ワークエンゲージメントとは?モチベーションと生産性向上の取り組みを紹介

​​​​​​​​​​​​​​職場のメンタルヘルスケアが企業の生産性やリスクを左右。その課題と対策方法とは?2

社員が高いモチベーションで働けるように企業が配慮すべきことは以前から大きく変わっていませんが、近年は「ワークエンゲージメント」という視点が注目されています。今回は、ワークエンゲージメントとはどのような状態のことなのか、そして、企業が高めるべき理由や高める方法について、事例を交えて紹介をします。

目次[非表示]

  1. 1.ワークエンゲージメントとは?
    1. 1.1.ワークエンゲージメントの定義
    2. 1.2.ワークエンゲージメントと関連した4種類の概念
    3. 1.3.日本のワークエンゲージメントの現況
  2. 2.ワークエンゲージメントを高める必要性と得られるメリット
    1. 2.1.従業員のメンタルヘルスを向上させる
    2. 2.2.パフォーマンスと生産性が向上する
    3. 2.3.離職率を抑制できる
  3. 3.ワークエンゲージメントを高める方法
    1. 3.1.参加型討議を実施して組織を活性化
    2. 3.2.CREWプログラムで対話を積み重ねる
    3. 3.3.ジョブ・クラフティングの研修プログラム
    4. 3.4.職場の思いやり行動を増やす
  4. 4.ワークエンゲージメントが高い企業の事例
    1. 4.1.国内IT企業A社
    2. 4.2.電気計測器の開発、生産、販売、サービスを手掛けるB社
    3. 4.3.アメリカのドーナツチェーンの日本法人C社
  5. 5.まとめ

ワークエンゲージメントとは?

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ワークエンゲージメントの定義

ワークエンゲージメントは、日本語では「仕事に対する深い関係」と訳され、ユトレヒト大学のウィルマ―・B・シャウフェリ教授が提唱した概念です。同教授によると、ワークエンゲージメントとは「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。」と定義づけられています。

ワークエンゲージメントのポイントとなる要素は、以下の3点です。

1. 仕事への肯定的な態度
2. 活動水準が高い状態
3. 一時的な変動はあるとしても基本的には継続する状態

なお、この記事では「ワークエンゲージメント」と表記していますが、厚生労働省をはじめ「ワークエンゲイジメント」という表記をしている資料やデータもあります。

ワークエンゲージメントと関連した4種類の概念

ここでは、ワークエンゲージメントに関連した4種類の概念の意味や違いを解説します。


1. 組織コミットメント

「組織コミットメント」とは、特定の組織、つまりこの記事でいう会社に対する個人の一体感が関与した相対的な強さのことです。
ワークエンゲージメントは個人と仕事の結びつきを示している点で、組織コミットメントとは異なっています。


2. ワークモチベーション

「ワークモチベーション」とは、目標に向けて行動を方向づけて活性化し、それを維持する心理的プロセスのことです。
ワークエンゲージメントは動機づけられた結果としての感情や認知に関連づけられている点で、ワークモチベーションとは異なっています。


3. ワーカホリック

「ワーカホリック」は、活動水準が高いものの罪悪感や不安を回避するために仕事をおこなっていることが多く、仕事への態度にはネガティブな傾向がみられます。
そのため、仕事への肯定的な態度を特徴とするワークエンゲージメントとは異なります。


4. バーンアウト

「バーンアウト」は「燃え尽き症候群」とも訳されますが、仕事に没頭した結果、満足や喜びが得られず、疲労困憊して働く意欲を喪失してしまうことです。これは、ワークエンゲージメントとは対極に位置する状態といえるでしょう。また、テレワークでは仕事とプライベートの線引きが難しいため、最近ではバーンアウトが急増しているとの報告もあります。

仕事への態度・認知
(不快)
活動水準(+)
仕事への態度・認知
(快)
ワーカホリック
ワークエンゲージメント
バーンアウト
組織コミットメント
活動水準(-)

