【医療業界編】新人研修の必要性と効果的な内容、成功に導くポイントをご紹介。新型コロナの影響で研修中止の新入職員に向けた研修代替案もご紹介します!
この記事のまとめ
・新人研修の内容は病院理解、ビジネスマナー、仕事理解、スキルアップの4つが基本
・新入職員が配属先でつまづいた時の心の拠り所や繋がりを作ることも、新人研修の重要な目的
・研修目的や研修ではできないことを各配属先とすり合わせることで、研修効果が持続する
・福利厚生制度やインセンティブ制度の導入は新入職員の定着に効果がある
・新型コロナの影響による新人研修は自宅でも受講可能なe-Learningなどもおすすめ
目次[非表示]
- 1.新人研修の目的とは
- 2.新人研修の種類について
- 3.新人看護師合同の一般研修の内容と注意点
- 3.1.研修の内容〜基本編〜
- 3.2.研修の内容〜応用編〜
- 3.3.研修をおこなう上での注意点
- 4.新人研修を成功させるポイント
- 5.配属後の新入看護師へのフォロー
- 6.新型コロナウイルスの影響に鑑みた新入職員研修の代替案
- 7.まとめ
新人研修の目的とは
この記事は、新人看護師を主な対象とする研修について記載しますが、新人看護職員(准看護師、保健師、助産師を含む)にも共通する情報となりますで、ご参考ください。
ポイントとなる2つの目的
新人看護師に限らず新人看護職員を対象とした新人研修の目的は以下の2つです。
1.新入職員を配属先にうまく着地させること
2.新入職員が配属先でつまづいた時の心の拠り所、繋がりを作ること
1.はよく見かける目的ですが、2.はあまり聞き慣れない上に、「特記するほど重要なの?」と思われるかもしれません。しかし、限られた研修期間で新入職員の職場定着や一定以上の業務パフォーマンスを担保することが難しいことは、多くの研修ご担当者がご存知のところかと思います。
よって、新入職員がつまづいてしまいそうな時やつまづいてしまった時に、それを支えるインフラ(相談や気分転換が共にできる同期、人事などとの関係)の構築を促すことも、重要な新入職員研修の目的となります。
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新人研修の種類について
ここで新入職員研修の代表的な種類やその内容をご紹介します。
1.対象者別
対象範囲 |
新入職員合同 |
病棟・部署ごと |
役職ごと |
研修名 |
一般研修 |
職種別研修 |
役職別研修 ※ |
※役職別研修は中途採用がメインで、マネジメント層以上の転職者に向けた研修です。
2.研修形態別
研修形態 |
OFF-JT ※1
|
OJT ※2
|
OJD ※3
|
メイン担当部署 |
人事・総務 |
配属先 |
配属先 |
研修場所 |
配属先以外 |
配属先 |
配属先 |
基本的に人事・総務が担う新入職員向けの研修は「一般研修」で、その形態はOFF-JTになります。新入職員合同の「一般研修」を終えて、病棟・部署ごとの職種別研修に移るのが一般的で、職種別研修の多くは「OJT」または「OJD」です。
看護師の場合はプリセプターといって、新人看護師に先輩看護師がマンツーマンでついて新人教育をおこなうOJTやOJDが一般的です。
また、規模の大きい病院では看護部という部署があります。この場合、全ての看護師は看護部に所属するために、看護師の集合研修も看護部内で実施されることになりますが、それを人事や総務が担っていたり、配属先とは異なる場所で実業務を離れておこなう場合には、一般研修に分類されます。
※1 OFF the Job Training の略で、実業務を離れておこなう研修
※2 On the Job Training の略で、実業務を経ながら上司や先輩に訓練を受ける研修
※3 On the Job Development の略で、実業務を経ながら上司や先輩に訓練を受け、将来に必要な能力を開発する研修
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新人看護師合同の一般研修の内容と注意点
ここでは新人看護師合同の一般研修の内容を、基本編と応用編に分けてご紹介します。また、研修をおこなう上での注意点にも触れますのでご参考ください。
研修の内容〜基本編〜
研修の期間によっても異なりますが、新入職員研修の内容は以下の4つに大別されます。
病院・業界理解 |
ビジネスマナー |
仕事理解 |
スキルアップ |
それぞれの内容を簡単にご紹介します。
病院、業界理解
病院の理念や歴史をはじめとする概要や就業規則、院内の様々なルールを伝えます。福利厚生や財形貯蓄などについてもここで説明することが一般的です。加えて業界の説明や他の病院との違いなどについて説明することもあります。これらは講義形式が一般的です。
ビジネスマナー
敬語の使い方や自己紹介の方法、電話対応、振る舞いなどを教育します。この研修は自院で用意するだけでなく、専門企業や講師に依頼するケースもあります。講義形式が多いのですが、実践演習を交えることをお勧めします。
仕事理解
ホウレンソウ(報告・連絡・相談)や指示の受け方、PDCAの回し方など、仕事の基礎が対象です。加えて、多くの部署に共通する、電子カルテの操作方法や注射の打ち方、輸血方法、食事介助などの看護技術が対象となります。時間に限りがありますが、講義形式に加えて実践演習を可能な限り交えることをお勧めします。
