人手不足の業界や企業の関係者は必見!5分でわかる人材が不足する原因とその対策
この記事のまとめ
・人手不足は人口減少の外的要因だけでは説明がつかず、業界や企業内部にも要因がある
・採用や配属の現場に改革を委ねるだけではなく、全社的な対策が必要である
・採用力の強化、人材の定着は福利厚生の充実や評価制度の見直しが効果的
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人手不足の組織で起きていること
人手不足が深刻な組織では、程度に差はあれど以下のような状況を抱えているのではないでしょうか。
・「人事の採用レベルが低い」と人事の採用に目を向ける各部署
・「配属先でマネジメントができていない」と離職に問題意識を持つ人事
・「人口減少だからしょうがいない」と外部環境に注目する経営層
このような状態が問題を長期化させて、負のサイクルから抜け出すことを困難にします。
この状態に陥ってしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。次に人手不足を生む様々な原因やその対策について詳しくご説明していきます。
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企業の人手不足の原因 〜人口減と労働層の変化、有効求人倍率の上昇〜
人口の推移
人口の減少は深刻な社会問題です。
2050年には1億人を割ることがほぼ確実視されており、低位推計(想定の下限)では2100年の人口が明治維新時に近い3,770万人となる予想です。
(グラフ1)2100年までの推計人口
出典:国土交通省 「国土の長期展望」中間とりまとめ 概要
少子化・人口減少は皆さんご存知のところかと思いますが、グラフのような角度で減少に転じる可能性が高いことを考えると、改めてこの問題の深刻さを考えずにはいられません。
やはり人手不足の全ての原因は人口減少なのでしょうか。
労働力人口の推移
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「2030年までの労働人口・労働投入量の予測」の調査において、1995年から2030年までの業界全体の労働力人口の実績と見通しでは、先ほどの人口減少に反して、2012年頃から労働力人口が増加に転じています。
人口減少が加速度的に進む中で、なぜこのような逆転現象が起きているのでしょうか。
その答えは「労働参加率」にあります。
15歳から64歳を対象とした2030年までの労働参加率の見通しは、男女ともに上昇傾向にあり、特に、男性はもともとの労働参加率の高さから緩やかではあるもののさらに上昇します。一方で女性は、働き方改革のダイバーシティ推進によってめざましい社会進出が影響し、労働力参加率の上昇が堅調です。
65歳以上を対象にした労働参加率の見通しについては、男女ともに2004年までは低下し続けていましたが、その後2012年までは横ばいとなったのち、現在や2030年の予想においても上昇を続けます。
このように人口減少の裏で、労働参加率は上昇(特に全年齢層の女性と65歳以上の男性の労働者が増加)していることがわかります。
労働参加率増加に寄与しているのは、女性と男性高齢者なので、これまでと労働者の構成(年齢や性別)が異なります。よって、その変化に合わせた採用戦略や職場定着策が必要になりますが、この点は後ほど詳しくご紹介します。
有効求人倍率の推移
人手不足の背景には、有効求人倍率の上昇も関係しています。
有効求人倍率とは、求職者1名あたりに募集されている仕事の数のことです。
例えば、「有効求人倍率2倍」とは、1名に対して2名分の仕事が募集されているということです。
一方で「有効求人倍率0.5倍」とは、1名に対して0.5名分の仕事が募集されていることなので、「求職者2名に対して1名分の募集しかない」ことを意味し、理論上は1名が失業状態になります。
以上を踏まえた上で、以下のグラフをご覧ください。
(グラフ2)完全失業率と有効求人倍率の推移
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 完全失業率、有効求人倍率
2010年頃を節目に有効求人倍率は上昇し、完全失業率も低下しています。
この状態は好ましいことではありますが、一方で以下のような問題もはらんでいます。
この流れが続くと、「人気のある企業」以外の人材不足が加速します。その結果、人材が確保できず倒産してしまう企業すら出てきてしまいます。
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人材の不足により中小企業が倒産?人手不足が目立つ業界とその理由
リクルートワークス研究所による第35回ワークス大卒求人倍率調査内の従業員規模別調査によると、従業員数が5,000名以上の大企業の有効求人倍率は0.37倍にすぎず、その一方で従業員が300名未満の中小企業では9.91倍にもなり、大手で知名度がある人気企業以外の人材不足が浮き彫りになっています。
中小企業は広告宣伝費の割り当てが少ないことが影響して消費者に対する認知度が低いために、既に名前が知られている大企業と比較して採用活動に苦慮している現状がこの数字からも確認できます。
人材の不足による倒産
以下のグラフには人手不足によって倒産した企業数を年代別にグラフにまとめたものです。2019年に倒産した185社のうち、101社が負債総額1億円以下、72社が5億円以下と、中小企業の倒産が相次いでいることがわかります。
(グラフ3)人手不足倒産の件数
出典:帝国データバンク 「人手不足倒産」の動向調査(2019年1~12月)
人手不足が原因で倒産してしまった企業の数は、2013年から5倍以上に増加しており、採用に苦慮している上に、従業員の高齢化による退職等に伴い、ますます中小企業は厳しい環境に置かれています。
人手不足が目立つ業界
中小企業の人手不足についてご紹介しましたが、どのような業種や職種で人手不足に苦しんでいるのでしょうか。
有効求人倍率ランキング(2018年度)
順位 |
職種 |
求人倍率 |
1位 |
建設躯体工事の職業 |
11.18倍 |
2位 |
保安の職業 |
7.59倍 |
3位 |
建築・土木・測量技術者 |
6.18倍 |
4位 |
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師 |
5.89倍 |
5位 |
建設の職業 |
4.98倍 |
出典:政府統計の総合窓口 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)
有効求人倍率を確認すると建設関係の職種が並んでいることがわかります。
労働人口増加の内訳は「男性の高齢者」と「女性」の比率が上がったためであることを考えると、体力仕事かつ男性の業界・職業であるイメージの強い建設業が採用に苦戦する背景が見えてきます。
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人手不足の対策は?
