組織開発とは?組織の力を発揮させる具体的な進め方と問題点
自社の成長に意欲的な企業に注目される組織開発は、人事部門の新たな武器ともいえる今話題の考え方です。今回は、人材開発と似て非なる組織開発が近年の日本で求められる理由と、実際にどのようなことをおこなうかについて詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.組織開発とは
- 1.1.組織開発という概念
- 1.2.注目理由からわかる組織開発の目的
- 1.3.組織開発と人材開発
- 2.組織開発の手法
- 2.1.組織開発の開発対象
- 2.2.組織開発のプロセス
- 2.3.組織開発の具体的手法
- 3.組織開発の課題と限界
- 3.1.組織だけに注目した開発は限界を迎える
- 3.2.従業員の成長が組織を底上げする
- 3.3.従業員の意識が変わることにより組織の改善が実現
- 4.組織開発を下支えする人材への支援を
組織開発とは
まずは組織開発とは何なのか、その概念や定義、目的から確認していきましょう。
組織開発という概念
組織開発は、1950年代からアメリカを中心に発展してきた概念で、英語では「Organization Develeopment(OD)」と呼ばれています。
日本国内では「組織のパフォーマンスを向上するために、組織内のプロセスに介入すること」と説明されることが多いですが、この定義を読んだだけで具体的な内容がイメージできる方はおそらく少ないのではないでしょうか。
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注目理由からわかる組織開発の目的
組織開発の意味や目的は、この取り組みが求められるようになった背景に目を向けるとよくわかります。
従来の人事部門では、企業の抱えるさまざまな課題に対して、採用、評価、異動、配置といった人にアプローチする方法で改善を実施するのが一般的でした。これに対して、激しい環境変化に対応するために機動的な事業運営が必要な近年の企業では、採用活動や人事評価などでアプローチできる個人よりも、組織力の向上につながる施策を人事部門に求めるようになりつつあるのです。
こうした経緯で注目度が高まる組織開発には、個人よりも上司やチームメンバーなどとの関係性を変革することで、組織全体のパフォーマンスや持続可能性を改善する目的があります。
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組織開発と人材開発
人材開発と組織開発の違いは、人事部門に求められる「新入社員の早期戦力化」などの課題を使って説明すると非常にわかりやすいでしょう。
個人にアプローチする人材開発の場合、研修を受けた新入社員がなかなか成長しなければ本人に問題があると考えます。そのため、この開発手法では、成長の遅い従業員に教育プログラムや部署異動の提案をおこないます。
一方、組織における関係性で考える組織開発の場合、新人や少し成長が遅い従業員への対応策として確認するのは、上司と本人の間でおこなう成長課題の動向や役割のすり合わせや、同じチームメンバーとの間にチームビルディングなど協力体制の確認といったことが中心です。
ここで重要となるのは、人材開発と組織開発のどちらが良いかを考えるのではなく、これらが相補的な概念であることを頭に入れた上で、現状の課題に合った組み合わせで対応を進めていくことです。
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組織開発の手法
組織開発の手法については、開発対象、プロセス、具体的な取り組みにわけて考えるとわかりやすくなります。
組織開発の開発対象
人材よりも組織内の関係性に目を向けるこの手法は、以下のような成果を求める開発対象に適しています。
・グループ内に協調や協働の気持ちを生む
・経営陣や職場への信頼性を高める
・企業理念や文化、価値観を共有されやすくする
・新製品などへの創造性を高める など
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組織開発のプロセス
この手法のプロセスとして最も有名なのは、組織開発のパイオニアであるマサチューセッツ工科大学の研究者リチャード・ベッカードが定義した7つの項目を実践するというものです。
1. 計画に基づく
漠然とした目標設定ではなく、「何を、いつまでに、どんな状態にしたいか」を明確にします。
2. 組織全体に関わる努力
最初はチームやグループといった小規模な組織で開発をおこない、徐々に大きな組織にその方法を共有します。
3. トップ主導でマネジメント
経営陣のトップが開発に関わることが重要です。そうすることで、長期的な目標や企業理念の発信がしやすくなります。
4. 組織の有効性・健全性を高める
メッセージの発信と共有を繰り返すことで、経営陣などのトップと従業員の関係性が強まり、下部組織のニーズも把握しやすくなります。
