目標管理のフレームワーク「OKR」とは? KPI、MBOとの違いも理解しよう
OKRは、目標管理形式として近年多くの企業から注目を集めています。従来の方法としてはKPIやMBOがよく用いられていましたが、OKRとの違いはどこにあるのでしょうか。今回は、自社がOKRを導入するメリットとその方法についても説明します。
目次[非表示]
- 1.OKRとは?
- 2.OKRにおける指標
- 2.1.Objectives
- 2.2.Key Results
- 3.OKRとKPI、MBOの違い
- 4.OKRのメリットとデメリット
- 5.OKRの設定方法
- 5.1.企業全体のOKRを設定する
- 5.2.部署ごとにOKRを設定
- 5.3.従業員個人のOKRを設定する
- 5.4.レビューを繰り返して進捗状況を確認する
- 6.OKRの導入事例
- 6.1.全社員が同じ目線で仕事ができた事例
- 6.2.企業の一体感を高めた事例
- 7.OKRのよくある失敗例
- 7.1.目標とマーケットが乖離している
- 7.2.実現可能な目標かどうか精査していない
- 7.3.従業員の個人レベルまで落とし込めていない
- 8.まとめ
OKRとは?
OKRとは、英語で「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略で、高い目標を達成するための管理形式です。米インテル社が考案し、シリコンバレーにある企業や国内の大手企業も取り入れていることで注目を集めています。
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OKRにおける指標
OKRは、企業内すべての従業員や部署が同じ方向性と優先順位を共有するために導入されます。目標とプロセスの可視化が容易であることから、高い頻度でそのレビューをおこなうことが特徴で、会社と従業員の方向性を揃えやすいと言われています。
ここでは、OKRの指標であるO(Objectives)とKR(Key Results)を具体的に見てみましょう。
Objectives
OKRにおける目標は、チャレンジングなものであるべきです。また、部署やチーム全体を鼓舞するようなシンプルで覚えやすいものにします。そこには、数字などの定量的な指標は入れません。目標を高めに設定しますので、60~70%の達成で良いとします。
Key Results
Objectivesに対して、Key Resultsは数値で測れる具体的、定量的な指標です。1つの目標に対して、2~5個のKRを設定します。Objectivesと同じく、60~70%の目標達成で良いとします。
OKRで設定した期間終了時には、達成度をスコアリングします。それぞれのKRに対して、0.0~0.9(実際に導入している企業の方式例)、もしくは%で採点し、その平均がObjectivesのスコアになります。しかし、これが従業員を評価するための指標として用いられることはありません。
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OKRとKPI、MBOの違い
OKRと同じように、目標達成のために用いられる管理方法として、ピーター・ドラッカーによって提唱された目標管理制度を意味するMBO(Management By Objectives)や、重要業績評価指標を意味するKPI(Key Performance Indicator)があります。MBOやKPIがOKRとどのような点が異なるのか、3つの点を取り上げます。
レビューの頻度
MBOのレビューの頻度は、1年ごとにおこなわれます。一方で、OKRはレビューの頻度が高いという特徴がある点で、一般的には四半期ごともしくは毎月おこなわれます。そのため、OKRではより柔軟に目標達成の度合いを検証することが可能で、今日において目まぐるしく変わる様々なビジネスシーンに適合します。
目標の共有範囲
MBOの目的は報酬決定にあるため、目標は従業員各自で異なります。また、KPIはプロジェクト達成のために用いられる方法のため、部署ごとに異なります。これらに対して、OKRは企業全体のチャレンジングな目標が提示されますので、それに合わせて各従業員や各部署がKRを設定します。結果として、社内に一体感をもたらして士気を高め、コミュニケーションを活発にし、従業員エンゲージメントの向上につながります。
達成の指標
MBOやKPIの目標達成を図る指標は、組織ごとやプロジェクトごとに異なります。これに対して、OKRではSMARTと呼ばれる客観的で公正な指標で目標達成度が評価されます。
SMARTとは、以下5つの頭文字をとったもので、この5つの観点から、定量的な評価が可能になります。
Specific(具体的)
Measurable(測定可能な)
Achievable(達成可能な)
Related(経営目標に関連した)
