【お悩み解決】会社の就業規則で禁止される副業や会社が副業に気付く理由は?本業以外の全ての副業を禁止する違法性を判例も含めて徹底解説!
会社が就業規則で副業(兼業)を禁止するケースは多々あります。「副業とは本業以外で収入を得るもの」としても、どこまでが禁止される副業かピンとこないですよね。この記事では禁止される副業の内容や会社が副業に気付く理由、副業禁止の違法性を判例も踏まえて確認します。また、経営者や社員に聞いた「社員の副業についてのホンネ」もご紹介します!
この記事のまとめ
・株やFX、不動産などの資産運用は原則禁止されない
・会社が無条件で副業を禁止することは法律違反になる可能性がある
・公務員の副業は条件付きで認められている
・副業の普及に伴う転職リスクを防ぐため、企業には評価制度の充実が求められる
目次[非表示]
会社の就業規則にある副業禁止は違法なのか〜判例を含め検証〜
副業は法律上でどのような扱いなのでしょうか。
また、副業とよく似た意味で「兼業」があります。副業と兼業との違いに法的な定義はありませんが、副業は「本業のかたわらにする仕事」、つまり本業より労力がかからない仕事に対して、兼業は「本業のほかに、べつの事業を兼ね行うこと」という意味とされており、兼業は本業と同等の労力がかかる仕事である場合があります。
このポイントを踏まえ、根拠も含めて紹介します。
副業と法律
副業そのものについて規定した法律はありません。ただ、「国が副業を推進している」と言われる理由の1つは、厚生労働省の「モデル就業規則」において「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一文が削除されたためです。これにより、副業や兼業も柔軟な働き方として推進されるようになりました。
また、副業は基本的に憲法や労働基準法で認められています。該当する法律をわかりやすくご紹介します。
1.憲法22条1項 「職業選択の自由」
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」
この条文では、職業選択の自由を保障しています。条件には「公共の福祉に反しない限り」とあり、副業の場合では「企業の利益に反しない限り」と読むことができます。
2.労働基準法第34条3項 「休憩時間の自由」
「使用者は、第1項(※)の休憩時間を自由に利用させなければならない。」
※第1項には休憩時間数について定めています。
「使用者」は「会社」と読み替えることができます。この条文では、勤務時間外である休憩時間については、社員が自由に使えることを保障しています。
このように直接的に副業を規定した法律はないものの、副業が無条件に禁止されるべきものではないことを確認することができます。参考までに実際の副業(兼業)に関する判例を紹介します。
判例を確認〜国際タクシー事件〜
1.概要
・原告はタクシー会社に勤務
・原告は父親が経営する新聞販売店で新聞配達、集金等の仕事にも従事
・上記がタクシー会社の就業規則の「兼職禁止規定」に該当するとして、タクシー会社より懲戒解雇される
2.判決
・「兼職禁止規定」に違反していないとして解雇取り消し
・タクシー会社における所定始業時刻より前の約2時間の副業
・月収は6万円と比較的低額
・上記はタクシー会社の労務の提供に格別支障を生ずるものではない
よって、兼職禁止規定に違反するものと認められない。
出典:労働判例の部屋 国際タクシー事件(労働契約に伴う権利義務・兼業禁止義務)
副業禁止の違法性について
憲法や労働基準法の条文、上記の判例のとおり、社員の職業選択の自由や休憩時間(=就業時間以外)の自由を制限できるのは、「公共の福祉に反している場合」ということになります。
厚生労働省では、副業禁止をする場合は以下のいずれかの条件に合致する場合としています。
・労務提供上の支障となる場合
・企業秘密が漏洩する場合
・企業の名誉、信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
・競業により企業の利益を害する場合
労務提供条の支障(健康上、本業に影響を及ぼす等)を副業禁止の理由とする際に、会社としてはその証明が容易でないことを考慮することも重要です。
出典:厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
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会社が社員の本業以外の業務を禁止にする理由
法律や判例で、副業は条件付きで禁止されるべきであることを確認しましたが、多くの企業はなぜ副業を禁止するのでしょうか。主な理由をご紹介します。
会社が副業を禁止する理由(n=1617/複数回答可)
出典:株式会社リクルートキャリア 兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)
この調査では、以下の問題が上位を占める結果となりました。
1位 社員の長時間労働、過重労働の助長
2位 労働時間の管理把握が困難
3位 情報漏洩リスク
2位の「労働時間の管理把握が困難」について補足
社員が副業でも「雇用」されている場合は、労働時間に関する規定を本業と副業で通算する必要があります。すなわち、副業分の労働時間も考慮しなければならないということで、事務処理の煩雑さから副業を認めない理由の上位にランクインしています。
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禁止される副業の内容と違反した場合の罰則リスク
株式投資、FX、仮想通貨、不動産投資などは「資産運用」と呼ばれ、一般的に副業とは区別されます。よって、一般的にこれらの資産運用が会社の禁止する副業に該当することはありません。
※ただし、金融機関勤務員の株式投資の制限などの例は除く
禁止される副業は、各会社の就業規則によるとしか言えませんが、基本的な考え方としては、以下に分類されます。
量的に本業に影響がある仕事
副業の拘束時間が長く、本業での業務に支障が出る
質的に本業に影響がある仕事