スキルアップ
エクセルやワードの使い方から、コミュニケーションスキル、英語習得など多岐に渡ります。院内でカリキュラムを用意する病院もありますが、部分的に他社のサービスを利用することもあります。エクセル・ワードや英語習得はe-Learningの形式が一般的です。
以上のように、時間的制約も考慮すると基本的には講義形式が中心になってしまう新人研修において、以下のような工夫をすることをお勧めします。
新入職員研修をおこなう上での工夫の例
対策法 |
具体例 |
実施方法の工夫 |
・休憩を細かく入れる ・講師をこまめに変える ・新入職員に発言させる、ロールプレイを取り入れる(看護技術等) |
実施内容の工夫 |
雑談を取り入れる (例) ・食堂の人気メニュー、病院近くの人気ランチスポット |
研修の内容〜応用編〜
研修は講義だけでは充分な効果を発揮しません。新入職員研修の目的でもご紹介した通り、心の拠り所や繋がりを作ることも重要な目的です。そのために新入職員同士のコミュニケーション機会の創出が重要となります。
例えば、「研修期間中、毎日アイスブレイクとしてお互いを紹介し合う時間を持つ」ことや、「研修内容にロールプレイなどの演習や課題解決型のグループワークによる共同作業を取り入れる」ことは効果的です。
アイスブレイクやロールプレイは簡単に取り入れることができますが、一方で課題解決型のグループワークには相応の準備が必要になりますので、そのポイントをご紹介します。
病院は多忙であり、新人研修に多くの時間を割けない現状がありますが、人材育成の重要性に鑑みてご参考ください。
課題解決型グループワークのポイント
指標 |
チェックポイント |
課題難易度と ワーク時間の適切な設定 |
・ワークの時間は数日間設けることを推奨 ・難易度はワーク時間に対して「あと数時間あればより確度の高い回答が出せる」くらいがベスト (担当者で一度シミュレーションして難易度確認) ・期日までに回答を出さなければならないことを学ばせる |
グループ内の 活発な議論を推奨 |
・制限時間(黙っている時間はないこと)を意識させる ・冒頭は各グループに人事や総務が入って議論を活性化 |
課題解決策発表の機会提供 |
・アウトプットを学ばせる ・評価者に役職者(できれば部長以上)を加える ・順位をつける(優勝のみ or TOP3のみ等でよい) ・他グループのアウトプットを聞くことで視野を広げる |
評価される機会の提供 |
・評価を受けることで、振り返り、改善点を考えさせる |
ここで重要なことは、グループがいかに真剣にワークに取り組めたかであり、そのために以下の3点をおこなうことが必要です。
・課題難易度とワーク時間の設定
・評価者に役職者を用意すること
・成果に順位をつけること
また、多少のグループ内の口論は許容し、軌道修正も新入職員に任せましょう。
今回は新入職員同士の意思疎通の機会創出の面から記載しましたが、グループワークは課題解決能力や協調性の醸成、PDCAの理解促進の効果も期待できます。
このように、真剣に取り組むON(グループワークなど)の時間と、強制力を持たない、可能な範囲でのOFF(食事会やボーリング大会など)の時間によって、新入職員が繋がりを築いていく機会を提供することをお勧めします。
研修をおこなう上での注意点
新入職員の精神状態が過度に不安定であることが離職や配属後の低パフォーマンスに繋がります。ここでは新入職員に見られがちな精神状態の例とその対応例をご紹介します。
モチベーションが低くやる気がないタイプ
不本意入職のため精神的に安定していないケースや、「研修なんてくだらない」といった態度をとる新入職員で、よく見られるケースです。この状態のまま配属すると離職に繋がるケースが多々あります。
こういった職員のフォローについては、正答率が低い問題を回答させるなどして、「人前で間違える、ミスをする」というような「恥ずかしい経験」をさせて下さい。荒療治のようですが、そのことでスイッチが入り、態度が変わることがよくあります。
過度に緊張しているタイプ
過度の緊張によりガチガチになっているタイプです。この状態も、精神的な疲労が続くことで体調を崩しやすく、またミス1つを過大に扱い、崩れてしまうことがあります。
こういった新入職員には事前に趣味や出身地、母校などを調べておき、何らかの共通点を見出して、休憩時間などに話しかけることがお勧めです。
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新人研修を成功させるポイント
新人研修の関係者が抱える不満
新入職員研修が配属後も含めて上手く機能していない場合、研修の関係者はどのような不満を抱えているでしょうか。その一例をご紹介します。
関係者 |
抱える不満 |
新入職員 |
実りのない研修・とりあえず座っておく・きつい |
人事部・総務部 |
一般研修が機能していない・他部署が一般研修に前向きでない |
配属先の部署 |
人事、総務とのお付き合い、一般研修と配属後研修の分離 |
新人研修の関係者が抱える不満の解消
これらの不満を解消するためには何をすれば良いのでしょうか。
