新人研修では何をするべき?効果的な内容と成功のポイントを紹介
※この記事は2020年12月16日に更新しました。
新人研修に際し、「新人研修に効果はあるの?」「早く配属させて部署の仕事を覚えさせたい」といった声に触れる人事・総務担当者の方は少なくないかもしれません。また、研修自体がうまく機能しないことにお悩みの方も多くいると思います。今回は、新人研修の目的、研修の効果を上げるポイント、研修を成功に導く方法などについて紹介します。
目次[非表示]
- 1.新人研修の目的とは
- 1.1.企業文化の理解
- 1.2.業務に必要なスキル・知識の習得
- 1.3.新人社員のメンタルケア
- 1.4.社員同士の「つながり」をつくる
- 2.研修の種類・内容
- 3.【目的別】効果的な新人研修の例
- 3.1.スキル・知識の習得、企業文化理解
- 3.2.モチベーションの向上
- 3.3.過度な緊張を和らげる
- 3.4.「つながり」をつくる
- 4.新人研修を成功させるコツ・ポイント
- 4.1.関係者の「不満解消」が大切
- 4.2.研修目的の明確化
- 4.3.部署間で研修目的を共有する
- 5.研修効果持続のためのフォロー
- 5.1.研修の継続的な実施によるフォロー
- 5.2.仕組みによるフォロー
- 6.まとめ
新人研修の目的とは
新入社員研修の目的は、以下の2つにまとめることができます。
1.「新入社員を配属先にうまく着地させる」
2.「新入社員の心の拠り所、つながりを作る」
2つ目はあまり聞き慣れない内容かもしれませんが、研修のみで新入社員の職場定着や一定以上の業務パフォーマンスを担保することは難しく、配属先でつまずいてしまった時のためにも、新入社員の心の拠り所(相談や気分転換できる同期などとの関係)を構築することは重要な目的となります。
さらに、上記の2つの目的を達成する手段として、新入社員研修では以下の要素が求められます。
・企業文化の理解
・業務に必要なスキル・知識の習得
・新入社員のメンタルケア
・社員同士の「つながり」をつくる
それぞれを以下で解説します。
企業文化の理解
企業文化は「企業が『価値がある』と信じているもの(企業の価値基準)」で、「社員の行動の指針」です。企業文化の定着は、組織運営で最も重要な要素の1つとなります。
業務に必要なスキル・知識の習得
新人研修では、最低限の業務スキルや知識の習得が必要になります。PC操作や勤怠管理、報・連・相などの基本的なスキルや、自社の組織体制や提供する商品・サービスの概要などといった知識の習得を指します。
新人社員のメンタルケア
新入社員の精神状態も様々です。張り切り過ぎている社員、緊張している社員、不本意入社でモチベーションが低い社員など、それぞれの状況に合わせたケアを心がける必要があります。
社員同士の「つながり」をつくる
配属先でつまずいた際の拠り所として、社員同士のつながりは大切です。特に、同期は特別な関係で、深い悩みを相談し励まし合える関係となりやすい傾向があります。
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研修の種類・内容
ここでは、新入社員研修をはじめとした研修の代表的な種類や内容を紹介します。
研修は、対象者別に新入社員などが合同でおこなう「一般研修」の他に、職種別におこなう「職種別研修」や、役職ごとにおこなう「役職別研修」があります。
一方、研修形態によっては、以下の3つにわけることができます。
研修形態別
研修名 |
OFF-JT ※1 |
OJT ※2 |
OJD ※3 |
メイン担当部署 |
人事・総務 |
配属先 |
配属先 |
研修場所 |
配属先以外 |
配属先 |
配属先 |
※1 OFF the Job Training の略
※2 On the Job Training の略
※3 On the Job Development の略
OFF-JT
OFF-JTは、対象者別では一般研修に当たります。人事・総務が主管していることが一般的で、配属先とは離れた場所で実施します。配属前に実施される新人研修が最もイメージがしやすいのですが、配属後も入社年度や等級が同じ社員を様々な部署から集めておこなうこともあります。
OJT
OJTは職種別研修の1つで、配属された課やチームでおこなう研修です。実際の業務を経ながら、上司や先輩の指導のもとに訓練を受けます。
OJD
OJDも職種別研修ですが、OJTと同じく上司や先輩の指導を得ながら、将来に必要な能力の開発をおこなう研修を指します。
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【目的別】効果的な新人研修の例
ここでは「OFF-JT」をより効果的に実施するポイントを、目的別に紹介します。
スキル・知識の習得、企業文化理解
