就労移行支援とは?就労移行支援事業所で採用活動をする場合に知っておきたい基本とメリット
障がいを持つ人が企業に就職する際のサポートをおこなう就労移行支援制度。企業は全国の市区町村にある就職移行支援事務所に橋渡しをおこなってもらうことで、人材を深く知り適正を把握し、適切なポジションに配置しやすくなるといったメリットを得られます。
障がい者は就職活動のサポートを受けられ、企業、就労移行支援事務所はどのようなことをしているのか、就労移行支援事務所と提携して採用活動をおこなう場合に知っておきたい基本やメリットを解説します。
目次[非表示]
- 1.就労移行支援とは?
- 1.1.就労移行支援とは何か
- 1.2.就労継続とは何が違うの?
- 2.就労移行支援事務所は何をするところ?
- 2.1.就労移行支援事務所の事業内容
- 2.2.定着支援とは
- 3.就労移行支援事業所を活用する企業のメリット
- 3.1.適性を一緒に考えてもらえる
- 3.2.教育のアドバイスがもらえる
- 3.3.就業のサポートをしてもらえる
- 3.4.自分の状態を理解している人が多い
- 4.就労移行支援で入社した従業員のマネジメントに適した2つの方法
就労移行支援とは?
就労移行支援とは何か
就労移行支援とは障害者総合支援法に基づく就労支援サービスの一つです。
障害者総合支援法では障害や難病のある人それぞれが必要とする支援によって「障害支援区分」を認定し、障害支援区分に応じたサービスを受けられるよう定めています。
就労移行支援を利用できるのは就労を希望する65歳未満の障がい者であり、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人です。一般企業での就労が可能ではあるけれど、障がいを持っているからいきなり就職するのは不安がある、といった場合にも利用できます。
就労継続とは何が違うの?
就労移行支援と就労継続支援は名前こそ似ているものの、別のサービスです。
就労継続支援は2年以内の期間に一般企業への就職が困難な方へ働く場所を提供するもので、働く場そのものを提供し、賃金も支払われます。平成30年度の平均月収は就労継続支援A型で76,887円、就労継続支援B型で16,118円となっています。
現在、新型コロナの影響で今年度内に十分な就労支援が受けられず終了を迎える場合、最大1年の範囲内で延長することが可能です。
一方、就労移行支援では一般企業への就職を支援するサービスのため、賃金の支払いはありません。利用料が発生しますが、料金はサービスにかかる費用の1割を上限として世帯の所得に応じて月ごとの負担上限額が設けられています。
また、就職の際に必要な知識の提供やアドバイス、スキル向上トレーニング、就職活動のサポートなどをおこないます。
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就労移行支援事務所は何をするところ?
就労移行支援事業所は一般企業やNPO法人、社会福祉法人などが運営し、厚生労働省の「平成30年社会福祉施設等調査の概況」によると、平成30年度時点で事業所数は3,503ヶ所、利用者数は約3万5,000人となっています。
ここでは、障がい者と企業の二者の立場に向けて、就労移行支援事務所の役割と事業内容をご説明します。コロナ禍でなくても、外出が困難な状況であれば在宅で訓練や支援を受けられます。
就労移行支援事務所の事業内容
利用者にとっての就労移行支援事務所
個別に支援計画を作成し、就業に必要な知識や能力を身につけるための訓練と就職支援をおこないます。毎日通所して知識を得るとともに作業をおこなうことで、実際に企業に就職してからも長く働ける力を身につけていきます。
就労移行支援事務所で提供するサービスやプログラムは画一ではなく、事業所ごとに異なりますが、利用者に提供される代表的な支援サービスやプログラムは以下のとおりです。
・就職に必要な知識の提供(挨拶や身だしなみ、一般的なビジネスマナーの獲得など)
・就職に必要な社会性、コミュニケーションを習得するためのグループワークなど
・就職に関する悩みの相談(体調管理や治療との両立など)
・スキル獲得、向上トレーニング(パソコン作業、軽作業など)
・就職活動のサポート(面接練習、履歴書の添削、自己分析と適正の発見、求人の探し方、面接同行、日程調整など)
・就労後の定着支援(職場訪問、面談など)
