驚くほど作業効率の上がるパワーナップとは?その正しい方法と導入事例
日中、勤務している間に実践する「パワーナップ」が注目されています。わずかな時間で頭がスッキリするなどの効果が科学的に実証され、社内制度として導入・推奨する企業も増えているようです。
社員の心身の健康や働きやすい環境作りに向けた施策として興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今回は、パフォーマンスや生産性の向上にも役立つといわれるパワーナップについて詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.パワーナップとは
- 1.1.パワーナップの定義と意味
- 1.2.パワーナップの歴史
- 1.3.パワーナップの科学的根拠
- 2.パワーナップの効果と導入メリット
- 2.1.疲労回復とモチベーション向上
- 2.2.作業効率の向上
- 2.3.作業品質の向上
- 2.4.柔軟な発想が生まれる
- 2.5.従業員の健康増進
- 3.パワーナップの効果的な実践方法
- 3.1.時間を明確に区切る
- 3.2.横にはならない
- 3.3.暗さとほど良い雑音
- 3.4.カフェインを摂取
- 3.5.パワーナップ中の周囲の配慮
- 4.企業におけるパワーナップ制度の導入事例
- 4.1.対照実験をおこなってから本格導入した事例
- 4.2.仮眠スペースを設けた事例
- 4.3.オフィス空間での実施を奨励した事例
- 4.4.ルールを策定してメリハリある実施を実現した事例
- 5.仕事に睡眠を取り入れて従業員の幸福と生産性を高めよう
パワーナップとは
はじめに、パワーナップという概念の意味や歴史、効果とその科学的根拠をご説明します。
パワーナップの定義と意味
パワーナップとは、日中に取る15~30分程度の仮眠のことです。短い時間でも睡眠の効果を最大化(パワーアップ)する睡眠法として、社会心理学者ジェームス・マース氏によって作られた言葉です。昼間に取る仮眠は、夜の睡眠の3倍ほどの効果があるともいわれています。
パワーナップの歴史
パワーナップの効果について実験をおこない、科学的根拠を見出したのはNASA(アメリカ航空宇宙局)でした。パイロットに26分間のパワーナップを取らせると、認知能力が34%、注意力が54%も向上したのです。
GoogleやMicrosoft、Appleなどの世界的な先進企業も従業員のパフォーマンスや生産性の向上のため、パワーナップに着目しています。そして、様々な企業が積極的にパワーナップを推進・推奨し、独自の研究結果を公にしたことで、パワーナップの効果が世界的に認知されるまでになりました。
パワーナップの科学的根拠
午後に眠気を感じる人は多いでしょう。これには2つの要因があります。
1つめの要因は人間の生体リズムです。眠くなるタイミングは夜中だけなく、昼間の14~16時頃にも訪れます。
もう1つの要因は、脳内のオレキシン作動性ニューロンの活動の影響です。ニューロンが活動している際には、オレキシンという物質が分泌されて覚醒状態になり、逆に、ニューロンの活動がオフになると眠くなります。食事をすると血糖値が上がりますが、血糖値が上昇することでもニューロンの活動はオフになり、オレキシンの分泌が抑制されてしまいます。したがって、多くの人が昼食後に眠くなるのです。
また、短時間のパワーナップでは、深い眠りのレム睡眠ではなく、浅いノンレム睡眠の状態になります。ノンレム睡眠には4つのステージレベルがあり、パワーナップにおけるレベルはステージ2です。カリフォルニア大学の研究で、このステージ2の状態では脳内メモリがリセットされ、蓄積されたあらゆる情報が整理されて優先順位がつけられることがわかっています。つまり、パワーナップはワーキングメモリの強化につながる可能性が高いといえます。
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パワーナップの効果と導入メリット
企業がパワーナップを推奨し、制度を導入することで、職場にどのようなメリットがもたらされるのかを見ていきましょう。
疲労回復とモチベーション向上
パワーナップは短時間ですが、朝に起床してからフル回転している脳にとっては大きな休息です。とりわけ、デスクワークなどの身体より頭を使う仕事では、自覚がなくてもかなりの疲労が蓄積されています。一日の途中のパワーナップで疲労感が軽減し、スッキリとした気持ちが得られたなら、業務へのモチベーションも維持・向上しやすくなるでしょう。
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作業効率の向上
NASAやGoogleなど多くの世界的企業や機関における研究で、パワーナップには記憶力や注意力を向上させる効果があるということが実証されています。午前中からのあらゆる活動でエネルギーを消費するため、午後に疲れが出て作業効率が落ちるのは必然でしょう。そこでパワーナップを取れば、心身や神経の疲れからくる作業効率の低下を緩和できます。
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作業品質の向上
ランチの後の時間に眠気を感じる人も少なくありません。眠気や疲れは集中することの妨げになりますが、パワーナップをすることで集中力や判断力は向上します。しっかり覚醒した状態が維持できるため、ミスや事故を起こす可能性も下がるでしょう。
