内発的動機づけとは?企業ができるモチベーションアップ対策を解説
近年では、少子高齢化などの諸要因によって、従業員の生産性向上が求められています。そういった状況により、以前から用いられてきた外的要因だけではなく、内的要因からモチベーションを高める方法に注目が集まるようになりました。
今回は、内発的動機づけとはどのようなものなのか、どういった方法で促されるのかについて、わかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.動機づけとは?概要と近年注目されている背景を紹介
- 1.1.そもそも「動機づけ」とは何か
- 1.2.内発的動機づけが注目される背景
- 2.内発的動機づけのメリット・デメリット
- 3.内発的動機を促す対応策
- 3.1.承認やフィードバックの実施
- 3.2.目標管理
- 3.3.自律性を高める
- 3.4.管理職の教育
- 4.内発的動機づけは便利なソリューションサービスを活用
動機づけとは?概要と近年注目されている背景を紹介
内発的動機づけについて詳しい説明をする前に、まず「動機づけ」の定義や関係性など具体的な内容について、整理しておきましょう。
そもそも「動機づけ」とは何か
動機づけとは、ある要因によって起こした行動を持続させる、人間の内的過程のことです。この言葉は、モチベーション(motivation)の日本語訳でもあります。動機づけには、いわゆる生理的欲求である「生理的動機づけ」と、企業の人材育成にも関係する「社会的動機づけ」の2種類にわけられます。
さらに、社会的動機づけは以下の3つにわけられます。
1.外発的動機づけとは
外発的動機づけとは、自分以外の何かによって力がもたらされることです。企業で働く従業員の場合、上司からの評価や成果などの結果にともなって多くもらえる報酬などが、外発的動機づけにつながります。また、会社が望む成果を出せない従業員が左遷されるといった、いわゆる「アメとムチ」のような対応も、この一種です。
外発的動機づけには、短期間で高い効果が出やすいというメリットがありますが、一方で、報酬や人事異動に多くのコストがかかり、持続性があまり期待できないデメリットがあります。
2.内発的動機づけとは
内発的動機づけとは、自身に内在する関心や興味からやる気が生まれることです。具体例として、子どものブロック遊びを想像するとわかりやすいかと思います。夢中でブロックに触れる子どもは、両親や先生からの評価や報酬のためではなく、「遊びたい!」という願望によって自発的に行動が促されているのです。
これに対して、ビジネスシーンにおける内発的動機づけは、自分の得意分野で責任ある仕事を任され、そこで培った自信や知識をさらに仕事に還元していくという、広い意味での好循環を指す傾向があります。
3.達成動機づけとは
達成動機づけとは、自ら設けた高い目標を「達成したい!」と思う過程で力が生じることです。
達成動機づけが得意な人は、現実的な課題達成の原因を内的要因に帰属できます。そのため、目標や課題を達成し、自己効力感を高めることが可能です。また、失敗した場合においても、その経験を自己コントロールに役立てられることから、行動の持続性が高い傾向もあります。
このように達成動機づけには、長期的な活動の推進力や、競争の原動力になるメリットがあるのです。
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内発的動機づけが注目される背景
人手不足などの問題を抱える日本の中小企業には、社員一人ひとりがスキルなどを高め、生産性向上をするための取り組みが重要とされています。そこで、個々の能力向上につながるモチベーションアップに注目が集まっているのです。
ここで紹介したいのが、心理学者のマズローによる「自己実現理論」です。この理論では、人間の欲求が以下の5階層にわけられるとしています。
・第5階層:自己実現欲求(自分の人生観に基づく、あるべき自分になりたい欲求)
・第4階層:承認(尊重)の欲求(自分自身や他人から、自分が価値ある存在だと認められ尊重されたいという欲求)
・第3階層:社会的欲求(家庭や会社、友人から受入れられたいという社会的な欲求)
・第2階層:安全の欲求(安心安全な暮らしへの欲求)
・第1階層:生理的欲求(食欲や睡眠欲、性欲などの生理的欲求)
マズローの自己実現理論では、上位階層の欲求を満たす人が多いほど、企業や組織に生産性向上などの好循環が起こりやすくなるといわれています。
上記の5階層と照合すると、先述の外発的動機づけは、会社や同僚から受入れられたいという第3階層の社会的欲求によるモチベーションです。一方、自分の興味や関心によってつき動かされる内発的動機づけは、外発的動機づけよりも高い第4階層以上に位置すると考えられます。
こうしたことからも、従業員に内発的動機づけを促す取り組みは、企業が生産性向上などの目標を達成するために非常に有効であると捉えられるでしょう。
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内発的動機づけのメリット・デメリット
