最大100万円助成。賃金引上げと設備導入を支援。厚生労働省の業務改善助成金とは?
平成30年度の最低賃金は全国平均で874円であり、平成29年度の848円から26円引き上げられました。また、主要都市別の最低賃金は、北海道835円、宮城798円、東京985円、神奈川983円、愛知898円、大阪936円、福岡814円、熊本762円、沖縄762円となり、軒並み25円以上アップしました。
2019年度(令和元年度)の最低賃金は10月頃に改定される予定ですが、最近の好景気を鑑みれば、また引き上げられるでしょう。特に東京や神奈川あたりは最低賃金1,000円以上となる可能性は極めて高いです。
最低賃金の算出方法
1.時間給の場合:時間給≧最低賃金
2.日給の場合:日給÷1日の平均所定労働時間=時間額≧最低賃金
3.月給の場合:月給÷1ヵ月の所定労働時間=時間額≧最低賃金
※所定労働時間とは「その会社の決まりで働かなければいけない時間」であり、残業時間は除きます。
※結婚手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、1か月を超える期間ごとの賞与、時間外割増賃金などは、最低賃金の対象となる賃金から除外されます。
業務改善助成金とは?
最低賃金の引き上げは労働者にとっては嬉しいことですが、企業にとってはその分人件費が増えるので喜ばしくないことです。特に中小企業や小規模事業者は人件費の増加によって経営を圧迫する危険性が高いため、今年の最低賃金の発表に戦々恐々としている経営者も少なくないはずです。
このような中小企業や小規模事業者を救済するために設けられたのが、厚生労働省の助成金の中でも、キャリアアップ助成金と並んで人気が高い業務改善助成金です。業務改善助成金とは、事業場内の最低賃金を引き上げた中小企業や小規模事業者に対して、生産性向上のための設備投資やサービス利用にかかる費用の一部を助成するものです。「業務改善」と名がつく通り、中小企業や小規模事業者が設備導入などによる作業効率化及び生産性向上を図り、賃金がアップしても安定した経営ができるようにすることが主な目的です。
業務改善助成金の特徴・助成事例・対象
この助成金の大きな特徴は以下の2点が挙げられます。
(1)過去に業務改善助成金を受給したことのある企業であっても助成対象となること
(2)「人材育成・教育訓練費」や「経営コンサルティング経費」も助成対象となること
たとえば、以下のような助成事例が考えられます(厚生労働省の業務改善助成金特設HPより、過去の助成事例をまとめたPDFをダウンロードできます)。
・介護事業会社がリフト付特殊車両送迎車を導入
・ホテルがネットでの予約受付からフロント業務まで一貫して行えるシステムを導入
・食料品小売業がPOSレジシステムを導入して在庫管理を短縮
・飲食店が消費税の軽減税率に対応した複数税率対応レジを導入
・化粧品卸売業が手作業を機械化するシステムを導入
・事務機器卸小売業がISO27001の認証を取得
・歯科診療所が義歯作製機器を導入
・倉庫業がバーコード管理システムを導入
・理美容業が、移動式の理美容車を導入
・従業員のスキルアップのための外部研修を行う
助成対象となるのは事業場内の最低賃金が1,000円未満の中小企業・小規模事業者です。業務改善助成金を受給するには最低賃金を30円以上引き上げる必要があります。助成率は原則7/10(生産性要件を満たせば3/4)ですが、常時使用する労働者が30人以下の場合は3/4(生産性要件を満たせば4/5)になります。また、助成上限額は事業場内最低賃金の引き上げ額や引き上げる労働者数によって変化し、最低で50万円、最高で100万円支給されます(表参照)。
業務改善助成金が支給されるまでの手順
支給までの流れは以下の手順となっています。
(1)助成金交付申請書を労働局に提出します。 申請書には賃金引上計画(事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる計画を立て、就業規則等に規定します)と業務改善計画(生産性向上につながる設備投資などの計画を立てます)を明記しなければなりません。
(2)内容が適正と認められれば助成金の交付決定通知が届きます。
(3)設備・機器の導入などで生産性を向上し、事業場内の最低賃金を引上げて労働者に実際に支払います。 なお、設備・機器の導入経費の内、単なる経費削減のための経費、職場環境を改善するための経費、通常の事業活動に伴う経費は除きます。また、対象期間中に解雇や賃金引下げ等がないことも必須です。
(4)事業実績報告書を提出後、助成金が支給されます。
業務改善助成金は提出期限が設けられておらず、随時申請ができます。ただし、予算がつき次第終了となりますので、早めの申請をおすすめします。 また、厚生労働省のHPから公募要領や申請の手引書、申請書の記入例をダウンロードできるのでこちらをよく確認し、社会保険労務士などの専門家のアドバイスも仰いだ上で、申請に臨みましょう。
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