今こそ知りたいフレックスタイム制度とは?メリットや事例も紹介
コロナ禍でテレワークや時差出勤などの働き方改革が推進される中、あらためて注目を浴びているのがフレックスタイム制度です。フレックスタイム制度が導入されれば、従業員により働きやすい環境を提供でき、人材の定着にも役立ちます。今回は、フレックスタイム制度の定義やメリットデメリット、導入成功事例を紹介します。
目次[非表示]
- 1.フレックスタイム制度とは
- 1.1.フレックスタイム制の定義
- 1.2.フレックスタイム制とコアタイム
- 1.3.フレックスタイム制の法的位置付け
- 2.フレックスタイム制度のメリットとデメリット
- 2.1.フレックスタイム制度のメリット
- 2.2.フレックスタイム制度のデメリット
- 3.フレックスタイム制度の導入成功事例
- 3.1.スーパーフレックスタイム制度と在宅勤務制度を導入し、生産性を落とさずにワークライフバランスを実現できた事例
- 3.2.全部署にスーパーフレックスタイム制度とツールを導入したことで、コミュニケーション低下を防いだ事例
- 3.3.社員の意見を取り入れ「私生活」と「業績」の向上を目指した運用で、全社の労働意欲が上がった事例
- 4.フレックスタイム制度導入を成功させるには従業員のサポートを
フレックスタイム制度とは
「フレックスタイム制度」という言葉は広く浸透していますが、今まで曖昧な理解にとどまり明確な内容までは把握していないという方も多いかもしれません。まずは、フレックスタイム制度の定義や位置付けについて解説しますので、この機会にしっかりと理解しておきましょう。
フレックスタイム制の定義
フレックスタイム制は、日本では1988年4月に導入され、始業時間や終業時間、勤務時間そのものを自ら決めることができる歴史のある制度です。いわゆる定時がないため、従業員はその日のスケジュールにあわせて自由に出社時間を調整できます。これにより、従業員の仕事とプライベートのバランスがうまく保たれるため、双方に好影響をもたらす効果があります。
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フレックスタイム制とコアタイム
フレックスタイム制には、1日の中にコアタイムという時間帯が設けられています。コアタイムとは必ず出社していなければいけない時間帯を意味しており、多くの会社でコアタイムが設けられています。
コアタイムを設定する目的は、短時間でもすべての従業員が1日の中で必ず顔を合わせる時間をつくることです。フレックスタイム制の導入によって、業務が機能しなくなるのではないかと懸念している企業は、コアタイムの設定がおすすめです。なお、コアタイム以外の時間帯はフレキシブルタイムといい、この時間内であればいつ出勤、退勤しても構わないとされています。
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フレックスタイム制の法的位置付け
フレックスタイム制の導入には、就業規則の変更と労使協定の締結が必要です。就業規則の変更は、「始業時間・終業時間を労働者に委ねる」といった文言を追加し、フレックスタイム制度を規定しなければなりません。労使協定に関しては、労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する従業員と会社側と十分な話し合いをおこない、フレックスタイム制の要件やルールを構築する必要があります。
労使間で定めるべき項目は、以下のとおりです。
・対象となる労働者の範囲
・清算期間と起算日
・清算期間における総労働時間
・標準となる1日の労働時間
・コアタイム
・フレキシブルタイム
また、フレックスタイム制度の導入において注意すべき点は、残業代の支給についてです。誤解を生むケースも多いですが、フレックスタイム制度だからといって、残業代が出ないことはありません。上記で定めた「清算期間における総所定労働時間」よりも実働が多ければ、会社側は時間外手当を支給する義務があります。また、フレックスタイム制度での残業時間が、法定労働時間の総枠を超える場合は、36協定の届出が必要です。間違いのないように注意しましょう。
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フレックスタイム制度のメリットとデメリット
では、フレックスタイム制度を導入するメリットとデメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。それぞれ詳しく解説していきます。
フレックスタイム制度のメリット
フレックスタイム制度のメリットとして、代表的な4点を紹介します。
1.従業員の負担が軽減する
フレックスタイム制の導入により、従業員の心身の負担が軽減します。例えば前日、顧客先に訪問していたため帰宅が遅くなったとしても、翌日、アポイントがなければ通常より遅い時間に出社することが可能です。自分の心と体の状態をケアしながら、無理なく仕事を進められるため、仕事のパフォーマンス向上も期待できます。
2.生産性が向上する
フレックスタイム制により、従業員の生産性向上を後押しできます。1日のスケジュールを自由に組み立てられるため、臨機応変かつ効率的に仕事を進めることが可能です。また、プライベートとの両立もしやすくなるため、ストレスが軽減され心身ともに健康的な日々を過ごせるようになります。
3.人材確保につながる
働き方の種類が多様化している現代では、労働者が会社に求めるのは金銭面だけではなく、いかに自分らしい働き方ができるかというポイントが重視されています。そのため、フレックスタイム制度導入のアピールにより、人材確保の可能性が広がります。それだけでなく、既存社員からの満足度を高め「長くこの会社で働きたい」と感じてもらうことで、優秀な人材の離職抑制にもつながるでしょう。