内発的動機づけには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
従業員の得意分野や興味によって内発的動機づけが促されると、高い集中力が発揮され、質の高い行動を自ら積極的に継続できるようになります。こうして多くの従業員が主体的に仕事をすれば、管理監督者の負担も軽減されるでしょう。
また、従業員が高い集中力で仕事に臨むことによって全体作業が早く完了すれば、想定外の残業なども生じにくくなります。
こうしてメリットを並べてみると、従業員それぞれに生じる内発的動機づけが、余計な人件費の削減や働きやすい環境づくりなどを実現することがわかります。
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デメリット
内発的動機づけのデメリットは、モチベーションの個人差が大きいことです。
例えば、子どものブロック遊びの事例で考えると、どれだけその遊びが好きか、という興味の大きさや、その遊びに夢中になれる時間の長さなどは、人によって差があります。
このように、モチベーションアップの源が個人の中にある内発的動機づけの場合、報酬などの外発的動機づけと比べて、組織内で同じレベルを保つことは難しいかもしれません。また、管理監督者は従業員の心の中を確認できないため、動機のコントロールも外発的動機づけより難しく感じるでしょう。
なお、内発的動機づけには、効果があらわれるまで時間がかかるという特徴もあります。ただし、こちらは本人の理解力やモチベーションによっても変わってきますので、一概に難点であるとはいえません。
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内発的動機を促す対応策
内発的動機づけにおけるデメリットを解消するには、この種類のモチベーションを刺激する以下のような対応策の実践がおすすめです。
承認やフィードバックの実施
内発的動機づけがあまり強くない従業員のモチベーションを高めるためには、まず上司が承認やフィードバックをおこないましょう。これらを通して従業員は、「自分は認められている」、「自分は評価されている」と学び、認識させることができます。
この考え方で、マズローの自己実現理論における第3層の社会的欲求が満たされると、次のステップである自己尊厳欲求の内発的動機づけにシフトしやすくなります。
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目標管理
内発的動機づけをさらに高めるには、上司が従業員の興味や関心を促すための具体的な目標設定のサポートも効果的です。例えば、ソフトウェア開発に興味を持って入社した新人に資格試験などを紹介すると、そこに向かって学習することで知識が深まり、さらに好奇心や創造性が刺激される可能性があります。
また、上司が目標設定に関わることで、内発的動機づけにおけるコントロールや助言もしやすくなるでしょう。
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自律性を高める
内発的動機づけを促すためには、従業員が主体的に選択や行動をするための有能感と自律性も不可欠です。
これらを高めるためには、今生じている問題について正しい答えを押し付けるのではなく、まず「○○さんはどう思うの?」などとサポートして、本人に考えさせる必要があります。
こうした支援を続けると、自己決定に対する自信が付き、興味を持った目標に向かって主体的に作業を進められる人材になっていきます。
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管理職の教育
内発的動機づけの高い人材を増やすためには、これまで企業がおこなってきた外発的動機づけと内発的動機づけの違いを管理職に理解してもらう取り組みも必要です。
例えば、今まで報酬や評価によって従業員のモチベーションをコントロールしてきた会社の場合、短期間での効果が出にくい内発的動機づけのメリットが理解されにくい傾向があります。
しかし、管理職の意識が変わらなければ、従業員の内発的動機づけはなかなか促されません。従業員の内面における高いレベルの成長を求める際には、教育を通して部下だけでなく上司の意識も変える必要があるでしょう。
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内発的動機づけは便利なソリューションサービスを活用
少子高齢化による人手不足などに悩まされる中小企業には、従業員一人ひとりのモチベーションや生産性を高める、内発的動機づけを促すことが必要です。内発的動機づけには、高い集中力によって質の良い作業を長く続けられるなどのメリットがあります。
従業員の内発的動機づけを促すためには、計画的な人材教育、マネジメントが有効です。従業員と組織の多様な情報や行動データを収集・分析できる「flappi(フラッピ)」は、従業員の適性や関心などの調査を把握する上でも非常に役立ちます。
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