5. 行動科学の知識を活用
組織の変革に対して強い志を持つ協力者が必要です。こうした人材を巻き込むことで、議論や動機付けがスムーズに進みます。
6. 組織のさまざまなプロセスを対象
実践した取り組みの効果を評価分析しながら、目標の再設定や微調整をおこないます。したがって、全社レベルの組織開発には長期的な取り組みが必要です。
7. 計画的に介入しゆさぶる
目標と結果を共有することで、組織開発に携わる従業員に成果を実感させます。すると、次の目標に向けたモチベーションも高まります。
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組織開発の具体的手法
組織開発をするときには、以下のような手法の中から、企業の抱えた問題や目標に応じたものを選択する必要があります。
コーチング
コーチングとは、相手の中に解決策があるというスタンスで観察や傾聴をおこなうことです。上司と部下の関係改善に対話型のコーチングを取り入れると、自主的に仕事に取り組む姿勢や、新しい挑戦に向けたモチベーションも向上します。
フィードバック
管理職がプロジェクトや人材評価をおこなったら、その内容を一人で抱え込まずにチーム員にフィードバックするのが理想です。フィードバックを通して評価の基準や理由が明らかになると、離職理由にもつながる不公平感などが生じにくくなります。
企業文化の改新
組織開発を成功させる上で、企業文化は非常に大切なキーワードです。まず上司と部下、管理職と経営陣などの関係性を改善するには、人材開発ではないアプローチ法を会社の中に少しずつ浸透させる必要があります。また、環境変化に耐えられる柔軟な組織をつくるためには、古い文化を捨ててダイバーシティなどの新しい価値観を取り入れる必要もあるでしょう。
情報の可視化
組織開発や人材開発を効果的におこなうためには、現状生じている問題点や改善策、評価などをすべてのメンバーが確認できるようにする可視化が必要です。どんな小さな情報でも見える・共有できるデータにしておくと、その内容を見たほかの経営陣などから新たな改善策が生まれやすくなります。
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組織開発の課題と限界
近年の日本で注目される組織開発にも、以下のような課題や限界があります。
組織だけに注目した開発は限界を迎える
まず、組織開発ばかりに着目をして、今まで続けてきた人材開発をおろそかにすると、個々の従業員の成長や満足度といった部分で大きな壁にぶつかりやすくなります。先ほども紹介したとおり、人材開発と組織開発は相互に組み合わせることによって、企業に大きなメリットをもたらす手法です。したがって、新たに組織開発に挑戦する場合においても、今まで人事部門が取り組んできた採用や教育、配置などの人材開発は、双方のバランスをとりながら続ける必要があるでしょう。
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従業員の成長が組織を底上げする
理論上、組織開発によってどんなにチーム内の協力体制が整っても、個々の従業員のスキルや能力が低いままでは企業の成長は期待できません。組織開発の成果を高める上でも、人材開発における教育プログラムや研修などを積極的におこない、従業員に個人レベルの成長を促す取り組みが必要です。
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従業員の意識が変わることにより組織の改善が実現
組織開発を成功させるためには、経営陣や管理職、従業員といったすべての人の意識を変える取り組みも必須です。例えば、「仕事は見て覚える」というやり方で長年続けてきた職場では、後輩の指導をする上司や管理職にコーチングやフィードバックをおこなう意味などから説明をして、意識を変える必要があります。
また、協調性や協力体制が低い現場においても、メンバー同士が助け合うことで生じるメリットなどを説明し、ただ一方的にお願いをするのではなく、それぞれの意識を変えることを目指して推進する必要があるでしょう。
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組織開発を下支えする人材への支援を
組織開発とは、個人よりも上司と部下などの関係性を変革することで、組織全体のパフォーマンスなどを高める概念です。相補的な位置付けとなる人材開発と組み合わせることで、企業の問題解決や成長が促されます。組織開発のプロセスには、リチャード・ベッカードが定義した7項目を用いるのが一般的です。また、具体的な手法としては、コーチングやフィードバック、情報の可視化などがあります。
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