ハラスメントを防止する!根拠法令や防止に役立つ10つのポイントを紹介

​​​​​​​​​​​​​​ハラスメント防止などブラック企業に対して警告をする従業員

この記事のまとめ

・ハラスメントとは、「嫌がらせ」を意味し、1980年台から普及し始めた

・セクシュアルハラスメントの普及以降に様々なハラスメントが定義され、それらの防止を目的とした法整備も進んでいる

・ハラスメントの要因は、個人の問題と組織の問題に大別できる

・ハラスメントは法規程で禁止されているが、2021年度の法改正でその対策が強化された

・ハラスメント防止には、法規程遵守、教育マネジメント、組織・社内ルールの整備運用が必要

・ハラスメント防止には防止マニュアルやチェックリストの作成やコンサルタントへの相談も有効

目次[非表示]

  1. 1.ハラスメントとは
    1. 1.1.ハラスメントとは
    2. 1.2.ハラスメントの歴史
    3. 1.3.多様なハラスメントとその定義
    4. 1.4.ハラスメントが企業に与える影響
  2. 2.ハラスメントが起きる要因
    1. 2.1.個人の問題
    2. 2.2.組織の問題
    3. 2.3.ハラスメントの抑制手段
  3. 3.ハラスメントに関する法律と具体的な規程
    1. 3.1.ハラスメントに関する法律
    2. 3.2.主要なハラスメントに関する各種法規定
    3. 3.3.ハラスメント対策関連法の要綱
  4. 4.ハラスメントを防止するための10のポイント
    1. 4.1.規程整備
    2. 4.2.組織整備
    3. 4.3.教育・マネジメント
    4. 4.4.ルール策定・運用
  5. 5.まとめ

ハラスメントとは

部下が上司に過剰に叱責されパワーハラスメントが発生しているオフィス

ハラスメントとは

ハラスメントは「嫌がらせ」です。その定義は様々な論文が示していますが、本人の意図に関係なく、他者への言動が他者に不利益や脅威を与えることで、厚生労働省では以下の表にある3点の要件を全て満たすもの​​​​​​​と定義しています。


ハラスメントの構成要件

構成要件
優越的な関係を背景とした言動
職務上の地位が上位の者や集団による言動
業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
業務上明らかに必要性のない言動
労働者の就業環境が害されるもの
就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるもの

参考:厚生労働省 あかるい職場応援団 ハラスメント基本情報

ハラスメントの歴史

ハラスメントは、1980年代に普及した性的な嫌がらせを意味する「セクシュアルハラスメント」に起源を持ちます。その後、1989年に職場で上司と対立関係にあった部下が被害に遭ったセクシュアルハラスメントに関する日本初の裁判が行われ、同年、「セクハラ」という言葉が新語・流行語大賞を受賞しました。それから現在に至るまで、多様なハラスメントが定義・認知されています。


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多様なハラスメントとその定義

ハラスメントを具体的にイメージするために、代表的なハラスメントを紹介します。


代表的なハラスメント

名称(略称)
要件(就業環境の害される要因類型・その対象)
パワーハラスメント(パワハラ)
優越的な関係を背景にした業務上不必要な言動
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
労働者の意に反する性的な言動
マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠出産・育児休業を申請・取得した女性への言動
ケアハラスメント(ケアハラ)
介護休業を申請・取得した労働者への言動
モラルハラスメント (モラハラ)
言動による精神的な暴力。各種ハラスメントを包括
時短ハラスメント(ジタハラ)
労働時間短縮の強要。業務量削減や業務効率化が伴わないケースが多い
アルコールハラスメント(アルハラ)
飲酒の強要や酔いつぶし、酔った上での迷惑行為など
スモークハラスメント(スモハラ)
喫煙の強要や意図に関わらず周りに煙を吸わせるなど
アカデミックハラスメント(アカハラ)
研究及び教育分野における力関係による嫌がらせなど
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
性別で性格や能力の決め付けること。セクハラの一部
ドクターハラスメント(ドクハラ)
医療従事者の患者や家族に対する心ない発言や行動

