ブレジャーとは?ニューノーマルで注目される出張制度の新たなスタイル

​​​​​​​ブレジャーを利用する従業員

「ブレジャー(ブリージャー)」とは、ビジネスとレジャーを組み合わせる出張制度のことで、直訳すると「出張休暇」と言われています。日本人にとってはまだまだ浸透していないブレジャーですが、世界的にみるとすでにノーマルになっています。

今回は、ニューノーマルにおける働き方としてのブレジャーの概要と、導入におけるメリット・デメリットを企業・従業員のそれぞれの側面から検証し、ブレジャーを導入するために企業側にどのような対応策が求められるか紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.ブレジャーとは?
    1. 1.1.日本と世界におけるブレジャーの現状
    2. 1.2.ブレジャーとワーケーションの違い
    3. 1.3.ブレジャーとテレワークの違い
  2. 2.従業員編:ブレジャー導入のメリット
    1. 2.1.家族が同伴することでプライベートの時間を一緒に過ごすことができる
    2. 2.2.有給休暇取得の促進になる
    3. 2.3.出張部分の交通費や宿泊費は会社負担
  3. 3.従業員編:ブレジャー導入のデメリット
    1. 3.1.定着するまでは周囲の目を気にする場合もある
    2. 3.2.オンとオフの切り替えが難しい
    3. 3.3.家族分の旅費は自己負担
  4. 4.企業編:ブレジャー導入のメリット
    1. 4.1.生産性向上が期待できる
    2. 4.2.企業ブランディングやCSRに効果がある
    3. 4.3.エンゲージメントの向上や人材定着につながる
  5. 5.企業編:ブレジャー導入のデメリット
    1. 5.1.勤怠管理や業務に対する評価が容易ではない
    2. 5.2.出張先の通信環境が不安
    3. 5.3.事故が発生した際の労災認定の線引きが曖昧
  6. 6.まとめ

ブレジャーとは?

ブレジャーを利用してホテルで仕事をする従業員

ブレジャー(Bleisure)とは、「Business(仕事)」と「Leisure(余暇)」を組み合わせた造語で、出張の前後に休暇を組み合わせて出張先で余暇が目的の旅行や観光をすることをいいます。また、ブレジャーはブリージャーと呼ばれることもありますが、本記事では、観光庁の表記に合わせて「ブレジャー」とします。

日本と世界におけるブレジャーの現状

日本でのブレジャーはまだまだ浸透されておらず、認知度は20%程度に過ぎません。また、働き方改革で年次有給休暇の取得を1年に5日間以上と義務化されたにも関わらず、エクスペディア・ジャパンが2019年3月におこなった調査によると、出張に有給休暇を組み合わせた経験がないという回答は全体の79%に及びます。

他国と比較すると、アメリカでは2016年の時点で46%がブレジャーを利用しており、2017年では、アメリカ以外にもイギリス、ドイツ、インド、中国で出張したことがあるビジネスパーソンの約60%がブレジャーだといいます。また、中国以外のアジア諸国でブレジャーの経験がない人の割合は、韓国では43%、香港では36%、インドに至っては15%ということですから、多くのアジア諸国でブレジャーを利用したことがあるといいます。このことから、日本は明らかに「ブレジャー後進国」といえそうです。

ブレジャーとワーケーションの違い

ブレジャーと似た言葉に「ワーケーション(Workation)」があります。ワーケーションは仕事(Work)と休暇(Vacation)を組み合わせた造語で、こちらはプライベートの旅行先で仕事をすることをいいます。前述のとおりブレジャーの認知度が約20%に対し、ワーケーションの認知度は約50%で比較的知られているといえます。

ワーケーションの目的は、ブレジャーでおこなうことと限りなく同様ですが、出張のプランが先にあり、そこに休暇を組み合わせるブレジャーと異なり、ワーケーションは先に旅行のプランを決めて、現地で自分の仕事をするというものです。ブレジャーもワーケーションも、どちらもワークライフバランス実現のための働き方として注目されており、出張先あるいは旅行先に家族を同伴すれば、仕事以外の時間は余暇を楽しみながら一緒の時間を過ごすことができます。

