越境学習とは?組織が目指すイノベーションを人材育成の環境から考える

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この記事のまとめ

・越境学習とは自組織を離れて異質に触れることで、新たな情報や価値観を得ること

・産業構造の変化により、マニュアルのないアイデアや対応力が企業優位性を担保する時代へ

・越境学習には人材育成を含め、企業と社員に多くのメリットがある

・越境学習のメリットを享受するためには、組織のマインドチェンジなど環境整備が必要

目次[非表示]

  1. 1.越境学習とは
  2. 2.人材育成に越境学習が求められる背景
    1. 2.1.日本企業が置かれている状況の変化
    2. 2.2.工業社会とサービス社会で必要な人材の相違
    3. 2.3.人材育成に越境学習が求められる理由
  3. 3.越境学習のメリット 〜組織と個人のイノベーション〜
  4. 4.越境学習の成立に必要な組織マインドや環境の整備
    1. 4.1.社員が学習して変化し続けないと組織は生き残れない
    2. 4.2.企業の短命化による社員と企業の関係の変化
  5. 5.越境学習を導入する際のポイント
  6. 6.まとめ

越境学習とは

自宅でオンラインによる越境学習をする従業員

越境学習とは?

越境学習は、「所属する組織(自分の職場)以外の場で学ぶこと」を定義としています。所属する組織とは、一般的に会社(企業)を指しますが、場合によっては部署を指すケースもあります。


一般的な越境学習

越境学習でイメージしやすいのは、社外の勉強会への参加や社会人大学院での学びです。これらは、ビジネスマンが業務外の時間に自費でおこなう「自己啓発」として一般的です。


近年の越境学習

近年では、企業が人材育成の一環として、社員に外で学ぶ機会を与えることもあります。これは原則業務時間として扱われ、越境学習先も非営利法人他企業などに広がっています。


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人材育成に越境学習が求められる背景

工業社会からサービス社会への変革

日本企業が置かれている状況の変化

越境学習の概要について紹介しましたが、なぜ今、人材育成の文脈で越境学習が語られるのでしょうか。ここでは、日本企業の変化から求められる人材の変化について具体的に解説しながら、越境学習の意義や必要性を紐解きます。


工業社会と日本

工業とは、原料を加工して製品をつくることです。建設業や製造業の多くが該当します。以下のグラフの通り、国内総生産における工業、すなわち第二次産業(建設業、製造業等)の割合は、1955年の36.8%から、1970年には46.4%にまで上昇し、日本の成長を支えてきました。

大規模な設備投資と効率化を追求した大量生産により日本は成長を続け、企業は効率化のノウハウが詰め込まれたマニュアルに沿って、「正確に仕事ができる人材」を求めていました。


産業の構成割合の推移

厚生労働省「産業社会の変化と勤労者生活」より産業の構成割合の推移グラフ

出典:厚生労働省 産業社会の変化と勤労者生活


ポスト工業社会とは?

その後、工業社会の成熟によって「モノあまりの時代」となり、先ほどのグラフでは2008年になると第二次産業の割合が28.8%まで減少しています。一方で、工業の成長鈍化に伴って台頭したのがサービス社会です。同グラフを見ると、サービス業が含まれる第三次産業は年々拡大を続けています。

サービス社会の原則は、大量生産ではなく、個々の顧客の価値にアプローチすることです。よって、そこに画一的なマニュアルやプログラムはなく、社員一人ひとりの「アイデアや対応力」が企業における競争優位性の源泉となります。

サービス社会は工業社会と異なり、大規模な投資も必要としないため、参入障壁は低く、ビジネスモデルの変化スピードが早い点が特徴です。


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工業社会とサービス社会で必要な人材の相違

工業社会からサービス社会へ変わることで、企業に必要な人材はどう変わるでしょうか。工業社会とサービス社会という、2種類の違いを改めて整理しながら紹介します。

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工業社会とサービス社会の違い


工業社会
サービス社会
ビジネスモデル
効率的に大量生産
各々の顧客の価値にアプローチ
設備投資
参入障壁
変化スピード
必要な人材
マニュアルに沿った正確性
アイデアや対応力

上の表が示す通り、それぞれの社会の特徴によって、求められる人材が異なることがわかります。


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人材育成に越境学習が求められる理由

ここでは、各々の社会に求められる人材の育成方法を紹介します。


工業社会における人材育成

工業社会における人材育成は、縦割りの学習であり、職場で専門領域の理論や経験を積み、そこで必要なノウハウを経験的に身に付けていくものでした。しかし、これは事業の変化スピードが比較的緩やかで、根本的なビジネスモデルが変わらない前提での育成法です。


工業社会の顧客ニーズ例と企業の人材育成

工業社会の顧客ニーズ例と企業の人材育成のイメージ


サービス社会における人材育成

サービス社会においては、「根本的な変化」への対応力が求められます。例えば、以下の図の通り、これまで納品していた商品Aを前提にした顧客要望ではなく、0ベースでの対応が必要となり、必ずしも過去の経験が生きるとは限らない点が特徴です。