出典:リクルートマネジメントソリューションズ ワーク・エンゲイジメントを高める4つの方法より作成

日本のワークエンゲージメントの現況

ワークエンゲージメントを測定するために、広く活用されているユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)に基づき国際比較すると、日本は他国よりもスコアが低い状況にあります。しかし、この測定方法だけで日本人のワークエンゲージメントが低いと結論づけるべきでしょうか。

実は、UWESに則って測定すると、日本のスコアが非常に低く出るのには理由があります。それは日本人の「自己批判バイアス」の強さです。日本人は、自分の状態を厳しくとらえ、周囲との関係の中で批判的な定義をする傾向が強いのです。これは、欧米諸国の人々が自分に言い聞かせてモチベーションを高める「自己高揚バイアス」が強いのとは逆といえるでしょう。そのため、欧米諸国のエンゲージメントスコアは高めに出て、日本のスコアは低めに出てしまうことに注意する必要があります。


ワークエンゲージメントスコアの国際比較

厚生労働省 島津明人(2016)「ワーク・エンゲイジメント-ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を」の資料より抜粋

出典:厚生労働省 島津明人(2016)「ワーク・エンゲイジメント-ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を」


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ワークエンゲージメントを高める必要性と得られるメリット

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従業員のメンタルヘルスを向上させる

従来のメンタルヘルス対策は、仕事におけるメンタルヘルス不調要因やストレスを取り除くことに主眼が置かれてきました。これに対し、企業がワークエンゲージメントの向上に取り組めば、個人と組織が持つ強みを生かすような施策が打ち出され、心身の健康と仕事のパフォーマンスの両面に良い影響が生まれます。

パフォーマンスと生産性が向上する

上述したように、ワークエンゲージメント向上への取り組みはメンタルヘルスへポジティブな影響があるだけでなく、業務のパフォーマンスと生産性の向上にもつながることから人材育成に効果的です。

厚生労働省が2019年に発表した資料によると、「3年前と比較し、労働生産性(時間当たりの成果)が向上しているか」という質問に対し、「いつも感じる(6点)」、「よく感じる(4.5点)」、「時々感じる(3点)」、「めったに感じない(1.5点)」、「まったく感じない(0点)」とスコア化したところ、ワークエンゲージメントスコアと以下のような相関関係が見られました。


ワークエンゲージメントと個人の労働生産性

厚生労働省 「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けての資料より抜粋1

出典:厚生労働省 「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて

左の図は全ての企業で、右の図は人手不足の企業におけるスコアですが、いずれもワークエンゲージメントが高ければ高いほど、従業員は労働生産性の向上を感じていることがうかがえます。

離職率を抑制できる

ワークエンゲージメントが高く、仕事に対する肯定的な態度が継続して維持できれば、必然的に組織コミットメントも高まるため、離職率を抑制できます。


ワークエンゲージメントと定着率・離職率

厚生労働省 「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けての資料より抜粋2

出典:厚生労働省 「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて

上の図は、ワークエンゲージメントスコアに対して新入社員の入社3年後定着率と離職率の相関関係を示したものです。おおよそワークエンゲージメントスコアが高ければ高いほど新入社員の定着率が高く、離職率が低下する傾向がうかがえます。従業員の離職を抑制するためには、メンタルヘルスケアをはじめとした健康経営施策や福利厚生の充実も効果的です。


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ワークエンゲージメントを高める方法

リアルに伝わるオンラインコミュニケーションを実践する従業員

日本におけるワークエンゲージメント研究の第一人者である慶應義塾大学教授の島津明人氏は、ワークエンゲージメントを高めるためには「個人の資源」と「仕事の資源」の向上が重要だといいます。同氏によると、「個人の資源」とは自己効力感(ある行動をうまく実行できるという自信)や組織での自尊心、楽観性、レジリエンス(粘り強さ)のことで、「仕事の資源」とは経営層との信頼関係や上司から部下の支援、褒めてもらえる職場、成長の機会のことを指します。

これらを向上することこそがワークエンゲージメントの向上につながるのですが、具体的には以下の4つの方法を提案します。

参加型討議を実施して組織を活性化

この取り組みによって、参加者は日頃の困りごとや課題と思っていることと、理想の職場に関して意見交換し、具体的な方策について話し合うことができます。しかし、その場でいきなり討議を始めるのではなく、前もって職場の強みについて従業員がどのように感じているのか、アンケートやチェックリストなどをもとに調査・集計して背景を探っていきます。そして、単なる意見交換に終わらないように、組織活性化アクションを策定する取り組みを実施しています。