Time-bound(時間的制約がある)
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OKRのメリットとデメリット
OKRのメリット
高い目標を設定することにより企業が成長できる
OKRで目標を設定し、レビューを短期間でおこなうことから、高い目標を設定してその達成目安の60~70%を超える目標を達成することができれば、短期間で企業の成長が可能です。ただし、この目標は短期間で達成することが求められる経営課題というよりも、企業全体のビジョンの側面が強いと言えます。各部署、各従業員がこのビジョンに近づいているかこまめにレビューすることにより、レビューのたびに企業全体が成長します。
従業員のエンゲージメント向上
エンゲージメントとは企業や組織、ブランドなどに対する愛着や思い入れのことです。OKRによって、従業員は企業のビジョンを絶えず思い起こし、自分に何が求められ、期待されているかを確認します。OKRの目標はチャレンジングなものですが、報酬や評価とは切り離されているため、従業員は失敗を恐れることなく、主体的かつ大胆に行動することが可能です。OKRが作り出す企業と従業員とのこのような関係性が、従業員エンゲージメントを向上させます。
社内でのコミュニケーションが促進される
OKRでは、すべての部署、すべての従業員が同じ方向を向いています。それぞれはライバル関係ではなく、チームです。各自が「会社のビジョン達成のために何ができるか」という共通の視点を持っているため、互いに信頼し合い、知恵を出し合う必要があります。結果として、部署や役職を超えたコミュニケーションが促進されることになります。
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OKRのデメリット
目標設定が高いためストレスになる可能性がある
OKRの目標設定が高いことが従業員のエンゲージメント向上につながらなければ、モチベーションを低下させる場合があります。OKRの設定期間が終了しても、目標達成が100%ではないとさらなる向上が求められることから、従業員によっては達成感を感じにくく、ストレスを抱え続けることになる可能性もあります。
レビューを頻繁におこなうため負担になる
MBOと比べて、OKRはレビューを頻繁におこないます。達成困難な目標に対して、頻繁にレビューを迫られるため、目に見える実績を出せていない従業員はプレッシャーや負担を感じることになりかねません。
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OKRの設定方法
企業全体のOKRを設定する
目標設定は非常に重要です。達成不能であってはなりませんが、達成が容易と思われるものでも不適切です。すべての従業員がこの目標を達成したいと思えるようなビジョンをシンプルな言葉で表しましょう。そのためには、経営陣が一方的に決定するのではなく、すべての従業員からのフィードバックが必要です。Objectiveが決定したら、それに紐づける形で2~5個のKey Resultsを設定します。
部署ごとにOKRを設定
企業全体のOKRと整合する形で、部署ごと、チームごとにOKRを決定します。Key Resultsは、SMARTを念頭において、客観的かつ定量的に決めるようにしましょう。
従業員個人のOKRを設定する
部署内、チーム内で各従業員のOKRを明確にし、相互に矛盾したり、重複したりしていないかを確認します。この際、各自が設定したOKRに納得しているかどうかの確認が非常に重要です。押しつけられているように感じているとしたら、OKRの基本コンセプトに反しているため、モチベーションが低下してしまいますので修正や改善をすることも必要です。
各自が納得の上でOKRを設定し終えたら全員分のOKRを共有できる場所へ保存し、全社員が進捗状況をお互いに確認し合えるようにします。目標管理シートを作成して、各自が目標達成状況について記録できるフォーマットを準備しておくのも良いでしょう。
レビューを繰り返して進捗状況を確認する
運用を開始したら、リーダーや上司は部下と1on1ミーティングを実施し、OKRの進捗状況についてレビューします。この際、気をつけるべきことは、レビューの頻度が従業員の負担にならないペースにすることと、部下の主体性を引き出しつつも上司がプレッシャーを与えないようにすることです。
また、進捗状況が芳しくないからといって、それを給与や評価に結びつけることを絶対にしてはいけません。この場合は、OKRでの問題点を把握し、対応策や改善点を部下と検討しましょう。
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OKRの導入事例
全社員が同じ目線で仕事ができた事例