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柔軟な発想が生まれる
パワーナップの実践者の中には、クリエイティビティが上がると実感している人もいます。脳が集中や記憶などの機能を維持しやすくなるだけではなく、ストレス緩和によって、いわゆる「冴えている状態」が長く維持できるようになります。
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従業員の健康増進
パワーナップは睡眠不足を補う行為です。パワーナップによって睡眠時間を確保できれば、軽度のストレスは解消されやすくなります。また、十分な睡眠は心身の不調や病気の予防にもなるため、社員が健康的に働き続けることにもつながります。長期的に見ると人材コストが下がることも期待できるでしょう。
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パワーナップの効果的な実践方法
漫然とした昼寝ではなく、頭をスッキリさせて生産性を向上させる正しいパワーナップのおこない方を解説します。
時間を明確に区切る
仮眠する時間は20~30分が最適です。30分以上になると逆効果になってしまうため、時間を明確に区切って実践しましょう。また、パワーナップを実践する時間帯は正午から15時の間が適しています。ランチの後に時間を取りやすいという方も多いでしょう。夕方以降にパワーナップを取ると、夜の睡眠時間に近いため、夜になかなか寝付けない、よく眠れないなどの悪影響が出ることもあります。夕方以降の仮眠は避けることがポイントです。
横にはならない
寝る姿勢にも気を配りましょう。横になってしまうと深い眠りになりやすく、昼寝した後のスッキリ感が得られにくいようです。椅子に座ったまま机に伏せるなど、身体を起こした体勢での仮眠をおすすめします。こうすると交感神経が適度に刺激され、スッキリとした目覚めが得られます。
暗さとほど良い雑音
仮眠の体勢になってからは、スムーズに眠りに入れるのが理想です。そのためにも、アイマスクなどを活用してできるだけ光を遮断したり、周りの音や声が気にならない静かな場所でおこなったりと、眠りに入りやすい環境を作る工夫をしましょう。
カフェインを摂取
パワーナップをする直前にコーヒーなどでカフェインを摂取するのもおすすめです。15~20分後の起きるべきタイミングでカフェインの覚醒効果が出始めるため、スッキリと目覚めることができます。
パワーナップ中の周囲の配慮
勤務中のパワーナップの実践では周囲の協力が欠かせません。15~20分の間パワーナップに集中できなければ、正しい効果は得られません。本人宛の電話がかかってきても起こすのは避け、後で折り返す旨伝えるなどの対応をしましょう。本人がパワーナップに入る前に周りにひと声かけることも大事です。
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企業におけるパワーナップ制度の導入事例
科学的根拠は理解できたとしても、「昼寝」の制度化に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。そこで、実際にパワーナップを制度化して成果を収めている企業の事例を紹介します。
対照実験をおこなってから本格導入した事例
従業員に「仮眠なし」の2週間と「仮眠あり」の2週間、集中力を測るデバイスをつけて比較実験をした企業があります。30分の仮眠を取ったほうが、より集中力が高いという結果が出ました。実験に参加した従業員の8割が仮眠を継続したいと答えています。
仮眠スペースを設けた事例
社内に仮眠用のスペースを設ける企業も増えています。海外の先進大企業などでは、ナップルームだけでなくナップポッドと呼ばれる専用機器を導入しているところもあるようです。高額な準備はできない企業でも、専用ルームに簡易ベッドやハンモックなどが設置されています。
オフィス空間での実施を奨励した事例
会議の少ない時間帯に、会議室を「仮眠できる部屋」として開放している企業もあります。その時間帯はリラクゼーション効果のあるヒーリングミュージックをかけたり、アロマを焚いたりと様々な工夫がされているようです。オフィス空間を有効活用するという意味でも取り入れやすい方法ではないでしょうか。
ルールを策定してメリハリある実施を実現した事例
パワーナップの導入に際して、明確なルールを設けることで成果につなげた企業もあります。周知されたルールとは以下のとおりで、従業員にも好評だそうです。
1. 眠いと感じたら仮眠して良い
2. 長さは15〜20分程度
3. 場所はデスクや社用車
4. 周りはパワーナップ中の人に声をかけない
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仕事に睡眠を取り入れて従業員の幸福と生産性を高めよう
日本でもパワーナップは広がっており、うれしい効果を実感する社会人や企業が増えています。長さ、時間帯、パワーナップを実践する環境が揃えば、生産性アップの期待も持てるでしょう。
パワーナップは、従業員に健康や睡眠への意識を高めてもらうためにも有効な施策ではないでしょうか。企業が従業員の健康に配慮する取り組みは、求職者をはじめとしてあらゆるステークホルダーの高評価につながる要素となっています。
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