企業にとっての就労移行支援事務所
就労移行支援事務所は企業に対し、インターンや企業説明会などを通して利用者への企業理解、マッチング機会の提供や、雇用後の定着支援をおこないます。
また、利用者と企業の橋渡しをする存在として、障がい特性や、障がいへの適切な接し方などについて説明し、さらに業務内容の再構成やマニュアル作成の手助け、人材育成に関するサポートなどもおこなってくれます。
障がい者を雇用した後、長く働いてもらうためにはその人の特性にあった環境作り、業務の内容、指示などが必要となります。事業所の支援員に相談しながら進めることで、雇用~職場への定着をスムーズに進めていけるでしょう。
定着支援とは
定着支援とは、障がい者は一般企業に雇用された後、環境の変化によって生じる課題に対応できるように支援する事業です。利用者本人との面談をおこなうとともに、企業との間に立ち環境や業務内容の見直し、改善の手助けなどをおこないます。
就職後6ヶ月を超える定着支援は就労移行支援事務所ではなく、就労定着支援事業所がおこないます。団体によっては就労移行支援事務所と就労定着支援事業所の両方を運営していることもあります。
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就労移行支援事業所を活用する企業のメリット
就労移行支援事業所を活用することは、企業にとっても様々なメリットがあります。
ここでは、具体的なメリットを見ていきましょう。
適性を一緒に考えてもらえる
就労移行支援事業所は、利用者の経験や障がいの特性などに合わせて求人探しのアドバイスをおこなうため、自社の求める人材に近い人物が応募してきてくれる可能性が高いでしょう。
その上で、利用者にはどのような業務が適しているのかを見定め、能力を発揮できるポジション、業務、環境などを検討してくれます。
教育のアドバイスがもらえる
障がいによっては画一的な指示の出し方では理解が進みにくかったり、仕事を覚えにくかったりする場合もあります。障がいの特性を深く理解していないと、どのような部分でわかりづらいのか、何が理解の妨げになっているのか、把握できないこともあるでしょう。
就労移行支援事業所は、利用者の持つ障がいの特性に合わせた指示の出し方やマニュアル作成の手助け、作業の構造化なども手伝ってくれるため、人材を適切に育てていくことができます。
就業のサポートをしてもらえる
就労移行支援事業所は必要に応じて面談の同席や職場訪問をおこない、利用者と企業を仲介します。
雇用した後に一緒に働く上司や同僚との意思疎通やコミュニケーションがスムーズにおこなえるまで時間がかかる場合もあるため、最初のうちは通訳的な存在となってくれることもあるでしょう。
自分の状態を理解している人が多い
就労移行支援事務所を利用して就労を希望する障がい者は、トレーニングや学びを通じて自身の障害特性を理解している人が多い傾向にあります。
利用者と企業の両者が障害特性をよく理解していれば、無理な業務を与えてしまう・受入れてしまうことを避けられ、働きやすい環境を得ることができます。
障がいの特性がマイナスの要素にならない働き方や環境を構築できれば、能力を発揮しやすくなり、企業にとっても頼もしい戦力となるでしょう。
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就労移行支援で入社した従業員のマネジメントに適した2つの方法
就労移行支援で入社した従業員は特別扱いせず、他の従業員と変わりなく接し評価することが重要です。それぞれの個性やスキルをよく理解し、必要に応じてスキルアップを促しましょう。
まず、個々のスキルの把握やスキルアップにはオーダーメイドの人材育成が可能なマネジメントシステムを導入することも効果的です。JTBベネフィットのflappi(フラッピ)は、従業員の情報や行動データを収集し、AI等で分析することで適切なフィードバックとレコメンデーションをおこない、従業員の変化と成長を促すことが可能です。
また、JTBベネフィットでは企業の意識改革の一つとして、ダイバーシティセミナーも開催しています。全員が働きやすく生産性の高い職場を作るためのダイバーシティの考え方や推進目的を効率よく周知、啓蒙できるセミナーも併せて導入してみてはいかがでしょうか。
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