副業解禁で企業にとってのメリット・デメリットは?導入の注意点も解説
働き方改革が本格化した今の日本では、副業元年と呼ばれる2018年と比べて、従業員の副業が推奨される時代になりつつあります。今回は、原則として副業禁止ができない状況下で企業が注意すべきポイントや、従業員が副業をおこなうメリット・デメリットなどを解説します。
目次[非表示]
- 1.副業解禁とは?
- 2.副業解禁のメリット
- 2.1.従業員のキャリアアップ
- 2.2.外部リソースの獲得
- 2.3.企業のイメージアップ
- 3.副業解禁のデメリット
- 3.1.情報漏えい
- 3.2.労務管理が難しくなる
- 3.3.従業員の疲労
- 4.従業員の副業を容認する際の注意点
- 4.1.労働時間の管理
- 4.2.健康管理
- 4.3.就業規則の整備
- 4.4.就業規則変更は勝手にできない
- 5.副業解禁は、メリット・デメリットを理解して実施を
副業解禁とは?
副業解禁とは、2018年1月におこなわれた「モデル就業規則」における以下2点の改定によって、副業の推進が本格化したことを指します。
・「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という文言を削除
・「副業・兼業に関する規定」を新設
一般的な企業では、モデル就業規則を見本に自社の就業規則を作成しています。今回、就業規則のもとになる文書が改定されたことで、従業員の副業を全面的に禁止することが実質的に認められなくなったと考えられているのです。
また、政府が打ち出す働き方改革の実行計画においても、副業や兼業が以下の要素を実現する手段として大変有効とされています。
・新たな技術の開発
・起業やオープンイノベーションの手段
・第二の人生の準備
したがって今後も、国内企業で副業を許可する動きは、さらに進んでいく可能性が高いでしょう。
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副業解禁のメリット
副業を解禁すると、企業側に以下のようなメリットが生まれます。
従業員のキャリアアップ
副業を許可する最大の利点は、従業員が他社の仕事を通して新たなスキルや技術を習得することです。
例えば、本業のソフトウェア開発で似たようなプロジェクトばかりに携わっていると、最新技術に触れる機会が減ってしまう可能性があります。こうしたケースにおいて、副業でまったく異なるカテゴリの開発に携われば、社内で教育をしなくても現場で役立つスキルを身につけることができます。
また、副業によって知識や技術力が向上できれば、スキルアップにかかる企業の教育コストも削減につながります。
外部リソースの獲得
慢性的な人手不足の解消にも、副業の活用はおすすめです。例えば、今まで正社員だけの求人を出していた企業が、時短労働者や業務委託などに募集範囲を広げると、副業をしながら技術力を磨く優秀な人材の採用も可能になります。
また、副業の人材はジョブ型雇用であることが多く、プログラム1本などから細かく依頼できるため、急な人手不足などがあった場合にも対応できるでしょう。
企業のイメージアップ
自社のSNSアカウントなどで副業可能であることをアピールすると、副業を希望する優秀な人材が集まりやすくなります。
また、副業ができるということは、自由にキャリアアップやスキルアップができる社風の表れでもあります。ですから、柔軟な働き方ができる環境を求める学生などの目にも留まりやすくなるでしょう。
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副業解禁のデメリット
企業が副業を許可した場合、以下のような難点や不安要素が生じる可能性もあります。
情報漏えい
まず、多くの企業が恐れるのが、副業で関わる他の会社に、自社の大事な情報が漏れてしまわないか、ということです。特に、他社には真似できない独自技術やマーケティング手法などを取り扱う企業の場合、その開発情報などが他社に漏れると、今まで保ってきた競争優位性が低下する可能性もあります。
そのため、副業を許可する際は「従業員の守秘義務とは何か」「情報漏えいするとどのような問題が起こるのか」といった教育を従業員に施すことが必要です。
労務管理が難しくなる
従業員から副業の届出を受けた際、本業の会社で副業の勤怠をどのように管理するかというのも、大きな問題です。例えば、従業員から申告された副業の勤怠もデータ管理する場合、その作業は会社にとって生産性0のプラスの業務ということになります。