近年は論文も見かけるようになりましたが、男性の育児による休業や時短勤務に対するハラスメントをパタニティハラスメント(パタハラ)といいます。今後、男性の育休増加に伴い、パタハラのさらなる顕在化が想定されます。


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ハラスメントが企業に与える影響

パタハラを含め、ハラスメントの発生が企業に与える各種影響を紹介します。以下のデメリットに共通していることとは、企業の業績と職場の環境が悪化することにつながります。したがって、従業員の心身の健康維持や以下のデメリットに鑑みて、経営トップがハラスメントへの意識を変え、危機管理のメッセージとしてトップダウンで予防するための具体的方針を示すことが重要です。また、社内のコミュニケーションを活性化させて、ハラスメントの火種になる誤解を生まないように職場環境を整えることも必要です。


1. 離職者の増加

会社にネガティブな印象を覚え、被害者を含み従業員全体の離職リスクが増加します。


2. 生産性の低下

従業員のモチベーションや帰属意識が低下し、労働生産性が低下します。


3. 採用力の低下

ハラスメントの実態がインターネット等を通じて認知されることで、会社の採用力が低下します。


4. 信用力の低下

ハラスメントの発生が認知されることで、会社の社会的信用力が低下します。


5. 訴訟リスク

会社が法令違反や安全配慮義務違反(労働契約法5条)に問われる可能性があります。


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ハラスメントが起きる要因

ジェンダー平等やセクハラ防止を推進する従業員

ハラスメントの要因は、個人と組織に大別できます。

個人の問題

個人の価値観や感覚によるものです。具体例として、「自分はハラスメントをしているつもりはなかった」というように、本人(加害者)に自覚がない場合、「これをハラスメントだと思う相手がおかしい」といった議論に陥りやすくなります。

ハラスメントにおいて、原則として加害者の意図は考慮されないとはいえ、ハラスメントの線引きは個人の感性に依る部分も大きく、判断が容易ではないために問題が複雑化しています。

組織の問題

組織の問題として、職場での意思疎通や教育不足が挙げられます。さらに、多様な社員が在籍していたり、本社から干渉を受けにくい支社等では、ハラスメントが発生しやすい状況に陥りやすくなります。

ハラスメントの抑制手段

ハラスメント防止宣言を掲げる企業が増えていますが、宣言することで社内外にハラスメントを許さない姿勢をアピールできます。また、社内ポスターや標語掲示等による意識付けや研修はもとより、ハラスメントに関するリーフレットやチラシの配布、eラーニング等による教育やハラスメントの理解度を測定する試験の実施等がハラスメントの抑制手段として一般的です。

このようなハラスメント防止に資する具体的な項目を記したマニュアルを作成し、チェックリストと共に各部署で運用することでハラスメント抑制効果が高まります。チラシやリーフレット、eラーニングや理解度を図る試験の概要や雛形はインターネット上にもありますが、実効性を高めた取り組みを実施したい場合は、コンサルタントや弁護士等への相談窓口や専門機関の利用も有効です。


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ハラスメントに関する法律と具体的な規程

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ハラスメントに関する法律

ハラスメントに関する法律は、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)、男女雇用機会均等法育児・介護休業法労働契約法等です。中でも、パワハラ防止法は令和元年(2019年)5月にハラスメント対策関連法案が可決され、令和2年(2020年)6月1日に大企業を対象に施行されました。なお、中小企業へは2022年4月1日から適用される予定です。

主要なハラスメントに関する各種法規定

ここでは、ハラスメント規定の一例を紹介します。紹介する内容は、ハラスメント対策関連法の可決により規定の強化や関連規定の新設がなされていますので、ハラスメント対策関連法の要綱に基づいて解説します。


パワーハラスメント(パワハラ)

労働契約法5条

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする


セクシュアルハラスメント(セクハラ)

男女雇用機会均等法11条

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない

※同条4項より、事業主が措置を適切かつ有効に実施できるように厚生労働省が指針を策定


マタニティハラスメント(マタハラ)

