適切な対処が欠かせない、「感情労働」の意味と企業が行うべきこと

適切な対処が欠かせない、「感情労働」の意味と企業が行うべきこと

「感情労働」という言葉をご存じでしょうか。肉体労働や頭脳労働に対して、感情を使うことが仕事上重要な労働のことです。接客業に当てはまりますが、これはほかの職種とは精神的な負荷のかかり方が違うため、最近では独立して考えることが重要とされています。今回は、この感情労働の中身と企業が取るべき対策について見ていきます。

目次[非表示]

  1. 1.感情労働とは?
  2. 2.なぜ感情労働への対策が必要なのか?
  3. 3.感情労働への対策はどんなものがある?
    1. 3.1.正しい知識を身に付ける
    2. 3.2.ストレスチェックやカウンセリングなどの充実
    3. 3.3.メンタルヘルス・マネジメント検定
    4. 3.4.日常における面談
  4. 4.感情労働者を支える体制づくりが大切

感情労働とは?

感情労働とは、感情が労働の主要な部分を占める仕事を意味します。肉体労働であれば肉体を、頭脳労働であれば頭脳を主に使うことで賃金を得ますが、感情を主に使うことによって賃金を得るものが感情労働というわけです。この言葉は、社会学者A・R・ホックシールドが提唱したもので、著書『管理される心』の評価の高まりとともに2000年以降に注目を集めるようになりました。ここでの「感情」とは、どちらかといえば何かを感じるという日常的な意味よりも、感情を抑制したり緊張させたりということが意識されています。

感情労働の代表的な職種である接客業について考えると、具体的なイメージが湧きやすいでしょう。接客業では、常に顧客へのサービスを示す態度が求められます。例えば、朝から憂鬱(ゆううつ)な気持ちであったとしても、顧客に対しては常に笑顔で応対しなくてはなりません。こうした感情労働は接客だけではなく、看護師や介護士のような医療・介護関係、客室乗務員やコールセンターのオペレーターなども当てはまります。

これらの職種では、一日の多くの時間で感情をコントロールして過ごすため、肉体労働における身体の疲労と同じように、精神的なストレスが残ります。ここでは、身体的な疲労とは異なった回復措置が必要であり、このために感情労働はほかとは異なったものとして捉える必要があるのです。


なぜ感情労働への対策が必要なのか?

では、なぜ感情労働への対策が注目されているのでしょうか。理由のひとつは、感情労働が社会全体で増えていることがあります。2014年の時点で第3次産業は国内労働者の7割以上が就業しており、2000年時点と比較すると1割以上もの増加を見せています。

このうち伸び率が高いのが公共サービスで、さらにそのなかでも福祉・介護の分野が高くなっています。この傾向は少子高齢化が続くことが確実視されている以上、今後も拡大するものと見られます。さらに、企業競争の激化や社会の成熟に伴って、広範な分野でサービス品質が求められるようになっており、従来よりも感情労働に含まれる職種が増えていることも一因です。

例えば、ITエンジニアや公務員は一般的には感情労働とは考えられていませんが、顧客や市民に満足度の高いサービスを提供するために感情をコントロールしていることは十分考えられます。「サービス経済化」という言葉で表されるように、社会が成熟するにつれてサービス業の割合は増えることが知られていますが、まさに日本もこの段階にあり、感情労働への適切な対処はより深刻度を増した課題となっていると言えるでしょう。

ストレスに対処しなかった場合には深刻な事態に

社会全体としてはサービス業は増える傾向にあるものの、残念ながら感情労働に対する適切な対処はまだまだ理解が深まっていないのが現状です。しかし、先にも述べたように感情労働はほかに比べて精神的な負荷が大きくなることが特徴で、それによって生じるストレスに適切に対処しなければなりません。自分の感情を抑制することによるストレスがたまっていけば、仕事への満足度が低下し、バーンアウトや鬱(うつ)、依存症といった精神的な障害を抱えることもあり得ます。対処法を知ることは、そうした事態を防止するための第一歩なのです。


感情労働への対策はどんなものがある?

それでは、具体的な対策としてはどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。ポイントごとに見ていきましょう。

正しい知識を身に付ける

先にも述べたように、対策の第一歩は感情労働についての理解を深めることです。まずは企業内で起点となるべき経営陣や人事・総務担当者が知識を身に付け、その上で適切なストレスマネジメントやセルフチェックについて従業員への指導を積極的に行っていきましょう。従業員が自らをケアする意識を高めることが深刻な事態を防ぐことにもつながります。

ストレスチェックやカウンセリングなどの充実

2015年の労働安全衛生法の改正により、従業員が50人以上のすべての事業所で、毎年1回のストレスチェックが義務付けられました。簡単な質問票への記入から従業員のストレス状態を把握するものです。これによって心の不調を事前に発見することができるほか、職場環境の改善につなげることもできます。

加えて、人事・総務担当者の視点からは、カウンセラーや産業医に相談できる体制づくりも重要です。ここはなかなか社内のリソースだけでやりきることが難しい場合もあり、そうしたケースでは外部の専門家の手を借りるのが効果的でしょう。総合的なカウンセリングを中心に従業員をサポートする従業員支援プログラム(EAP)を提供している企業もあり、必要な部分で連携を行い効率的に進めていくことがカギです。

メンタルヘルス・マネジメント検定

メンタルヘルスという言葉は近年よく聞かれるようになりましたが、なかにはうつ病のような病気に関することだと勘違いしている人もいるかもしれません。メンタルヘルスとは「心の健康」と訳される言葉で、必ずしも精神的な疾患と診断されていなくとも重視されるべきものです。

WHO(世界保健機関)によれば、メンタルヘルスは社会や経済の影響も受けるため、個人だけの問題ではありません。この分野での企業の取り組みに対する注目度は高まっていますが、すべての従業員が生き生きと毎日を過ごすことがメンタルヘルスケアの目的だとすると、事業基盤を安定・強化するための施策と言えるかもしれません。

感情労働が事業の大きな部分を占める企業であれば、マネジャーがメンタルヘルス・マネジメント検定のための講座を受講したり、資格を取得したりすることも有効です。この検定は、メンタルヘルスを正しく管理し、心の不調を未然に防ぐ知識や対処方法を習得することを目的に設けられているものです。経営陣の習得に向いているI種(マスターコース)、現場で従業員と接する管理職クラス向きのII種(ラインケアコース)、そして一般の従業員が自らのメンタルヘルスを管理していくためのIII種(セルフケアコース)に分かれているので、必要に応じたコースで知識や技術を習得することができます。

日常における面談

業務によるストレスは日々蓄積されるものであるからこそ、日ごろ従業員に最もよく接する現場の管理職が早く察知することも重要です。業務上での課題を発見・解決を手助けすることや、従業員の状態をタイムリーに把握するためにも上司と部下の面談を密に行い、企業がその状況を知っておくことが大切です。こうした日常的なコミュニケーションのなかで、職場改善の糸口がつかめるかもしれません。


感情労働者を支える体制づくりが大切

社会的にはサービス業の需要は増え続けているものの、感情労働者への配慮は必ずしも積極的に行われてきませんでした。しかし、昨今の人手不足も背景に、離職率を減らすことは企業にとってより深刻な問題となり、感情労働から受けるストレスも徐々に意識されるようになってきています。正しい知識で適切な施策を打っていくことで、元気な職場を維持していくことがより良い組織づくりにつながります。



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