そのオフィス環境はコロナ対策に有効なの?レイアウトから備品まで企業がとるべき対策とは?
テレワークや在宅勤務と出社が混在する中、私たちの働き方にも新しい日常といわれるニューノーマルの取り組みが求められています。ただ、今はまだ過渡期で、新型コロナウイルスの感染症対策で取り組むべき手は尽くしたのにクラスターが発生する事例もあり、戸惑いや不安を感じながら試行錯誤している人事総務担当者の方も少なくない印象です。
今回は、出社が必要なビジネスパーソンへ向けて、オフィス環境での感染症対策をいくつか取り上げて検証してみます。これは、収束以降も感染症予防に有効な対策ですので、人事総務担当者の方においては、今後の感染拡大に備えて自社のオフィス環境でぜひ実践しましょう。
目次[非表示]
- 1.オフィス環境についての厚生労働省の要請
- 1.1.感染防止のための基本的な対策
- 1.2.クラスター発生防止のための対策
- 1.3.風邪症状が出た場合の対応
- 1.4.新型コロナ陽性者が出た場合の対応
- 2.このオフィス環境はOK、それともNG? <前編>
- 2.1.フリーアドレスオフィス
- 2.2.備品の共有
- 2.3.エレベーター
- 2.4.トイレ
- 3.このオフィス環境はOK、それともNG? <後編>
- 3.1.休憩室、更衣室、喫煙室
- 3.2.給湯室
- 3.3.対面での会議
- 4.まとめ
オフィス環境についての厚生労働省の要請
新型コロナについては、専門家を含め未だにその全貌が把握されていないため、絶対的に安心、安全な対策は存在しません。マスクの着用やアルコールでの手指の消毒は今や誰もがおこなっている感染症対策ですが、企業はできるだけ信頼性の高い情報に基づいて、オフィスにおける具体的な対策をとるしかないでしょう。その点では、政府からのガイドラインは参考になります。
今回は、厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に基づいて、政府が求めている職場対応について概観してみましょう。
感染防止のための基本的な対策
1.飛沫感染を防ぐためマスクの着用と咳エチケットの徹底。
2.石鹸によるこまかな手洗いや、人がよく触れる備品等のふき取り・消毒を徹底すること。
3.労働者に対する検温や、体調不良の場合の上司への報告など、日常的な健康状態をモニタリングすること。
4.その他、長時間労働を避けること、十分な栄養と睡眠の確保などをおこない、健康管理をおこなうよう周知していること。
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クラスター発生防止のための対策
1.基本的な対策として、いわゆる「3密」と呼ばれる換気の悪い密閉空間、多くの人が密集する場所、近距離での会話や発声の3つの条件を満たす空間や環境を避けること。
2.窓が開く場合には、1時間に2回程度、窓を全開にすること。機械換気の場合は、ビル管理法令の空気環境基準を満たすこと。電車など公共交通機関を利用する際にも窓開けに協力することを周知すること。
3.多くの人が密集する環境を回避するためにテレワーク(リモートワーク・在宅勤務を含む)、時差通勤、自転車通勤などを推奨すること。会議はできるだけオンラインでおこない、やむを得ず対面でおこなう場合はソーシャルディスタンス(人との距離を2メートル以上)を確保すること。社員食堂での密集を避けるため、座席数を減らしたり、休憩時間を時間差にしたりすること。喫煙場所の制限などの対策。
4.職場の従業員同士、外来者や顧客、取引先との対面で近距離での会話や発話を抑制すること。
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風邪症状が出た場合の対応
風邪症状等が出た場合、会社は出勤を求めず、従業員は無理に出勤しようとしないこと。また、近隣の相談センターや、相談するための目安を従業員に周知徹底すること。
新型コロナ陽性者が出た場合の対応
陽性者に対して解雇するなどの不利益な取り扱いや差別的な対応をおこなわないこと。陽性者が出た場合にいかなる対応をするか前もってルール化し、従業員に周知すること。
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このオフィス環境はOK、それともNG? <前編>
前項で述べた厚生労働省のガイドラインを前提にして、問題になりやすいオフィス環境をいくつか具体的に取り上げてみましょう。
フリーアドレスオフィス
答え:NG
解説:フリーアドレスオフィスとは、従業員の座席位置を決めずに仕事に応じて自由に座れるようにするオフィスレイアウトのことです。毎日、異なった人が隣に座ることになりますので、従業員コミュニケーションの活性化やレイアウト変更が容易であることがメリットとして挙げられます。
しかし、感染症対策の観点から、デスクやチェア、パソコンのキーボードやマウスなど不特定の従業員が触れることになるため、避けたいところです。フリーアドレスを導入している場合、デスク、チェア、パソコンの使用前は消毒をおこなうことをはじめとした対策をとりましょう。
なお、フリーアドレスを廃止して座席を固定する場合でも、座席と座席の間は2メートル以上の間隔を空け、アクリル板やビニールカーテンなどで間仕切りをするようにします。座席はできるだけ対面を避け、対角もしくは横並びに配置しましょう。オフィスでは定期的に換気して空気の入れ替えをおこないましょう。
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備品の共有
答え:原則NGだが、対策をとった上でOKのものもあり