会社の価値観である企業文化に加え、会社の歴史や理念、就業規則、組織形態、ビジネスマナー、報連相や基本PCスキルなどを盛り込んだ座学形態が主流になります。
新入社員にとっては興味関心の薄い「眠たくなりがちな」内容ですが、どのような工夫をすれば研修効果を保てるのでしょうか。
ポイントは以下の5つです。
1.休憩を細かく入れる
2.講師をこまめに変える
3.新入社員に発言させる
4.伝え方を工夫する
5.伝える内容を工夫する
4.については、例えば先輩社員に協力を得て、その社員が新入社員時代に起こしてしまった(今なら笑える)ミスを寸劇で披露するなどもおすすめです。
5.については、「社内メールで相手の名前に「様」を付けるか「さん」を付けるか」など、会社によって異なる文化がありますので、こういった雑談レベルのコンテンツも含めるような工夫があると、新入社員も興味を持ちつつ話を聞くことができます。
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モチベーションの向上
不本意入社のため精神的に安定していないケースや、「研修なんてくだらない」といった態度をとる新入社員は多くの企業で散見されます。こういった新入社員は優秀層に多い傾向がありますが、この状態のまま配属すると離職につながる場合があります。
こういった社員には正面から注意することもありますが、研修の場で正答率が低い問題を回答させるなどして、「人前で間違える、ミスをする」というような恥ずかしい経験をさせることも効果的です。荒療治のようですが、そのことでスイッチが入り、意識や態度が変わることがよくあります。
また、研修においては、課題解決型のグループワークはモチベーション向上に効果的です。適切な検討時間に加え、その検討内容をアウトプットさせる時間と、それが評価される時間を持つことで、モチベーション向上だけでなく、新入社員が内省する機会を与えることができます。
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過度な緊張を和らげる
新入社員は緊張しているもの
新入社員は基本的に緊張しているものです。ただし、その緊張は次第に溶けていきますので、過度な心配は不要です。よって、緊張を和らげるためだけに研修コンテンツを設ける必要はなく、各コンテンツの中で必要に応じて対応することをおすすめします。
ただし、過度の緊張が長期間続くタイプの新入社員もいます。精神的な疲労が続くことで体調を崩しやすく、配属後に起こしたミス1つを過大に扱い、崩れてしまうこともありますので、以下のような対応をしつつ、注意すべき新入社員を見極めることも重要です。
緊張を和らげるには
緊張を和らげるために新入社員に発言させるケースも見かけますが、あまり効果的ではなく、逆に緊張感を高めてしまうこともあります。おすすめのリラックス方法としては、以下の2つです。
・新入社員全員を対象に幾つかの質問をして、挙手をさせる
・隣席の新入社員同士で、「今朝食べた朝ごはん」などについて数分ずつプレゼンをさせる
この通り「体を動かすことでリラックスさせる」ような対応をおすすめします。
もし、時間がなければ、研修担当者が自身のプライベートのお話(趣味のお話や通勤時間に読んだ本の話など)を合間に挟むことも効果的です。プライベートの話をすることで、新入社員は親近感を持ち、リラックスできます。
また、研修の合間の対応として、過度な緊張状態が続いているように見受けられる新入社員については、事前に趣味や出身地、大学の学部などを調べておき、何らかの共通点を見出して、休憩時などにコミュニケーションをとることがおすすめです。
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「つながり」をつくる
研修は、座学だけでは充分な効果を発揮しません。
アイスブレイクによるお互いの自己開示やロールプレイ、特に、課題解決型のグループワークによる新入社員同士の共同作業を取り入れることを強く推奨します。
特に、グループワークは、「課題難易度とワーク時間の適切な設定」「活発なグループ内議論の推奨」「課題解決策発表の機会提供」「評価される機会(他グループとの競い合いも含む)の提供」を含めることがおすすめです。
ワークの時間は数日間設けることを推奨しますが、それに見合った難易度の課題設定と、求める解決策のレベル提示も重要です。設定時間は「あと数時間あればもう少し良い解決策が出せる」という状態がベストです。
このように真剣に何かに取り組むオン(グループワークなど)の時間と、可能であれば強制力を持たないオフ(オンラインでも実施可能な食事会やレクリエーション大会など)の時間を並行して共有させることをおすすめします。
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新人研修を成功させるコツ・ポイント
関係者の「不満解消」が大切