こうした働き方が注目されるようになってきた背景には、全体の37%が「ブレジャーをしてみたい」と願いながら、72%が「ブレジャーしにくい環境」と回答してしまう日本の職場環境が関係しています。それは日本企業の強みであり、弱みでもある集団主義であり、周りの人と同じように振舞わなければならないという同調圧力やプレッシャーが主な理由です。
そのため、有給休暇が付与されていても、上司や同僚の反応を気にして取得しづらい傾向があります。しかし、休暇に仕事を組み合わせれば、有給休暇も比較的取得しやすくなることでしょう。


観光庁によるワーケーションとブレジャーのロゴマーク

観光庁が作成したワーケーションとブレジャーのロゴ

ブレジャーとテレワークの違い

ブレジャーもワーケーションも、オフィス以外の離れたところで働きますが、テレワーク(リモートワーク)とはどういう違いがあるのでしょうか。

総務省によると、テレワークとは「ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されていますので、テレワークと目的こそは異なりますが、ブレジャーもワーケーションもテレワークの一種と考えて良いでしょう。


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従業員編:ブレジャー導入のメリット

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家族が同伴することでプライベートの時間を一緒に過ごすことができる

出張は基本的に遠方であるために移動に時間がかかり、宿泊がともなうものの過密スケジュールのため、現地でゆっくりする時間はないことがほとんどです。また、出張が増えると、家を空ける期間が長くなりますので家族と一緒に過ごす時間が減り、人によってはそれがストレスになることもあります。

しかし、ブレジャーを導入することで家族も同伴すれば、仕事以外の時間は家族とのプライベートな時間を過ごすことができます。これまでは置いてけぼりになっていた家族にとっても、ブレジャーで同伴することで出張への意識が変わるかもしれません。そして、これは働き方改革の柱であるワークライフバランスの向上にもつながります。

有給休暇取得の促進になる

ブレジャーはあくまでも出張がメインですから、職場の上司や同僚の目も気にせずに出張と合わせて有給休暇を取得することができます。職場でブレジャーが定着していけば、会社全体での有給休暇取得も促進されることでしょう。結果的に、従業員一人ひとりが心と時間に余裕をもって働くことができるので、モチベーションが維持でき、生産性向上も期待できます。

出張部分の交通費や宿泊費は会社負担

従業員の交通費は会社が負担してくれますので、お財布にも優しいというメリットがあります。ただし、基本的には休暇のために宿泊を延長したり、別途費用が発生したりする分は自己負担になりますので、どの範囲まで会社が負担してくれるのか事前に確認しておきましょう。


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従業員編:ブレジャー導入のデメリット

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定着するまでは周囲の目を気にする場合もある

周りの目を気にする日本人ならではですが、例えブレジャーといっても、この制度が導入されてからしっかりと定着するまでは、「出張と見せかけて遊びに行っている」と思われる可能性があります。

オンとオフの切り替えが難しい

これはテレワークも同じ問題になりますが、人によってはブレジャーもオンとオフの切り替えが難しいかもしれません。それぞれの性格や仕事の進め方にもよりますが、「仕事は仕事、遊びは遊び」ときっちりわけたい方にとっては、ブレジャーが中途半端な働き方に思えて受け入れるのに抵抗があることでしょう。

家族分の旅費は自己負担

前述のとおり、従業員本人の交通費や出張での宿泊費は会社負担ですが、同伴する家族の旅費は自費になりますので注意が必要です。ただし、これは企業のルールにもよりますので、メリットと同様にどの範囲まで会社が負担してくれるのか事前に確認しておきましょう。