本業と競合関係にある、本業の秘密を漏洩する、本業の名誉を毀損する
副業(兼業)をおこなう際、社員はこれらに注意する必要があります。
一方で、就業規則等で禁止する副業をした場合、会社ではどのような懲罰を準備しているのでしょうか。一般的には4つのレベルの懲戒処分があります。
懲罰 |
内容 |
けん責 |
始末書を提出させて将来を戒める。 |
減給 |
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。 |
出勤停止 |
始末書を提出させるほか、10~15日を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。 |
懲戒解雇 |
予告期間を設けることなく即時に解雇する。 この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。 |
出典:厚生労働省 モデル就業規則
上記はあくまでモデルであり、詳細は会社の規定により異なります。
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公務員の副業は違法?最新の事例をご紹介
結論として、公務員であっても上長の許可があれば基本的に副業は可能です。公務員の副業に関する法律等については関連記事にてご確認ください。
国家公務員に比べて地方公務員では副業が推進されており、2018年度では約4万件が認められています。積極的に副業を推進している地方公共団体も多く、その1つである兵庫県神戸市の例を紹介します。
地域貢献応援制度(神戸市)
制度導入の経緯
・市長発信にて職員へ呼びかけ
・2017年4月より、「営利企業への従事等の許可」の運用形態の1つとして導入
・背景には地域団体やNPO等において、高齢化等に伴い担い手不足が進んでいることがある
・市の職員が、知識・経験等を生かして市民の立場で地域における課題解決に積極的に取り組むことの後押しが目的
許可要件
1.対象職員
・一般職の職員
・活動開始予定日において在職6ヶ月以上
2.対象活動
・報酬を得て行う、公益性の高い継続的な地域貢献活動
・社会的課題の解決を目的とし、神戸市内外問わず地域の発展・活性化に寄与する活動
3.審査要件
・勤務成績が良好
・勤務時間外、週休日及び休日の活動
・許容できる範囲の報酬
・過去5年以内に活動する団体との契約、補助、指導、処分を行う職に就いていない
・営利を主目的とした活動ではない
出典:総務省 地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について
このように公務員であっても副業推進の動きが生まれてきています。
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会社が社員の副業に気付く理由
副業していることを会社に知られたくない方は多くいらっしゃると思います。
会社は社員の副業をどのように把握し、副業であることを判断するのでしょうか。その詳細を説明します。
副業を会社が把握するルート
把握ルート |
理由 |
住民税 |
会社で支払う給与相当に比べて住民税が高い or 低い |
配偶者控除等申告書 |
申告書に副業による収入記載欄があるため |
住民税について
住民税には以下の2つの徴収方法があります。
徴収方法名 |
内容 |
特別徴収 |
給与からの天引きによって、会社が社員の代わりに納める方法 |
普通徴収 |
給与取得者ではない方が自分で役所に納める方法 |
住民税の税額は収入(所得)に比例しますので、会社で支払う給与に比して、住民税が高額(または低額)であれば、会社はその社員の副業を疑います。
配偶者控除等申告書について
こちらは、配偶者(特別)控除を申請する書類です。
配偶者(特別)控除とは、配偶者の給与収入が201万6千円以下であれば、税金の優遇を受けられるというものです。
※配偶者(特別)控除の詳細は国税庁の資料をご確認ください。
この申告書でなぜ副業が知られてしまうのでしょうか。申告書を確認してみましょう。
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書(略)
このように、同申告書には「給与所得」と「給与所得以外の所得」を記載する欄があります。
副業において雇用される形態(パート、アルバイトも含む)の場合は、給与所得の欄に、本業分と副業分を合算した金額を記入する必要があります。
副業が個人事業主等の場合は、給与所得以外の所得の合計額を記入する必要があります。
このように、いずれにもしても会社に副業を疑われる可能性が生まれます。
副業を会社に認知されない方法
副業のケースに応じて認知されない方法がある場合とそうでない場合がありますが、以下にその詳細をご紹介します。
1.住民税における対応
副業が「雇用されていない、個人事業主等」の場合
副業分の住民税を「普通徴収」に切り替えることで、会社に副業を把握されるリスクを避けることができます。確定申告の書類にて「普通徴収」を選択する必要があります。
副業が「雇用される形態の給与所得」の場合
住民税を「普通徴収」に切り替えることは原則できないため、会社に副業を知られる可能性が高くなります。
2.配偶者(特別)控除申請における対応
会社に提出する配偶者(特別)控除申告書については、会社(本業)分の給料についてのみ記載し、副業分については確定申告することで、会社に副業を把握されるリスクを避けることが可能です。
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経営者と副業従事者に聞いた!会社と社員の副業に関するホンネ
社員としては、なかなか副業について会社に聞けないことも多い反面、会社としても社員のプライベートに関わる副業について聞きづらい面もあるようです。
こちらでは、従業員500名ほどの会社の経営者とインフラ会社に勤める副業従事者にお話を伺いました。
【お話を伺った方】
Aさん:IT会社の経営者
Bさん:インフラ会社の会社員
Q.副業は認められていますか?
