人材を定着させるには?限られた資源で離職を食い止める方法
採用難の状況が深刻化し、人材定着(リテンション)を喫緊の課題とする企業が増えています。特に、中小企業にとっては、一度採用できた社員を定着させられるかどうかは死活問題となりつつあります。
今回は、従業員が離職を決意する主な原因から、企業が人材を定着させるための有効策について紹介します。低離職率・高定着率の実現に向けて、ぜひ参考にしてください。
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目次[非表示]
- 1.人材の定着は死活問題
- 1.1.少子高齢化にともなう採用難の恒常化
- 1.2.中小企業の高い離職率
- 1.3.大企業も中途採用を拡大
- 2.離職の主要な理由
- 3.人材を定着させる方法1 ~昇給や公平な評価でやりがいを感じさせる~
- 3.1.能力や適性に応じた昇給・昇進をおこなう
- 3.2.成果や業務内容に応じた正当な人事評価をおこなう
- 3.3.キャリアパスを見通せるようにする
- 3.4.従業員の「やりたいこと」を極力叶える
- 4.人材を定着させる方法2 ~従業員の働きやすさを整える~
- 4.1.管理職の選定と教育
- 4.2.風通しの良いコミュニケーション
- 4.3.休暇制度の充実
- 4.4.労働時間の短縮
- 4.5.柔軟な働き方
- 5.有形無形の評価を「見える化」して人材を定着させる
人材の定着は死活問題
近年、企業の採用における難易度が高まっていることもあり、特に中小企業において人材を定着させることは非常に重要です。この現状に至った背景を見ていきましょう。
少子高齢化にともなう採用難の恒常化
日本では、少子高齢化によって若手(20~30代)の労働人口が今後も減少していく見込みです。すでに若手人材の獲得競争は激しくなり、採用難が恒常的になっています。
中小企業の高い離職率
厚生労働省の統計データによると、中小企業では大企業に比べて離職率が高い傾向があります。2016年の離職率は、大企業(従業員1,000名以上)で14.8%であるのに対して中小企業では15.5%、2017年の離職率は大企業の14.1%に対して中小企業では15.5%となっています。人材を採用できたとしても、その後、定着しないで離職が多ければ、安定的な組織運営は難しくなるでしょう。
大企業も中途採用を拡大
近年、新卒の一括採用の撤廃の流れを受け、大企業が中途採用の枠を広げる動きが高まっています。これによって、経営基盤や各種待遇面でどうしても劣りがちな中小企業は優秀な人材の採用がさらに難しくなるでしょう。また、現在、中小企業で働く従業員たちにとっても、より良い待遇や労働環境を求めて転職しやすい市場があるということになります。
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離職の主要な理由
転職が珍しいものではなくなった現代、従業員はどのような理由で離職・転職を決意しているのでしょうか。離職の主な原因を見ていきましょう。
やりがい
エン・ジャパンが2020年8月に発表した実施したアンケート調査で、「転職を考えたきっかけは何でしたか」という問いに対して、最も多い回答が「やりがい・達成感を感じない」でした。20代の回答者のうち42%、30代の回答者のうち41%がこのように答えています。やりがいや向上心、達成感は、仕事をする上で重視するポイントとして上位に挙げられています。
給料・年収
上記と同じ質問での次点は「給与が低い」という回答でした。この回答をした人は、20代で41%、30代で37%と高い割合です。特に、今年に関しては新型コロナウイルスの影響で休業要請があったことから給与が低下している傾向にあります。したがって、全体的な勤務日数が減っていることから生産性も低下し、会社全体の業績や成果に対する目標が未達成である可能性が高い企業が多いため、今後も当面の間、給与の低下は避けて通れないと考えられます。
労働時間・労働条件
厚生労働省が公表した『令和元年度雇用動向調査』を見ると、転職の理由として「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」とする回答の割合が全体的に高い傾向にあります。年齢層によっては、この回答が「給与等収入が少なかった」という回答を上回っています。
また、性別で比較すると男性は「会社の将来が不安だった」、女性は40代以上になると「定年・契約期間の満了」が高い傾向にあります。
人間関係
厚生労働省による同調査での性別・年代別の離職理由を見ると、「職場の人間関係が好ましくなかった」という回答の割合が高いです。男性ではとりわけ20代に多い回答で、女性も20代がもっとも高いですが、すべての年齢層で他の項目より割合が高いです。
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人材を定着させる方法1 ~昇給や公平な評価でやりがいを感じさせる~
では、人材を定着させるために企業はどのようなことに取り組んでいけばいいのでしょうか。離職理由として多い項目を見ると、まずは給与面や評価の在り方を見直し、やりがいを喚起できるような仕組みをつくることがひとつの打開策となりそうです。具体的な方策を見ていきましょう。
能力や適性に応じた昇給・昇進をおこなう
中小企業庁のデータによると、人材の定着に成功した企業が感じる「有効な施策」のトップは「能力や適性に応じた昇給・昇進」(27.6%)でした。やはり、昇給や昇進につながる評価体制を整えることが重要となるようです。