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生産性向上が期待できる

ブレジャーを導入することで、従業員がしっかりと有給休暇を取得して余裕のある働き方ができれば、企業全体の生産性向上に期待できます。

企業ブランディングやCSRに効果がある

他社に先駆けてブレジャーを導入すれば、多様な働き方を実施している会社として周囲から認知されることで自社のブランド力が向上します。したがって、他社との差別化を図ることができるため、特に採用活動において企業の魅力につながり、優秀な人材の獲得にも役立つことでしょう。

エンゲージメントの向上や人材定着につながる

ブレジャーを導入することは既存の従業員に対して、生産性向上のように目に見える効果だけでなく、柔軟な働き方を導入している企業という認知のもとにエンゲージメント(帰属意識)も向上されます。その結果、従業員がこの会社で長く働きたいを思うようになることで離職を防止し、新たな採用や人材教育にかかるコストの削減にも効果があります。


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企業編:ブレジャー導入のデメリット

リモートワークや在宅ワークでの勤怠管理や業務評価に頭を抱える上司・人事担当者

勤怠管理や業務に対する評価が容易ではない

ブレジャーは出張と余暇を切りわけることはできても、テレワークと同様に、従業員が見えない環境ですので出張部分の勤怠管理が容易ではありません。また、もし、余暇を申請していた日が出張、つまり仕事になった場合やその逆の場合の管理も従業員本人の姿が見えないため、システムを構築や導入していない場合は従業員本人の自己申告に頼らざるを得ません。そして、業務内容についても同様に見えづらいですから、目標に対する成果について評価しがちで、目標達成へのプロセスが評価されにくい傾向があります。いずれも人事総務担当者の方は、明確なルール作成に骨が折れるかもしれません。

出張先の通信環境が不安

テレワーク全般の問題として、セキュリティ面の不安があることと、とりわけ出張先がネットワークの不安定な場所であれば、業務環境が理想的ではなく生産性がかえって低下する可能性があります。特に、郊外や地方ではネットワークの整備が万全ではない場合もありますので、事前によく下調べをしてからブレジャー実施の可否を判断する必要があります。

事故が発生した際の労災認定の線引きが曖昧

ブレジャーの厄介な問題の一つに、もし、出張先で事故が起きた場合、責任の所在が曖昧になる可能性がある、という点もあります。出張先での仕事が終了し、従業員が休暇中に自らの責任で引き起こした事故であれば、企業側は責任を負わないことが明白です。
しかし、企業にはそもそも従業員に対する安全配慮義務(労働契約法5条)が課されていますから、内容によっては出張中の事故と認定され、しかも、企業側に予見可能性、結果回避可能性があれば、損害賠償を請求されることにもなりかねません。

また、出張中の労災認定の問題もあります。一般的に出張は全過程が業務行為であり、移動、食事、宿泊などの間も事故が起きれば労災扱いとなるとされています。しかし、出張中であっても、積極的な私用、私的行為をしている場合は業務遂行性が失われ、何か事故が起きた場合も労災は適用されません。
では、ブレジャーの場合はどのように処理すれば良いのでしょうか。出張の最初から家族とともに目的地に赴いた場合、出張と休暇の線引きは明確にできるのでしょうか。問題に発展しない様に、あらかじめ様々なケースを想定してルールを作成し、ブレジャーを申請する従業員に対して事前の告知や書類を取り交わしておき、トラブルを回避することが必要です。


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まとめ

ブレジャーは多くの国では当たり前でも、日本で根付くのが難しい一番の理由は、同僚や上司の目を気にする文化的背景かもしれません。しかし、新型コロナによって仕事以上に家族や自分の生活そのものを大切にする人が増えていることや、コストの削減を目的にオフィスの縮小や移転が増えている昨今では、ブレジャーという新たな出張スタイルがニューノーマルになるかもしれません。柔軟な働き方の一つとして、そして、有給休暇取得促進の施策として、ブレジャーを取り入れてみてはいかがでしょうか。


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