(Aさん)就業規則には定めていませんが、禁止することはありません。
(Bさん)就業規則を見たことがないのでわからないのですが、少なくともおすすめされていることはないですね。
Q.Aさんに伺います。副業を社員がすることについてどう思いますか?
(Aさん)基本的なスタンスは「ご自由にどうぞ」です。オフの時間は個の自由時間なので。個人的には、「副業を禁止する」ことは経営リスクだとも思います。
Q.社員の副業によって、本業の効率が落ちたり、情報が漏洩したりという心配は?
(Aさん)本業の効率が落ちて、その結果、会社が求めるアウトプットを出せなかった場合、その社員の評価が下がるだけです。社員のアウトプットが落ちれば会社は報酬を下げるので、特にその点をリスクとは考えていません。情報漏洩は副業に限らず常に会社が抱えているリスクであり、副業固有のリスクという意識はあまりありませんね。
社員の能力に応じた適正な報酬を提供していれば、転職で条件が上がるというケースはあまり発生しないと想定していますので、そうすると社員は転職ではなく、副業をやめるか、本業と副業をこなせる自身の能力向上に努めます。結果的に副業によって社員が自身のキャパシティーを大きくする方にベクトルを向けてくれれば、会社としてはメリットになると考えます。
Q .Bさんに伺います。副業する上で最も心配だったことは?
(Bさん)会社に知られないかってことですね。明確に(副業が)禁止をされているわけではないと思うのですが、やはり気になりました。その理由から、税金のことは詳しく調べました。会社に副業に関する情報が渡ってしまうのは住民税と聞いていたので。
Q 副業を始められて約1年と伺いましたが、メリットやデメリットはありますか?
(Bさん)企業にある程度勤めていると、自分の労働と対価としての報酬の相関を意識できなくなる自覚がありました。先程のAさんの話に関していうと、社員の成果に応じて給料を上げたり下げたりできない企業もあるので、頑張ってもそうでなくても給料は変わらない現実がそうさせるのだと思います。
けれど副業を始めたことで、自分の市場価値をダイレクトに意識できる面は大きいと思います。いい仕事をしていれば給料は上がりますし、収入も増える。あと税金に詳しくなりました(笑)。これらはメリットですね。
デメリットとしては、家族との時間が減ったことです。メリハリがついたと見える反面、やっぱり仕事をする時間は増えますので。
(Aさん)そうですね。大企業では報酬を頻繁に変えることはまずできないと思います。副業解禁によって、社員は自分の市場価値を大きなリスク(転職など)を負うことなく確認することができるようになった。そう考えると、社員に対して常に適正な評価をすることが大事になりますよね。そうでないと転職されてしまいますから。評価の適正化や制度の充実は今後ますます重要になると思います。
いかがでしたでしょうか。経営者と社員の目線からそれぞれ副業についてお話をしていただきました。社員の適正な評価がますます重要になることも大きなキーワードであることがわかります。
まとめ
この記事では、禁止される副業の内容や会社が副業に気付く理由、副業禁止の違法性を判例も踏まえて確認しました。また、経営者や社員に聞いた「副業についてのホンネ」についてもご紹介しました。
まとめは以下のとおりです。
・株やFX、不動産などの資産運用は原則禁止されない
・会社が無条件で副業を禁止することは法律違反になる可能性がある
・公務員の副業は条件付きで認められている
・副業の普及に伴う転職リスクを防ぐため、企業には評価制度の充実が求められる
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