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成果や業務内容に応じた正当な人事評価をおこなう
上記の同じ質問での次点は「成果や業務内容に応じた人事評価」で21.7%です。「成果や業務内容に応じた人事評価」は、企業の中核人材(18~54歳)が重要だと考えている企業の取り組みにも合致しており、半数以上が重視していると回答しています。
大幅な昇給が難しかったとしても、会社から認められている、評価されているという事実は「やりがい」に直結します。給与面だけでなく、仕事にやりがいがあるか、自分に合った業務内容かどうかも重要視されているのです。これらは、中小企業でも満たせる要件ではないでしょうか。
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キャリアパスを見通せるようにする
社内に明確なキャリアパスを構築しておくことも、離職率・定着率を左右する要素です。大企業の多くが取り組む事項ですが、中小企業でも不可能ではないと考えます。
社内で明るいキャリアパスが確保できれば、従業員が他社への転職を視野に入れる可能性を低減できます。従業員は自社内で目標を確立し、高い意識を保って仕事に向き合っていけるでしょう。
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従業員の「やりたいこと」を極力叶える
従業員が「やりたい」と思っていることが、自社で叶えられるかどうかも重要ポイントです。自主的な立案やモチベーションにつながる配置転換などは、可能な限り応じていきましょう。
定着率を向上させるためには、従業員の持つ意向をしっかりと理解していくための施策や提案も必要になってきます。
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人材を定着させる方法2 ~従業員の働きやすさを整える~
「やりがい」と並んで人材の定着に必要とされるのが「働きやすさ」です。従業員が働きやすい環境を提供するために、企業にはどのようなことができるのでしょうか。
管理職の選定と教育
マネジメント層である上司と現場の部下の関係性が、定着や離職に大きな影響を与えます。能力やスキル、適性を満たした管理職を選定しましょう。また、管理職に対して充実した教育を継続していくことも、働きやすい環境づくりに有効です。
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風通しの良いコミュニケーション
職場の人間関係が良くないと、従業員にとって「働きやすい環境」とはいえなくなるのは明白です。コミュニケーションの取りやすいワークフローや設備環境を整えるなどして、風通しの良いコミュニケーションを促しましょう。
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休暇制度の充実
休暇制度を充実させることで、従業員は十分な休養・休息を確保し、より仕事に集中できるようになります。その結果、高いパフォーマンスや成果が現れることを期待できます。休暇制度はただ制定するだけでなく、従業員が休暇を取りやすいような仕組みをつくることも重要です。
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労働時間の短縮
近年、ワークライフバランスを重視する労働者が増えています。残業発生が多ければ、その分、従業員の仕事以外の時間は削られてしまうことは明らかです。長期化すれば不満の増大、心身の不調など悪循環に陥って離職に至る可能性を高めます。
企業が長時間勤務を適切に制限したり、短時間の就業を可能にしたりすることで、従業員は充実したプライベート時間を確保できるでしょう。
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柔軟な働き方
現代は働き方の多様化が進んでいます。自社に多様な働き方のできる体制を整えることも、定着を促す有効な対策といえるでしょう。特に、女性従業員の場合、出産や育児などのライフイベントがキャリアにも大きく影響します。今後は、家族の介護が必要になる労働者が増えていくことも見込まれています。
時短勤務やテレワークなどの導入で勤続しやすい環境を整えることが、離職率の低下と定着率アップにつながるでしょう。
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有形無形の評価を「見える化」して人材を定着させる
中小企業が人材を定着させるには、自社の人事評価や、働きやすさなどを適切にブラッシュアップし続けることが大切です。そのためには様々な側面から現状を見える化し、課題を見つけ出すことが先決です。
そのプロセスは、アナログで進めようとすると膨大な時間と工数を要するものです。そこでおすすめしたいのが、JTBベネフィットが提供する「サンクスコレクト」というインセンティブプログラムです。サンクスコレクトでは、従業員の成果や意欲への評価・感謝をわかりやすく示すことができるため、従業員の承認欲求を満たしつつやりがいを引き出すのに役立ちます。
また、評価基準となるスキルや能力の見える化を可能にする人財(※)育成サービス「flappi(フラッピ)」を展開しています。企業の課題抽出や人材育成に、ぜひお役立てください。
※JTBグループでは、社員の成長・活カが会社の成長、グループの発展を支えるという基本理念のもとで人は財産であるとし、「人材」を「人財」と表記しています。
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