組織分析とは何か?その理論と組織の確実な改善につなげる考え方
企業を成長させるためには、組織全体を客観的に把握する必要があります。そのときに用いられる組織分析は、組織開発を進める上でとても重要な前提となります。また、企業にストレスチェックが義務付けられた近年では、こうした方法を併用することでさらに精度の高い組織分析ができるようになりました。
今回は、企業の客観的把握に欠かせない組織分析の特徴や、同時に用いられることの多いストレスチェックについて、わかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.組織分析とは
- 1.1.組織分析のフレームワーク「7つのS (7s)」
- 1.2.SWOT分析との違い
- 2.組織分析とともにおこなわれるストレスチェックとは?
- 2.1.ストレスチェックの目的
- 2.2.ストレスチェックの導入義務
- 2.3.ストレスチェックの集団分析は努力義務
- 2.4.集団分析で組織の問題点を洗い出す
- 3.組織分析を活かすためには
- 4.組織分析は従業員の長期的な成長を見据えて
組織分析とは
組織分析とは、企業における問題や課題などを洗い出すために、米国の経営コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱する7つのフレームワークやテンプレートなどを通して、組織の全体像を把握することです。この7つのフレームワークは、ハード面の要素3つとソフト面の要素4つから構成されています。組織分析を通して強い企業を構築するためには、ハードとソフトの両面から弱点を補いあうイメージで改善などを進める必要があります。
組織分析のフレームワーク「7つのS (7s)」
組織分析に用いられる7つのフレームワークはすべてSから始まる英語のキーワードで、それぞれに以下のような定義や特徴があります。
1.戦略(Strategy)
市場や業界内における競争優位性を確保し、事業実績を上げる方向性や目標を策定することです。そのためには、会社の強みと弱みを把握した上で、成長性の高い事業ドメインに資源を集中させていく必要があります。
2.組織(Structure)
会社の組織を構成する従業員の能力や実績、経験などを把握した上で、各自の潜在的な能力を最大限に発揮できるように適材適所の人材配置や役割分担を明確にすることです。この作業には、環境調整も含まれます。
3.システム(Systems)
自社の経営戦略を円滑に推進するために、マネジメントシステムの分析や構築をすることです。お客様や市場のニーズに迅速な対応をするためには、会社側の意思決定を効率的におこなえるシステム運営を考える必要もあります。マーケティングの仕組みづくりも、このステップでおこなわれます。
4.スキル(Skills)
自社における得意分野の特許や技術力、ジャンルなどを把握することです。グローバル化しつつある市場でライバルとの競争に打ち勝つには、会社の長所であるスキルを多面的に活用し、自社の成長につなげる必要があります。
5.人材(Staff)
人材育成や人材教育が効果的におこなわれているかということです。このポイントにおける分析と改善がうまくいっていると、企業成長を妨げる優秀な人材の離職や、従業員がなかなか成長しないことによる世代交代の問題なども解消しやすくなります。
6.スタイル・文化(Style)
経営陣や管理職における業務に対する価値観や姿勢のことです。これらは、企業における風土などとも大きく関係する重要ポイントです。例えば、経営者のリーダーシップがトップダウン型とボトムアップ型のどちらかを把握するだけでも、目指すべき経営スタイルは変わってきます。
7.価値観(Shared values)
企業がスムーズに成長を遂げるためには、社内で仕事における価値観やビジョンが共有されているかも大変重要です。このポイントが高い会社は、社員一人ひとりが企業理念やスローガンを理解することで、目的意識を持って協力や連帯ができる傾向があります。
SWOT分析との違い
7sと比較されることの多いSWOT分析は、Strengths(強み)・Weaknesses(弱み)・Opportunity(機会)・Thread(脅威)の4つから組織などの内部環境と、組織を取り巻く外部環境の両方から分析をおこなう手法で、どちらかといえば現状から将来までの分析をするときに適した考え方です。厚生労働省は、環境分析の手法としてSWOT分析を紹介しています。
これに対して、社内に限定したフレームワークとなる7sは、自社の現状の分析だけでなく独自の改革案の構築にも使える手法です。多角的な企業分析をするときには、7sとSWOT分析を組み合わせて使うことがおすすめです。
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組織分析とともにおこなわれるストレスチェックとは?