国内のフリマアプリ企業では、KRをシンプルにわかりやすく設定することを重視しています。そのことにより、全社員が何を目指しているのかきちんと把握することができ、同じ目線で仕事ができると言います。結果として、社内のすべての社員は同じレベルの言語で話すことができ、コミュニケーションが円滑です。また、OKRがシンプルでわかりやすく細かすぎないため、チームや社員としては大胆な発想や施策が可能になっています。
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企業の一体感を高めた事例
この国内のビジネスチャットツール企業は、当初は社員数も少なく、目標管理設定の文化がありませんでした。しかし、主力商品がヒットし、資金調達ができるようになると社員数が急増し、企業の戦略が各部まで浸透していかない状態が発生したため、OKRの導入に踏み切ったと言います。導入当初は、MBOのようにOKR達成率を社員の評価や給与に直結する傾向があり、OKRを活用している醍醐味が感じられていなかったようです。そこで、OKRを数字達成のための目標とするのではなく、「チャレンジのためのコミュニケーションツール」として位置づけるようにしました。つまり、OKRを会社全体に公開して社員同士で目標を共有し、企業全体の一体感を高めるためのツールとして活用したということです。
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OKRのよくある失敗例
目標とマーケットが乖離している
OKRでは企業全体の目標を設定し、それをトップダウン方式で各部署や各従業員へと紐づけしていきます。そのため、もし、全体の目標設定が不適切であれば、企業全体の方向性が大きく崩れてしまうことになります。
とりわけ、ベンチャー企業やIT系など自社をとりまくマーケットの環境変化が激しい業界の場合、設定した目標が時間の経過とともにどんどんマーケットのニーズと乖離していく可能性があります。それを回避するためには、OKRの設定期間を短めにすることが必要です。
実現可能な目標かどうか精査していない
OKRにおいて、KRは定量的かつ客観的に設定する必要があります。この数値設定は、その後の数ヶ月にわたる各従業員の業務に大きな影響を与えます。もし、実現可能な目標が設定されていなければ、「達成不能だから」といってさじを投げる人や、なんとか達成しようとして過大なストレスを抱える人が生まれる可能性があります。
例えば、人事領域において「ハイパフォーマーやイノベーション人材の獲得」「採用や人材育成におけるコストを削減」など、根拠なく理想だけで設定するのなら「絵に描いた餅」になってしまいます。それを回避するためには、OKRの設定の際にしっかりとした現状分析をおこない、あらかじめ仮説検証をしておくことが必要です。
従業員の個人レベルまで落とし込めていない
企業のOKRは、企業から部署やチーム、そして、最終的には従業員個人レベルにまで落とし込む必要があります。コンセプトとしてはわかりやすいですが、部署ごと、チームごとまでは落とし込めたとしても、従業員一人ひとりに対してSMARTを活用してKRを設定することは決して簡単なことではありません。とりわけ、初めてOKRを導入する場合、過去のデータや検証がありませんので、個人がやりがいを感じることができるレベルをよく把握した上で設定することが必要です。
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まとめ
OKRはシリコンバレー企業で導入されるようになったことからわかるように、最大の特徴は目標がチャレンジングなことです。日本の企業文化は目標を100%達成しようとする几帳面さがありますので、その必要はないというコンセンサスと各従業員の評価とは切りわけることが重要でしょう。これが部署や従業員個人へ周知されていけば、企業全体として、よりしなやかに成長していけるはずです。
世界的に優れた目標管理形式と言われるOKRですが、このOKRの考え方をベースに、さらに「自発性」「コラボレーションによる一体感」、そして、「楽しい」を生みだす事を目的として発案された新たな目標管理形式に、「GKA」があります。
GKAは、次の語句の頭文字をとったものです。
Goal : 目標
KR (Key Result): 主な成果
Action : アクション
GKAはOKRの上位互換とも言えますが、「ゴール向かって進むために、ゴールへの道筋を想定し、それを進捗観察できるように示し、さらに関係者と共有する」というゴール達成へのモデルを作り、それをSNSのシステムに取り入れた唯一のサービスが、JTBベネフィットが提供する「Goalous(ゴーラス)」という組織活性化サービスです。OKRの思想をベースにツールとしてさらに進化させたGoalousで、あなたの組織に「新しい」を生み出しましょう!
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