1.一般研修の目的と実施方法の明確化
・何が達成できれば良いのかを明確にする
・その目的の達成のために、新入職員が集中力を保って取り組めるカリキュラムを検討する
※「3.新入看護師合同の一般研修の内容と注意点」をご参考ください。
※この点は自院だけでなく、専門企業と共同して設計、実施することをお勧めします。
2.他部署(配属先の部署)との間で一般研修の目的を共有
以下の3点を丁寧に共有することで、他部署の一般研修に対するスタンスが変わります。
・前項1.で明確にした目的
・一般研修で「できないこと」や「不十分なこと」(※)
・一般研修は同期と関係性を深める狙いもあり、それが離職防止に繋がること。よって、新人研修で新入職員同士が時間を共有すること自体に意味があること
(特に夜勤など不規則な環境で働く必要がある看護師には、これが重要な目的になります)
※一般研修でできないことや不十分なことを配属後のプリセプター(OJT等)で補ってもらうように各部署に打診します。その際、各部署から「こういうことを一般研修でやってほしい」「プリセプターではこういうことを大事にしている」といった新人教育に関わる情報を得ることで、一般研修と配属後研修の改善に繋げ、配属前後の研修の接続を強めることが理想的です。
配属後の新入看護師へのフォロー
研修の継続的な実施による研修効果の持続
定期的なOFF-JT(一般研修)の実施
配属先に慣れてきた頃に、環境を変えて自分を見つめ直す機会や、同期と接触できる機会を集合研修によって提供します。また、配属先のプリセプター等で培った経験を踏まえて、新入職員研修と同様の研修を受けることで、過去の自分からの成長を認識することができます。
可能であれば新人看護師が3年目を迎えるまでは1年間に1回などのペースで頻繁におこなうことをお勧めします。
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仕組みによるフォロー
福利厚生制度の積極的な利用の促進
慣れない夜勤もあり生活リズムが乱れ、特に配属後の1年間はストレスを溜めやすい新入職員に対して、福利厚生制度を積極的に利用させることは重要です。これは、ワークライフバランスの充実や職員の定着率の向上に寄与します。
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インセンティブによるモチベーションの維持
仕事を覚えるばかりで評価される機会が少ない新入職員に、評価される機会を与えることで、モチベーションの維持に貢献します。
他の職員と比較して成果をあげた新入職員だけでなく、成果は出なかったが努力を続けた新入職員や、個人的にパフォーマンスがあがった新入職員、ユニークな発想で部署内に変化をもたらした新入職員など、1人ひとりの行動によって様々なインセンティブ条件を設けることが重要です。
福利厚生制度やインセンティブ制度は専門業者に相談することで自院に合った提案が受けられ、内容が充実するだけでなくコストを抑えることができます。
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新型コロナウイルスの影響に鑑みた新入職員研修の代替案
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、新入職員への一般研修が延期または中止となっている病院が多いのではないでしょうか。一般研修ができないことによる不足の補完を検討している病院につきましては、以下をご参考ください。
e-Learningによる研修
電話応対や振る舞いなどのビジネスマナーに関するカリキュラムを、WEB上で新入職員に受講してもらいます。多くの業者により多様なカリキュラムが提供されておりますので、内容や予算に応じた選択が可能です。またe-Learningは時間や場所を選びませんので、新入職員は自宅でも受講ができます。
課題を与える
研修の目的に合致した内容を含んでいる本を指定するなどして、新入職員に読書後のレポートを提出させることで、一部の研修の代替とします。
WEB会議システムを用いた人事・総務による研修
WEB会議システムを用いて、一般研修をおこなうことも可能です。WEB会議室システムの資料共有機能を用いるか、事前にメール等で新入職員に研修資料を送り実施します。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。看護師の新人研修の重要性と効果的な内容やポイントに加え、新型コロナウイルスの影響に鑑みた研修の代替案もご紹介しました。
ポイントは以下の5つです。
・新人研修の内容は病院理解、ビジネスマナー、仕事理解、スキルアップの4つが基本
・新入職員が配属先でつまづいた時の心の拠り所や繋がりを作ることも、新人研修の重要な目的
・研修目的や研修ではできないことを各配属先とすり合わせることで、研修効果が持続する
・福利厚生制度やインセンティブ制度の導入は新入職員の定着に効果がある
・新型コロナの影響による新人研修は自宅でも受講可能なe-Learningなどもおすすめ
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