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律10条

事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない


育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律16条

第十条の規定は、介護休業申出及び介護休業について準用する

※男女雇用機会均等法9条にも規定あり。また、同法11条および、育児・介護休業法28条に基づき、適切な防止措置がなされるように、厚生労働省がそれぞれの指針を策定


時短ハラスメント(ジタハラ)

時短ハラスメントは比較的新しいハラスメントで、直接的に記載する法律はありません。しかし、広義にはパワハラに該当しますので、労働契約法5条に抵触する可能性が高いハラスメントです。

ハラスメント対策関連法の要綱

1. 国の施策にハラスメント対策を明記

パワハラ防止法に規定する「国の施策(第4条)」に、「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策を充実すること。」が追記されました。


2. パワーハラスメント防止対策の法制化

以下の内容が法制化されました。
・ハラスメントの定義
・パワハラ防止のため、相談体制の整備等を義務化
・事業主が講じる雇用管理上の措置の具体内容を定める指針を策定
・パワハラに関する労使紛争を、紛争解決援助、紛争調整委員会による調停(行政ADR)の対象とするとともに、措置義務等について履行確保(助言、指導、勧告等)のための規定を整備


3. セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントの防止対策強化

以下の内容が強化されました。
・他の労働者に対する言動に注意を払うこと等を関係者の責務として明記
・労働者がセクハラ等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取扱いを禁止
・自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行った場合、相手から事実確認等の協力要請に応じる努力義務


4. 調停の出頭・意見聴取の対象者の拡大

セクハラ等の調停制度について、紛争調整委員会が必要を認めた場合には、関係当事者の同意の有無にかかわらず、職場の同僚等も参考人として出頭の求めや意見聴取が行えるよう、対象者を拡大しました。

参考:日本労働組合総連合会 ハラスメント対策関連法について


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ハラスメントを防止するための10のポイント

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厚生労働省が示すセクハラ防止の指針を例に、ハラスメント防止の方法をポイントで紹介します。他のハラスメント対策にも共通しますので、社内規定の雛形作成等にご活用ください。

規程整備

1. セクハラの行為者を対処する方針やその内容を就業規則等に規定し、周知
 事例:教育機関ではハラスメント防止のガイドラインをホームページへ記載し、学生のみならず教員や関係者など広く周知

2. 相談や事実確認に協力したこと等による不利益な取扱いの禁止を定め、周知

組織整備

3. 相談窓口を設置

4. 組織として事実関係を迅速かつ正確に確認する体制を整備

教育・マネジメント

5. セクハラの定義やセクハラを禁止する方針を明確にし、労働者に周知
 事例:製造業A社の取り組みとして、廊下にハラスメント防止を啓発するポスターや標語を掲げて従業員の意識を高めつつ、研修においてもeラーニングやハンドブックなどの資料を配布してハラスメント教育を実施

6. 相談窓口にて広く相談に応じ、相談員が適切に対応できる教育・マネジメントを実施

ルール策定・運用

7. 事実確認後、速やかに被害者に対する配慮措置を実施

8. 事実確認後、行為者(加害者)に対する措置を実施

9. 報復行為などの再発防止に向けた措置を講ずる(事実が確認できなかった場合も同様)

10. 相談者・行為者等のプライバシーを保護

参考:厚生労働省 事業主が雇用管理上講ずべき措置とは


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まとめ

今回は、ハラスメントの概要に加え、関連法令や防止策を紹介しました。本記事は、ハラスメント教育や社内規定整備の際の参考資料としてください。


この記事のまとめ

・ハラスメントとは、「嫌がらせ」を意味し、1980年台から普及し始めた

・セクシュアルハラスメントの普及以降に様々なハラスメントが定義され、それらの防止を目的とした法整備も進んでいる

・ハラスメントの要因は、個人の問題と組織の問題に大別できる

・ハラスメントは法規程で禁止されているが、2021年度の法改正でその対策が強化された

・ハラスメント防止には、法規程遵守、教育マネジメント、組織・社内ルールの整備運用が必要

・ハラスメント防止には防止マニュアルやチェックリストの作成やコンサルタントへの相談も有効


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