【ホテル業界編】新人研修の必要性と効果的な内容、成功に導くポイントをご紹介。新型コロナの影響で自宅待機の新入社員に向けた研修もご紹介します!
この記事のまとめ
・新人研修の内容は企業理解、ビジネスマナー、仕事理解、スキルアップの4つが基本
・新入社員が配属先でつまづいた時の心の拠り所や繋がりを作ることも、新人研修の重要な目的
・研修目的や研修ではできないことを各部署とすり合わせることで、研修効果が持続する
・福利厚生制度やインセンティブ制度を新入社員にも進んで利用させることが重要
・新型コロナの影響による新人研修はWEB会議システムによる研修やレポート作成がメイン
目次[非表示]
- 1.新人研修の目的とは
- 2.新人研修の種類について
- 3.新入社員合同の一般研修の内容と注意点
- 3.1.研修の内容〜基本編〜
- 3.2.研修の内容〜応用編〜
- 3.3.研修をおこなう上での注意点
- 4.新人研修を成功させるポイント
- 5.配属後の新入社員へのフォロー
- 6.新型コロナウイルスによる在宅勤務でもできる研修
- 7.まとめ
新人研修の目的とは
ポイントとなる2つの目的
新人研修(新入社員研修)の目的は以下の2つです。
1.新入社員を配属先にうまく着地させること
2.新入社員が配属先でつまづいた時の心の拠り所、繋がりを作ること
1.はよく見かける目的ですが、2.はあまり聞き慣れない上に、「特記するほど重要なの?」と思われるかもしれません。しかし、限られた研修期間で新入社員の職場定着や一定以上の業務パフォーマンスを担保することが難しいことは、多くの研修ご担当者がご存知のところかと思います。
よって、新入社員がつまづいてしまいそうな時やつまづいてしまった時に、それを支えるインフラ(相談や気分転換が共にできる同期、人事などとの関係)の構築を促すことも、重要な新入社員研修の目的となります。
また、ホテル業界ではアルバイトやパート不足も深刻であり、その理由として各ホテルに配属された社員によるパートやアルバイトの人材マネジメント不足も挙げられます。新入社員を研修でしっかり教育することで、研修から得た知識やノウハウをパートやアルバイトの人材マネジメントに生かすというメリットも得られます。
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新人研修の種類について
ここで新入社員研修の代表的な種類やその内容をご紹介します。
1.対象者別
対象範囲 |
新入社員合同 |
部署(配属先)ごと |
役職ごと |
研修名 |
一般研修 |
職種別研修 |
役職別研修 ※ |
※役職別研修は中途採用がメインで、マネジメント層以上の転職者に向けた研修です。
2.研修形態別
研修形態 |
OFF-JT ※1
|
OJT ※2
|
OJD ※3
|
メイン担当部署 |
人事・総務 |
配属先 |
配属先 |
研修場所 |
配属先以外 |
配属先 |
配属先 |
基本的に人事・総務が担う新入社員向けの研修は「一般研修」で、その形態はOFF-JTになります。新入社員合同の「一般研修」を終えて、部署(配属先)ごとの職種別研修に移るのが一般的で、職種別研修の多くは「OJT」または「OJD」です。
※1 OFF the Job Training の略で、実業務を離れておこなう研修
※2 On the Job Training の略で、実業務を経ながら上司や先輩に訓練を受ける研修
※3 On the Job Development の略で、実業務を経ながら上司や先輩に訓練を受け、将来に必要な能力を開発する研修
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新入社員合同の一般研修の内容と注意点
ここでは新入社員合同の一般研修の内容を、基本編と応用編に分けてご紹介します。また、研修をおこなう上での注意点にも触れますのでご参考ください。
研修の内容〜基本編〜
研修の期間によっても異なりますが、新入社員研修の内容は以下の4つに大別されます。
企業・業界理解 |
ビジネスマナー |
仕事理解 |
スキルアップ |
それぞれの内容を簡単にご紹介します。
企業、業界理解
企業理念や歴史をはじめとする企業の概要や就業規則、社内の様々なルールを伝えます。福利厚生や財形貯蓄、持ち株などについてもここで説明することが一般的です。加えて業界の説明や競合企業、顧客について簡単に説明することもあります。
ビジネスマナー
ホテル業界では、挨拶、表情、身だしなみ、言葉遣いなどのコミュニケーションが特に重要視されます。その他にも、社会人の一般的なマナーである名刺交換や電話対応を教育します。この研修は自社で用意するだけでなく、専門の企業や協会、講師に依頼するケースもあります。
仕事理解
仕事といっても各配属先の実務ではありません。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)や指示の受け方、PDCAの回し方など、仕事の基礎が対象です。また、ホテルの基本設備の説明や防災、宿泊ルームや宴会場など現場での有事対応も含まれます。
スキルアップ