新人研修が上手く機能していない場合、新人研修の関係者はどのような不満を抱えているでしょうか。その一例を紹介します。
関係者 |
抱える不満 |
新入社員 |
実りのない研修、とりあえず座っておく、きつい |
人事部・総務部 |
研修が機能していない、他部署からの目線が痛い |
配属先の部署 |
人事・総務とのお付き合い、研修と配属後業務の分離 |
こちらはあくまで一例ですが、新人研修にお悩みを抱える組織には当てはまる状態ではないでしょうか。この状態を改善するための効果的な方法を2つ紹介します。
研修目的の明確化
「何のための研修なのか」「何が達成できれば良いのか」を明確にしましょう。
目的が明確になってから、その達成のために、新入社員が「面白い!」と熱中できるコンテンツや、「楽しい!」と感じてもらえる実施方法を検討してみましょう。
※この点は自社だけでなく、専門業者と共同して設計、実施することをおすすめします。
部署間で研修目的を共有する
明確にした研修目的について、新入社員を受け入れる配属先部署と丁寧に共有します。
研修がうまく回らない主因は、研修実施部署と配属先部署との研修における期待値の違いにあります。特に、研修実施部署は、研修で「期待しないこと」や「やらないこと」を明確に伝えてください。
例えば、「ビジネスマナーを教えるが、完璧に身に付けるまでは不可能なので、配属先で引き続き教育してほしい。」というように、「できること」と「できないこと」を明確に伝えた上で、研修の続きを配属先で実施してもらえるように依頼すると、新人研修と配属後の研修が接続します。
また、すぐに配属して仕事を覚えさせたい各部署の考えに理解を示しつつ、以下を共有してください。
・研修には、同期との関係性を深める狙いもあり、一定の時間が必要であること
・その点、研修に即効性はないが、将来的に離職防止につながる重要な時間となること
研修に費やした時間に対する効果を、短期的に判断しがちである配属先部署に対して、このような内容を共有することで、配属先部署のスタンスが変わることもあります。
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研修効果持続のためのフォロー
新入社員研修の目的は、「新入社員を配属先にうまく着地させる」ことと、「新入社員の心の拠り所、つながりを作る」であることは冒頭で紹介しました。新入社員として配属された時のモチベーションを保ちつつ、心のつながりを保つにはどのようなフォローが必要でしょうか。
研修の継続的な実施によるフォロー
定期的なOFF-JTを実施することで、環境を変えて自分を見つめ直す機会や、同期とのつながりを再構築できる機会を提供します。また、OJTやOJDで培った現場での経験を踏まえた上で、新人研修と同様のコンテンツやさらに進化した研修を実施することで、過去の自分からの変化を認識するとともに、内省を促すことが可能となり、モチベーションアップが期待できます。
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仕組みによるフォロー
福利厚生制度を用いたリフレッシュ機会の提供
福利厚生が充実していることで、ワークライフバランスの充実や業務の効率化、従業員定着率の向上に寄与します。新卒の新入社員や転職者の多くは、この福利厚生を企業選択の際に重要視していることも事実です。
インセンティブによるモチベーションの維持
成果を挙げた社員にインセンティブを与えることで、モチベーションの維持に貢献します。ただ、他の社員と比較して成果をあげた社員だけでなく、成果は出なかったが努力を続けた社員や、個人的にパフォーマンスがあがった社員、ユニークな発想で部署内に変化をもたらした社員など、様々な条件を設けることが、チームのモチベーション維持に重要です。
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まとめ
今回は、新人研修の重要性や研修の効果を上げるポイント、研修を成功に導く方法について紹介しました。新人研修に割くことができる時間も会社によって異なりますので、紹介した内容を参考にして頂きながら、自社に合った研修実施計画を立てることをおすすめします。
ポイントは以下の5つです。
・新人研修の目的は「配属先にうまく着地させること」と、「心の拠り所を作ること」
・研修にはその実施形態によって、OFF-JTとOJTとOJDに大別される
・研修は淡々とおこなうのではなく、その時々の状況に合わせて臨機応変に対応する
・研修の目的を明確化し、それを配属先部署と丁寧に共有することで、配属先と研修に対する期待値が一致し、配属前の新人研修と配属先での研修が接続する
・福利厚生制度やインセンティブ制度など制度面での新入社員のフォローも重要である
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