CREWプログラムで対話を積み重ねる

「CREW」とは「Civility(礼節、丁寧さ),Respect(敬意)and Engagement(エンゲージメント) in the Workplace」の略で、2005年にアメリカで開発されたプログラムです。CREWを導入する目的は、お互いを知り、丁寧に敬意をもって接する関係性を構築し、いきいきと働ける職場づくりです。

例えば、話す内容は「仕事で大事にしていることとは?」や「この職場で働いて良かったと思う時はどんな時?」など、テーマに基づいて1週間に1回15分や2週間に1回30分といったような、実施しやすい時間帯に対話をおこないます。大切なのは1回の時間を長くすることではなく継続することで、3ヶ月以上セッションを積み重ねることが望ましいとされています。

ジョブ・クラフティングの研修プログラム

「ジョブ・クラフティング」とは、従業員がやりがいを持てる働き方や、周りとのかかわり方、考え方を工夫しながらモチベーションを高めていく手法です。例えば、スケジュール管理やToDoリストの作成を工夫したり、先輩や同僚との関わり方を積極的に変えたり、自分の仕事の目的ややりがいをとらえ直すことなどが含まれます。

職場の思いやり行動を増やす

これは、単に職場で「思いやりを示しましょう」と呼びかけるだけでなく、「自分が仕事中に同僚からしてもらいたい援助」や「異なる立場で現実的・具体的にどのような援助ができるか」をディスカッションすることが含まれます。その後、話し合ったことに基づき「思いやり行動」を2週間実践したら、「実践が難しかったもの」や「どうしたらより良い助け合いができるのか」を再び話し合います。


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ワークエンゲージメントが高い企業の事例

服装規定を廃止し、オフィスカジュアルで出社してMTGする従業員

国内IT企業A社

A社は、2013年に5年後の夢として「国内IT企業でもっとも働きがいのある企業になる」と掲げ、企業活動には「社員の声が原点」、「徹底的な仕組み化」、「社員による主体的な活動」の3つの重要性に重きを置いています。
また、施策の1つとして、四半期に1度おこなうパルスチェックという測定ツールで、「仕事軸:仕事量が適切か、自分で優先度をコントロールできているか」、「組織軸:部門の雰囲気、上司などとの人間関係」、「心身軸:心身の調子」、「やりがい軸:過去3ヶ月の仕事の充実感とこれから3ヶ月のワクワク感」の4つからなる質問に回答してもらいます。もし、気になる結果が出たら経営層が社員一人ひとりと話し合い、フィードバックをおこないカウンセリングするようにしています。


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電気計測器の開発、生産、販売、サービスを手掛けるB社

「人間性の尊重経営」を推進するB社では、世代別、階層別、キャリア別でスキルアップへ向けた教育体系を構築し、毎年更新・拡充しています。キャリアパス支援の面でも、1つの上の職位やグローバルなビジネスにチャレンジしたい社員に向けてステップアップコースを設けています。
また、内発的な動機づけを強めるために社内表彰制度や、外部のコンテストに申し込みをして第三者に評価されるような機会をつくったり、アイデア月間をつくってアイデアを募集したり社員が主体的におこなう改善活動も活発です。


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アメリカのドーナツチェーンの日本法人C社

C社では、従業員が意欲的に働くためには、会社のビジネスやビジョンを「自分ごと化」することが欠かせないと考えています。そして、半年に1回の社員集会時にワークショップを実施し、会社が目指す経営を言語化して共有し、社員も当事者としてどのように実現を目指すかを考えてもらっています。


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まとめ

社員がワークエンゲージメントを向上させつつもバーンアウトしないようにするためには、企業が定期的に社員のコンディションを客観的に把握しておくことがおすすめです。前項で取り上げた事例を参考にしながら効果的な施策を策定し、継続的な社員のモチベーション維持と企業の生産性向上に努めましょう。


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