エクセルやワードの使い方から、ロジカルシンキング、英語など多岐に渡ります。これらに加えて、特にホテル業界ではクレーム対応を含めた接客スキルの研修を手厚くおこなう企業が多い傾向です。また、昨今のインバウンド需要により、海外からの旅行客も多岐に渡ることから、国際的な感覚や価値観を身につけることも必要とされています。
接客研修などを除いては、座学が中心になってしまい、新入社員にとっては、「眠たくなってしまいがち」な内容です。よって、以下のような工夫をすることをお勧めします。
新入社員研修をおこなう上での工夫の例
対策法 |
具体例 |
実施方法の工夫 |
・休憩を細かく入れる ・講師をこまめに変える ・新入社員に発言させる、ロールプレイを取り入れる |
実施内容の工夫 |
雑談を取り入れる (例) ・社内メールで相手の名前に「様」を付けるか「さん」を付けるか? (企業によって異なる文化があります) |
研修の内容〜応用編〜
研修は座学だけでは充分な効果を発揮しません。新入社員研修の目的でもご紹介した通り、心の拠り所や繋がりを作ることも重要な目的です。そのために新入社員同士のコミュニケーション機会の創出が重要となります。
例えば、「研修期間中、毎日アイスブレイクとしてお互いを紹介し合う時間を持つ」ことや、「研修内容にロールプレイや課題解決型のグループワークによる共同作業を取り入れる」ことは効果的です。
アイスブレイクやロールプレイは簡単に取り入れることができますが、一方で課題解決型のグループワークには相応の準備が必要になりますので、そのポイントをご紹介します。
課題解決型グループワークのポイント
指標 |
チェックポイント |
課題難易度と ワーク時間の適切な設定 |
・ワークの時間は数日間設けることを推奨 ・難易度はワーク時間に対して「あと数時間あればより確度の高い回答が出せる」くらいがベスト (担当者で一度シミュレーションして難易度確認) ・納期までに回答を出さなければならないことを学ばせる |
グループ内の 活発な議論を推奨 |
・制限時間(黙っている時間はないこと)を意識させる ・冒頭は各グループに人事や総務が入って議論を活性化 |
課題解決策発表の機会提供 |
・アウトプットを学ばせる ・評価者に役職者(できれば部長以上)を加える ・順位をつける(優勝のみ or TOP3のみ等でよい) ・他グループのアウトプットを聞くことで視野を広げる |
評価される機会の提供 |
・評価を受けることで、振り返り、改善点を考えさせる |
ここで重要なことは、グループがいかに真剣にワークに取り組めたかであり、そのために以下の3点をおこなうことが必要です。
・課題難易度とワーク時間の設定
・評価者に役職者を用意すること
・成果に順位をつけること
また、多少のグループ内の口論は許容し、軌道修正も新入社員に任せましょう。
今回は新入社員同士における意思疎通の機会創出の面から記載しましたが、グループワークは課題解決能力や協調性の醸成、PDCAの理解促進の効果も期待できます。
このように、真剣に取り組むON(グループワークなど)の時間と、強制力を持たない、可能な範囲でのOFF(食事会やボーリング大会など)の時間によって、新入社員が繋がりを築いていく機会を提供することをお勧めします。
研修をおこなう上での注意点
新入社員の精神状態が過度に不安定であることが離職や配属後の低パフォーマンスに繋がります。ここでは新入社員に見られがちな精神状態の例とその対応例をご紹介します。
モチベーションが低くやる気がないタイプ
不本意入社のため精神的に安定していないケースや、「研修なんてくだらない」といった態度をとる新入社員で、よく見られるケースです。優秀層に多いタイプでもありますが、この状態のまま配属すると離職に繋がるケースが多々あります。
こういった社員のフォローについては、正答率が低い問題を回答させるなどして、「人前で間違える、ミスをする」というような「恥ずかしい経験」をさせて下さい。荒療治のようですが、そのことでスイッチが入り、態度が変わることがよくあります。
過度に緊張しているタイプ
過度の緊張によりガチガチになっているタイプです。この状態も、精神的な疲労が続くことで体調を崩しやすく、またミス1つを過大に扱い、崩れてしまうことがあります。
こういった新入社員には事前に趣味や出身地、学生時代の専門などを調べておき、何らかの共通点を見出して、休憩時間などに話しかけることがお勧めです。
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新人研修を成功させるポイント
新人研修の関係者が抱える不満
新入社員研修が配属後も含めて上手く機能していない場合、研修の関係者はどのような不満を抱えているでしょうか。その一例をご紹介します。
関係者 |
抱える不満 |
新入社員 |
実りのない研修・とりあえず座っておく・きつい |
人事部・総務部 |
一般研修が機能していない・他部署が一般研修に前向きでない |
配属先の部署 |
人事、総務とのお付き合い、一般研修と配属後研修の分離 |
新人研修の関係者が抱える不満の解消
これらの不満を解消するためには何をすれば良いのでしょうか。
1.一般研修の目的と実施方法の明確化
・何が達成できれば良いのかを明確にする
・その目的の達成のために、新入社員が集中力を保って取り組めるカリキュラムを検討する
※「3.新入社員合同の一般研修の内容と注意点」をご参考ください。