労働安全衛生法の改正にともない2015年よりスタートしたストレスチェックも、組織分析に役立てやすい制度です。ぜひ、この機会に確認しましょう。
ストレスチェックの目的
ストレスチェックにおける本来の目的は、鬱などのメンタルヘルス不調を未然に防止するために、従業員自身が自分のストレスの状態を把握し、以下のような早期の対策や改善をするよう促すことです。
・ストレスをためすぎないように対処する
・ストレス状態が高い場合、医師の面接で助言をもらう
・会社側で仕事量の軽減などの措置を講じる
・会社側で職場環境を改善する
ストレスチェックの導入義務
この制度では、50人以上の労働者がいる事業場に対して、年1回すべての人にストレスチェックをおこなうことを義務付けています。ただし、以下の条件に該当する従業員は、チェック義務の対象外です。
・契約期間が1年未満の労働者
・通常の所定労働時間の4分の3未満しか働いていない短時間労働者
ストレスチェックの集団分析は努力義務
ストレスチェック制度では、実施者に部課やグループ単位での集計・分析をしてもらう集団分析を、企業における努力義務にしています。例えば、質問票の項目ごとに平均値などを算出や比較をすれば、その部署で働く人員にどんな傾向のストレスがかかっているかの把握もしやすくなります。
ただし、集団規模が10人に満たない場合は、容易に個人特定ができてしまいますので、全員の同意が得られない限り結果の提供は受けられません。ですから、基本的には10人以上の部課などを集計対象とするのが理想とされています。
集団分析で組織の問題点を洗い出す
国が推奨するストレスチェックの質問票には、働きやすい環境かどうかの判断につながる以下のような内容が並んでいます。
・仕事量
・仕事のペース
・意見の反映
・作業環境
・適性
・技能や知識の活用
・働きがい など
こうした項目の集団分析をおこなえば、従業員における仕事への満足度も把握しやすくなります。ストレスの原因には、組織がうまく機能していないことも大きく関係しています。ネガティブな項目にチェックをする人が多い場合は、それが潜在的な不満や離職要因になっている可能性もあります。
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組織分析を活かすためには
ここまで紹介した7sやストレスチェックを企業の組織分析に活用する場合、以下のポイントに注意をして作業を進める必要があります。
分析結果を具体的な施策につなげる
まず、組織分析をする上で最も大切なのは、7sなどの視点で調査分析した結果を、経営陣や管理職の誰もがわかるように可視化や共有化することです。そうすると、そのデータを確認したメンバーから、具体的な解決案などを引き出しやすくなります。
また、どんなに効果的なフレームワークを使っていても、ただ分析をしただけでは企業の成長は見込めません。ですから、7sやストレスチェックなどを用いた調査分析などをおこなった後は、必ず何らかの形で明確な行動指針を打ち出すようにしてください。
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職場や企業全体の環境を改善
企業における本質的な問題を解消するには、場当たり的なものではなく、包括的な改善策を実施する必要があります。例えば、ストレスチェックの集団分析で「時間内に仕事が処理しきれない」の回答が多かった場合、チームの作業人数や工期を見直すだけでは、場当たり的な対応となってしまいます。
こうしたときには、従業員に多くの負担がかかる根本的な原因に着目した上で、今ある資源に依存するのではなく、優秀な技術者の新規採用などを検討してみても良いかもしれません。
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個々の従業員のウェルビーイング(Well-Being)と成長がすべての基本
組織分析を会社の成長に結びつけるためには、「組織」ばかりに目を向けるのではなく、「個々の従業員」の力を引き出す施策も必要です。各従業員がストレスなく満足して働ける環境が整うと、研修などによる人材育成や人材教育の効果も高まりやすくなります。また、こうした施策によって高まった個々の能力は、強い組織構造をつくる上でも非常に役立つことでしょう。
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組織分析は従業員の長期的な成長を見据えて
組織分析とは、組織における全体像を分析することで、問題などの改善につなげる取り組みの総称です。一般的な企業では、マッキンゼーが提唱する7つのフレームワーク(7s)の視点から客観的な分析がおこなわれています。このほかには、近年多くの企業に義務付けられるようになったストレスチェックの活用もおすすめです。
従業員の長期的な成長を見据えた組織分析を成功させるには、7sで洗い出した傾向や問題を、働く環境づくりに携わるすべての担当者が確認できるように「見える化」することが必要です。そこで、従業員一人ひとりのコンディション変化の見える化を進めるときには、JTBベネフィットが専門性の高いアライアンスと提携した健康支援サービスの「コンケア」を活用してみてください。
また、個々の従業員のスキルやマインドを見える化したい場合には、多様な情報の分析やフィードバックが可能な人材育成ソリューションの「flappi(フラッピ)」の活用もおすすめです。各ツールとも組織分析には大変有効ですので、ぜひご検討ください。
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