地域への海外赴任・出張

また、ビジネスのグローバル化が加速するなかで、人事・総務部門ではこれまでに経験がなかった国への海外赴任や出張に対応するケースも増えているかもしれません。従業員が海外で就業している場合でも、当然企業側は安全に配慮する義務が生じます。このためには、現地の情勢や危険情報の共有、万が一の際の支援機関(医療・保険など)との提携など、体制構築が不可欠です。

この場合、より外部の専門家の力が必要になってくるでしょう。また、現地法人は日本よりも小人数で運営されるケースが多く、場合によっては数十人の現地人スタッフをひとりの日本人が統括しなくてはならないこともあります。こうした環境では当然ストレスもたまりやすく、過重労働に自ら陥ってしまう危険も高まります。遠隔地勤務の際にも先述のような健康や労働の管理が必要であることを、念頭に置いておきましょう。


安全に配慮することが企業の活性化にも寄与

従業員との雇用契約が結ばれた時点から、使用者には「安全に配慮する義務」が生じます。従業員も普段は意識しないことであり、見落とされがちなポイントですが、判例を見ても広範にわたる配慮義務があることがわかり、決してないがしろにはできません。実は、こうした配慮義務を果たすことが職場の働きやすさに貢献し、企業が活性化するキーにもなるので、ぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。


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