※この点は自社だけでなく、専門企業と共同して設計、実施することをお勧めします。
2.他部署(配属先の部署)との間で一般研修の目的を共有
以下の3点を丁寧に共有することで、他部署の一般研修に対するスタンスが変わります。
・前項1.で明確にした目的
・一般研修で「できないこと」や「不十分なこと」(※)
・一般研修は同期と関係性を深める狙いもあり、それが離職防止に繋がること。よって、新人研修で新入社員同士が時間を共有すること自体に意味があること
※一般研修でできないことや不十分なことを配属後のOJT等で補ってもらうように各部署に打診します。その際、各部署から「こういうことを一般研修でやってほしい」「OJTではこういうことを大事にしている」といった情報を得ることで、一般研修と職種別研修の内容を改善していき、配属前後の研修の接続を強めていくことが理想的です。
配属後の新入社員へのフォロー
研修の継続的な実施による研修効果の持続
定期的なOFF-JT(一般研修)・OJTの実施
配属先に慣れてきた頃に、環境を変えて自分を見つめ直す機会や、同期と接触できる機会を提供します。また、配属先でのOJTやOJDで培った経験を踏まえて、新入社員研修と同様のコンテンツや似たような研修を実施することで、過去の自分からの成長を認識することができます。
また、ホテル業界では専門会社に依頼して覆面調査をおこなうことで、スタッフの接客マナー、ホスピタリティに加え、語学力(英語力)や国際感覚の維持をおこなうこともよいでしょう。
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仕組みによるフォロー
ホテル業界においては、配属後に新人全員を集めることは非常に難しく、OFF-JT研修のみで新人をカバーすることは難しいのが実状です。そこで、以下のような仕組みによる新入社員のフォローがより必要になります。
福利厚生制度の積極的な利用の促進
ストレスを溜めやすい新入社員に対して、福利厚生制度を積極的に利用させることは重要です。これは、ワークライフバランスの充実や従業員の定着率の向上に寄与します。
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インセンティブによるモチベーションの維持
なかなか仕事で評価されにくい新入社員を対象に、インセンティブを与えることで、モチベーションの維持に貢献します。ただ、他の社員と比較して成果をあげた新入社員だけでなく、成果は出なかったが努力を続けた新入社員や、個人的にパフォーマンスがあがった新入社員、ユニークな発想で部署内に変化をもたらした新入社員など、1人ひとりの行動によって様々なインセンティブ条件を設けることが大切です。
福利厚生制度やインセンティブ制度は専門業者に相談することで自社に合った提案が受けられ、内容が充実するだけでなくコストを抑えることができます。
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新型コロナウイルスによる在宅勤務でもできる研修
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、新入社員に自宅勤務または自宅待機を命じている企業がほとんどかと思います。普段と異なる環境の中で、どのような研修があるのでしょうか。
WEB会議システムを用いた人事・総務による研修
WEB会議システムを用いて、一般研修をおこないます。WEB会議室システムの資料共有機能を用いるか、事前に新入社員に研修資料をメール等で送り実施します。対面でおこなう予定だった業務マニュアルや就業規則などのカリキュラムから内容を絞って、1日3時間程度でおこなう企業が多いようです。
e-Learningによる研修
英語や統計、ビジネスマナーなど種類は多岐に渡りますが、カリキュラムを指定して新入社員に受講してもらいます。特に英語のカリキュラムは多様な会社がサービスを提供していますので、予算と内容に合わせて選ぶことが可能です。受講後にオンラインテスト(サービスの1つとして提供されている場合もあり)やレポートの提出を求めることで、効果を確認できます。
課題を与える
いくつかの本を指定して、読書後のレポートを提出させたり、今回の新型コロナウイルスによる混乱が自社のビジネスにどのような影響を与え、どういった改善が求められるかなどについて分析させ、レポートを提出させる企業もあります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、ホテル業界における新人研修の重要性と効果的な内容やポイント、新型コロナウイルスによる自宅勤務でもできる新人研修もご紹介しました。
ポイントは以下の5つです。
・新人研修の内容は企業理解、ビジネスマナー、仕事理解、スキルアップの4つが基本
・新入社員が配属先でつまづいた時の心の拠り所や繋がりを作ることも、新人研修の重要な目的
・研修目的や研修ではできないことを各部署とすり合わせることで、研修効果が持続する
・福利厚生制度やインセンティブ制度を新入社員にも進んで利用させることが重要
・新型コロナの影響による新人研修はWEB会議システムによる研修やレポート作成がメイン
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