サービス社会の顧客ニーズ例と企業の人材育成

サービス社会の顧客ニーズ例と企業の人材育成のイメージ


よって、社員には、これまでの経験や社内の常識・文化にとらわれるのではなく、外に出て新しいアイデアや先進的なビジネスモデルに触れる経験を積ませる必要があります。

それを社内に還元してもらうことで、企業の持続的な成長が可能になるため、「越境学習」のニーズが高まっているのです。


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越境学習のメリット 〜組織と個人のイノベーション〜

人材が成長するイメージ

サービス社会における人材育成において、越境学習が効果的であることを紹介しましたが、越境学習による会社と社員(個人)のメリットを詳しく紹介します。


越境学習のメリット

企業側
社員(個人)側

新しいビジネスヒントを取り込める

新しい環境で新しい業務等に挑戦できる

自律型社員への育成に繋がる

異質に触れ、自身のビジネススキル等を客観視できる
離職を防ぐことができる
自分の成長に繋がる

企業のメリットとして、社員の「離職を防ぐことができる」とありますが、越境学習により、なぜ離職防止が期待できるのでしょうか。新入社員5,673名を対象とした以下の調査結果を基に確認してみましょう。

株式会社ラーニングエージェンシーが新入社員を対象とした「働き方とキャリアの意識調査」によると、「今後どのような仕事をしてきたいですか?」という質問に対して、「楽しくてやりがいのある仕事」と回答した新入社員は、全体の回答数5,449名に対して67.0%とトップで、その次に「自分の成長につながる仕事」と回答した新入社員は49.8%と続きます。

また、同調査の「仕事を通して、何を成し遂げたいですか?」において、「自分を成長させたい」と回答した新入社員は、全体の回答数5,614名に対して58.3%とトップでした。

このように仕事で「自己成長」を強く望んでいる社員は多く、自分を成長させる手段として社外での越境学習の機会を提供することで、社員の離職防止が期待できます。


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越境学習の成立に必要な組織マインドや環境の整備

服装自由化初日はけん制してスーツで出社する従業員

ここまでで越境学習の概要やメリットを紹介しましたが、人材育成として越境学習を取り入れる際のハードルの1つが、社内の理解です。自社の環境整備として、社員にどのようなマインドを持ってもらうことが必要となるのか、その一例を紹介します。

社員が学習して変化し続けないと組織は生き残れない

サービス社会においては、企業は生き残りのために、スピード感を持って競争優位の源泉となる知識の獲得や、アイデアの創造を続けていく必要があります。


工業社会においては、以下のようなイメージが強かったのです。

越境学習(社外の学び)=仕事の成果に直結しない周辺スキル


しかし、サービス社会では、以下の通り越境学習に関するパラダイムシフトを促進することが重要です。

越境学習(社外の学び)=仕事の成果に直結し得るスキル


工業社会の経験(成功体験)からの脱却が遅れるほど、サービス社会における企業の成長可能性は低くなります。

また、一部の社員だけがパラダイムシフトを実施しても、その社員が越境学習によって得た知識や経験を社内に還元する際に、社内に煙たがられてしまってはその意味が失われてしまいます。

よって、自社の人事部では越境学習の仕組みを整えるだけでなく、越境学習に関する教育を通して、その重要性をより多くの社員に理解してもらう環境整備などのマネジメントも重要です。


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企業の短命化による社員と企業の関係の変化

これまでは、終身雇用という暗黙の約束の見返りとして、評価・昇進や転勤などを含め、企業は社員に対して大きな力を持っていました。しかし、時代は流れ、企業の短命化と定年延長等によって、終身雇用や年功序列が崩れたことで、企業は求職者や社員に「選ばれるためのメリット」を提供する必要性が生まれています。


従来の企業と社員の関係

企業の短命化による従来の企業と社員の関係のイメージ

先ほどの「働き方とキャリアの意識調査」において、「仕事を通して、何を成し遂げたいですか?」という質問での1位は「自分を成長させたい」という回答であることを紹介しましたが、2位に注目すると「安定した生活を送りたい」という回答でした。

よって、暗黙に約束されていた終身雇用や年功序列の見返りに、社員は「自分自身が仕事やキャリアに求めること」が一定程度満たない場合でも、すぐに離職することはありませんでした。


サービス社会の企業と社員の関係

企業の短命化によるサービス社会の企業と社員の関係のイメージ

一方で、終身雇用制度が崩壊している昨今では、選ばれる企業となるために、求職者や社員が企業に求めていることに注目し、それを提供することが人材の獲得・定着においてこれまで以上に重要となります。

このように、人材確保の観点からも社員が求める自己成長の機会を用意することは欠かせません。人材確保の文脈でも、越境学習が効果的であることを社内に理解してもらうことで、越境学習をより効果的に導入することができます。


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越境学習を導入する際のポイント

他社留学を選定するのはどれぐらい工数がかかるか試算している従業員

越境学習を自社のみで整備するには大きな工数がかかり、多様な調整事項が発生します。しかし、外部のサービスを効率よく利用することで、様々な課題をクリアし、手間をかけず安価に導入することが可能です。

JTBベネフィットが提供している「越境&実践型研修 他社留学」では、およそ300社の企業の中から越境学習先を選べることに加えて、週5日の本格的な他社業務への参画から、週1日のみの参画など、様々なオプションからニーズに合わせて選択することが可能です。

他社留学を導入することで、求職者や社員への訴求力を高めるとともに、「人材」から「人財」への育成を図り、企業価値の向上を目指すことをおすすめします。


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まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、越境学習について詳しく紹介しました。
ポイントは以下の4つです。

・越境学習とは自組織を離れて異質に触れることで、新たな情報や価値観を得ること

・産業構造の変化により、マニュアルのないアイデアや対応力が企業優位性を担保する時代へ

・越境学習には人材育成を含め、企業と社員に多くのメリットがある

・越境学習のメリットを享受するためには、組織のマインドチェンジなど環境整備が必要


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