4.ワークライフバランスが実現する
フレックスタイム制度は、従業員のワークライフバランスの実現を援助します。人生の充実や幸せは、仕事のみからもたらされるものではありません。心の豊かさをつくる家族との時間や趣味の時間、学びの時間などプライベートの充実があるからこそ、仕事へのモチベーションやパフォーマンスも保てるのです。子どもがいる家庭では、子どもとの時間を大切にしながら働けるため、子育て世代の従業員への訴求にもなるでしょう。
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フレックスタイム制度のデメリット
一方で、フレックスタイム制度にはデメリットもあります。考えられるデメリット3点を紹介します。
1.コミュニケーション不足になる
フレックスタイム制の導入による懸念点のひとつに挙げられるのは、従業員同士のコミュニケーション不足です。コアタイムを設ける場合は必ず顔を合わせる時間帯がありますが、そうでない場合は「数日間一度も会っていない」といった従業員も出てくる可能性があります。そうなると、コミュニケーションが希薄となり、業務の進行がスムーズにいかなくなるリスクも考えられます。在宅勤務でフレックスタイム制を導入すると、さらにコミュニケーションが不足する懸念があります。
2.社外と時間が合わない
フレックスタイム制により、社外の動きと時間が合わず業務が非効率になる可能性があります。自社内では支障がなくても、営業職など対企業の業務においては、時間帯が合わないことにより業務が円滑に進みづらいケースもあるでしょう。ましてや、相手の企業も同様にフレックスタイム制を導入している場合もありますので、双方に相手の事情が理解できても物理的な面で時間が合わせにくくなる可能性があります。
3.自己管理のできない従業員の問題
フレックスタイム制は自由度の高い勤務形態であると同時に、自律が求められるものでもあります。目の前のことに流されて本来やるべきことを後回しにしたり、うまくスケジューリングができず時間の勘違いで遅刻してしまうなど、後々の大きなミスや損失につながりかねません。
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フレックスタイム制度の導入成功事例
いざフレックスタイム導入に動き出そうとしても、会社の制度変更から従業員への浸透、円滑な運用まで、考えなければならない課題が多くあり、二の足を踏んでいる企業もあるかと思います。しかし、まったく同じ状態からスタートし、今ではフレックスタイム制が定着した企業は多くあります。
ここでは、実際に導入した企業の成功事例を紹介します。
スーパーフレックスタイム制度と在宅勤務制度を導入し、生産性を落とさずにワークライフバランスを実現できた事例
スーパーフレックスタイム制とは、コアタイムを設けず、すべての時間をフレキシブルタイムとするフレックスタイム制のことです。この企業ではスーパーフレックスタイム制により、従業員は時間に縛られず、自分のやるべきことをやるべきタイミングでおこなえるようになったことが理由で、生産性やモチベーション向上につながったといいます。また、在宅勤務制度を導入しスーパーフレックスタイム制度との併用を可能としたことで、より働き方に自由度が増し、育児や介護との両立が支援できているとのことです。
全部署にスーパーフレックスタイム制度とツールを導入したことで、コミュニケーション低下を防いだ事例
この企業ではコアタイムで時間の制限ができることで、業務によっては社外とのやり取りに不具合が生じていましたが、全部署の従業員を対象者にスーパーフレックスタイム制度を導入したことにより、効率や生産性が向上したとのことです。業務では、スケジュールの共有システムやビデオ会議ツールを活用しているため、スーパーフレックスタイム制度で懸念されるコミュニケーション不足に陥ることなく、スムーズな業務遂行が実現しているといいます。
社員の意見を取り入れ「私生活」と「業績」の向上を目指した運用で、全社の労働意欲が上がった事例
この企業では社長自らが、人生を豊かにする家族と過ごす時間や趣味の時間の大切さを説いていました。ただ、それだけでなく、業務における成果にもこだわり、私生活と業績向上の両立を図る方法を従業員に提案させたといいます。その結果、従業員の労働意欲や会社に対する期待度や信頼感が高まり、生産性や業績が向上したとのことです。
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フレックスタイム制度導入を成功させるには従業員のサポートを
フレックスタイム制度は、従業員が自由なスタイルで働ける魅力的な仕組みです。従来よりも家庭やプライベートとの両立が容易となるため、従業員の心身にかかる負担は軽減されるでしょう。また、フレックスタイム制度の導入により、従業員の生産性、会社全体の業績向上が期待できるため、会社にとってもメリットは大きいです。フレックスタイム制度をスムーズに導入しメリットを現実化するためにも、まず従業員が持つ能力を可視化していきましょう。
JTBベネフィットが提供する「flappi(フラッピ)」は、従業員一人ひとりの個人データを一元化し、分析から可視化まで可能です。可視化されたデータから会社や個人の問題点が明確化されるため、フレックスタイム制度の導入にも役立つこと間違いありません。flappiを活用し、会社と従業員双方に寄り添った働き方の構築を進めていきましょう。
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