また、各種報告をする従業員側にとっても、副業を始める理由や具体的な仕事内容など、本業の会社に知られたくない情報があるかもしれません。こうした心理的負担が重なると、潜在的な離職理由に変わることも考えられます。
従業員の疲労
副業に消極的な企業の多くが懸念しているのは、本業と副業の両方で仕事をすることによって、従業員の心身に多大な疲労が溜まってしまう点です。副業を始めたことによって、本業での集中力低下やミスが頻発すれば、労務提供上の支障という意味でも本末転倒です。
また、副業をしている人のミスによって同じチームの仲間にも残業が発生した場合、本人だけでなく他の従業員にも疲労やストレスなどが生じる恐れもあります。
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従業員の副業を容認する際の注意点
従業員の副業を許可する場合には、以下の点に注意をしなければなりません。
労働時間の管理
労働基準法の第38条では、従業員が異なる事業場で働く場合においても、労働時間は通算することを定めています。ですから、本業と副業における労働時間の合算が法定労働時間の「1週間で40時間、1日8時間」を超えた場合、割増賃金(残業代)が発生します。
その残業代は、後から契約を締結した会社側が負担するのが一般的ですが、場合によっては本業の会社が支払うケースもあります。
2019年4月に残業時間の上限が法改正にて定められたことを含み、本業と副業を合わせた労働時間が法定労働時間を超える可能性が高い場合は、労働時間や残業代の考え方について、法律などの規定を細かく確認しておきましょう。
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健康管理
副業先での労働時間を自己申告制にした場合、「申告が義務ではない」と判断して、正しい時間を伝えない従業員が出てくる可能性があります。こうした状況下で副業をやりすぎた場合、長時間労働を是正するレベルをはるかに超え、過労死ラインになってしまうこともあるため注意しましょう。
労働安全衛生法の第66条では、従業員が副業をしているかどうかに関わらず、企業に健康診断などの実施を義務づけています。副業によって、労働時間が増加する可能性の高い従業員がいる場合は、健康診断などを活用しながら慎重に心身の健康を管理することが大切です。
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就業規則の整備
従業員に副業を許可する際には、就業規則の適切な整備が企業の懸念を減らすことにつながります。
まずは、厚生労働省が公開する「副業・兼業の促進に関するガイドライン」のモデル就業規則を参考に、職務専念義務・秘密保持義務・競業避止義務などの遵守事項や、ルールを守れなかった場合の懲戒規定などを明文化していきましょう。
規則を整備することで、情報漏えいのような万が一のトラブルにも備えられます。また、ルールを明文化することによって、副業開始前の教育も進めやすくなります。
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就業規則変更は勝手にできない
ここで注意したいのが、就業規則の内容は、人事担当者や事業主の判断で勝手に変更できないということです。
副業を認めるためのルールを新たに設けるには、労働組合もしくは労働者の過半数の代表者と協議をして、労働者側の意見書を作成してもらう必要があります。その後、変更後の就業規則や意見書を労働基準監督署長に提出し、受理印をもらわなくてはなりません。
その上で、就業規則の変更内容を従業員に周知していきます。
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副業解禁は、メリット・デメリットを理解して実施を
2018年1月に厚生労働省がおこなったモデル就業規則の改定によって、企業は従業員に対する副業の全面禁止ができなくなりました。
企業が従業員の副業を許可すると、従業員のキャリアアップや外部リソースの獲得、自社のイメージアップといったメリットが得られます。
その反面、副業には従業員の勤務時間増加による心身の疲労や割増賃金の発生、情報漏えいのリスクといった、様々なデメリットもあります。したがって、企業が副業を解禁する際には、従業員が安全に本業と副業の両立ができるように、就業規則の整備や労働時間の管理方法を改善するといった対応が必要です。
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