解説:社内では従業員全員で共用してきた多くの機器や備品があることでしょう。感染症対策の観点からすれば、備品に触れる人が少なければ少ないほどリスクは低くなりますので、文具や紙の共用を避けましょう。
しかし、複合機など大型の機器やオフィスに備え付けている電話に関しては、コストやシステム面からオフィスに何台も設置する訳にはいかないですので、近くにアルコール消毒液を設置して、使用する人が交替する度に消毒を徹底するようにしましょう。
ゴミの処理にも注意が必要です。衛生上、できるだけビニール袋で密閉して、こまめに捨てるようにします。また、ゴミについた鼻液や唾液にウイルスが混在している可能性もありますから、処理後は手洗いを徹底しましょう。
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エレベーター
答え:原則NG。状況に応じて使用方法を判断
解説:エレベーターは言うまでも典型的な「3密空間」であり、不特定多数の人と乗り合わせる可能性が高い密閉空間です。また、ボタンを押すなどの接触機会もあるため、感染リスクは高いです。米疾病対策予防センターによると、3月に中国で無症状の陽性者がエレベーターを一度利用しただけで推定71人に新型コロナを感染させた研究報告がありました。
現在、多くのビルでは、出来るだけ距離を保ってエレベーターに乗ることができるように利用人数を制限しています。それでも急いでいる場合などは、ルールを無視して乗り込みたくなることもあるでしょう。
しかし、エレベーターという感染リスクがかなり高い空間を決して過小評価すべきでないことは明白です。仮に遅刻することになるとしても、自分と周りの人の健康を守るため、混雑しているエレベーターは避け、可能ならば階段を利用するようにしましょう。
また、接触機会とされているボタンを押す場合は、鍵などを使用するなどして、手指を触れないようしましょう。
トイレ
回答:NGというわけにいかないため、細心の注意を払う
解説:新型コロナは体内の消化器でも死滅しないため、排せつ物が感染経路になるリスクも指摘されています。オフィスのトイレは不特定多数の人が利用しますが、使用を完全に避けることはできないため、利用にあたっては細心の注意を払いましょう。
代表的な対策として、トイレの水を流すときは蓋をして流すこと、便座などの接触部分は頻繁に消毒すること、そして使用後はもちろん正しい方法でしっかりと手洗いをすることです。また、ハンドドライヤーは使用を中止し、ペーパータオルを設置するか、従業員は各自のタオルやハンカチを使用しましょう。
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このオフィス環境はOK、それともNG? <後編>
これまで当たり前だったオフィス環境は、ウィズコロナ時代ではどういう判定になるのでしょうか。今後の使用についても検討をおこないましょう。
休憩室、更衣室、喫煙室
答え:NG
解説:休憩室、更衣室、喫煙室は3密空間であるため、感染リスクが高いと言えるでしょう。ただ、休憩や喫煙中の雑談で思ってもみなかったようなアイデアがひらめくことも良くあるもの。屋外など、換気が良いところに休憩、喫煙スペースを設置するのがいかがでしょうか。更衣室では人が密集しないように、時間差で使用するようにルールを作成しましょう。
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給湯室
答え:条件つきでOK
解説:給湯室についても3密空間であることには違いありませんが、用途が限られているので滞在時間が短いため、入室する人数に制限を設けて利用することで問題ありません。ただし、ポット、食器、調理器具、スポンジ、ふきんなど不特定多数の人が触れる備品が多くありますので、アルコール消毒液を備え付けてそれらに触れる前後には手指を消毒しましょう。
対面での会議
答え:原則としてNG
解説:出来るだけ人と人との接触を避ける観点からはオンライン会議が理想なのですが、従業員間のコミュニケーション維持や会議体の特性上で、完全にオンラインのみでというわけにはいかない場合もあるかと思います。その場合は対面の座り方を避け、ソーシャルディスタンスを確保し、パーテーションの設置などの対策をした上で対面での会議に臨みましょう。
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まとめ
ここまで検証してきたように、これまでのオフィス環境や習慣が100%否定されるわけではありませんが、企業側にもかなりの調整が求められることがわかります。重要なことは、人事総務担当者がこれらのオフィス環境がなぜNGなのかそれぞれの理由を確認し、オフィスでの1日に潜んでいる感染リスクをできるだけ減らすために対策を講じることです。
どの企業にとっても、今後は接触を減らしつつも生産性を高める環境をいかに整えることが課題と言えるでしょう。政府や自治体はこれらの対策として、助成金や補助金の制度を紹介しています。特に、中小企業向けの助成金や補助金においては、2020年に新設・延長・拡充されたものも多くあり、以下のリンクにて紹介していますのでぜひチェックしてみてください。
冒頭でも述べたように、私たちは新型コロナの全貌を把握しているわけではなく、オフィス環境にもまだ顕在化していない問題があると考えられることから、もし、問題を一挙に解決したいのであれば、テレワークを実施して出社は必要最低限とし、オフィスを縮小するなどの思い切った解決策が必要なのかもしれません。
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