人手不足の対策はマクロの視点で以下の5つが考えられます。
1.女性の労働参加と定着
2.シニアの労働参加と定着
3.業務の生産性を上げる
4.外国人の労働参加と定着
5.業務の改廃、効率化(AIの導入・活用等も含む)
4.と5.については、国策レベルでの改革や技術革新が必要になります。
ただ既に国内の外国人労働者の数は約150万人に上り、年々増加しています。
外国人労働者の就職先は、製造業・小売業(コンビニなど)・宿泊/飲食業が大半を占めていますが、今後は他の業界でも外国人雇用が増加していく見込みです。
これまでの製造拠点や販売市場のグローバル化とは異なり、日本国内で多くの外国人が働く「職場のグローバル化」を前に、英語運用能力の向上を社員に促している企業も多数あります。
例えば、IT業界ではエンジニア不足が深刻で、英語しか話せない外国人エンジニアを採用するケースが多数出てきており、あるIT業界に務める日本人社員は「英語の必要性が現実的になり勉強している」と語っていました。
一方で、上記1.〜3.については、企業内の努力により成果を上げることが可能です。
以下のような点について、確認されることをおすすめします。
チェックポイント
・女性やシニア層を中心に求職者にとって魅力的な組織か
・社員が働き続けたい組織であり、社内制度も整っているか
・社員の生産性を上げるための施策を実施できているか
これらのポイントをおさえつつ、以下で詳しく対策をご紹介します。
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継続的に就職希望者や社員から選ばれる企業であるために
女性やシニア層を中心に求職者にとって魅力的な組織
男性のイメージが強い業界や職種については、女性でも活躍できるように業務内容の見直しや組織制度の改善を行うことがおすすめです。
バスやタクシーの運転手、宅配や引越し業界に女性労働者が増加したのは、このパラダイムシフトが一定の成果を出した事例です。
加えて、競争が激化している採用活動で優位性を発揮し、社員の定着を図るために必要なことは、就職希望者のニーズをとらえることです。
以下のグラフをご覧ください。
(グラフ4)女性新卒者の入社の決め手
出典:株式会社リクルートキャリア 就職未来研究所 就職プロセス調査(2019年卒)
1位「希望する地域での勤務」はテレワークを導入すればある程度の解消ができますが、2位「自らの成長」や4位「会社・団体で働く人が自分に合っている」など、属人的で対応が容易ではない項目もあります。
以下においては一律の対策で多くの新卒者のニーズ充足が期待できます。
3位 福利厚生や手当ての充実(43.6ポイント)
7位 教育環境・研修制度の充実(19.7ポイント)
8位 働き方に関する制度の充実(19.4ポイント)
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社員が働き続けたい組織
上記の同調査(男性版)において「福利厚生や手当て」はなんと2位にランクインしています。
そして、厚生労働省の働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書(概要)を確認しても、社員が働きやすいと感じる条件が求職者の求める条件と重なっていることがわかります。いずれも以下の3点が重要視されています。
1.福利厚生制度
2.研修制度
3.働き方(フレックス 、育児休暇、有給休暇など)に関する制度
これらを充実させることは、就職対策だけでなく「社員の定着」にも大きな効果を示します。
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社員の生産性を上げるための施策
例えば役職定年後のシニア層に対しては、一律で賃金を下げるのではなく、能力や実績に応じた評価・報酬の設定が生産性を上げるために効果的です。
定年退職後の社員には「これまでの会社への尽力に対する慰労」の向きが強く、一定の賃金を与えながら特に成果を求めずに働き続けてもらう風習もありますが、役割や報酬について一律に設定するのではなく、個々の従業員ごとにそれらを精査することで、シニア世代の労働者の生産性が上がります。
ただ、社内の給与規定や人事条件の変更は非常にハードルが高いと思いますので、インセンティブ制度を導入することも効果的です。
成果を挙げた従業員にインセンティブを与えることで、モチベーションの維持に貢献します。
対象は正社員だけではなく、契約社員、パート、アルバイトなど非正社員も含み、ただ相対的に成果をあげた従業員だけでなく、以下のように様々なインセンティブ条件を設けることで多様な従業員のモチベーション維持に貢献します。
・成果は出なかったが努力を続けた従業員
・個人的にパフォーマンスがあがった従業員
・ユニークな発想で部署内に変化をもたらした従業員
ただし、「福利厚生制度」「研修制度」「働き方に関する制度」「インセンティブ制度」の導入を自社で行うには、莫大な工数とコストがかかります。よって、アウトソーシングしている企業がほとんどです。
他社のリソースを使うことで時間も節約できる上に、費用も安価に抑えることができますので、まずはご相談されることをおすすめします。
具体的なアウトソーシングについておすすめの記事
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、人手不足を解消するため、従業員の離職防止と採用内定者のエンゲージメントを高める手段としての福利厚生について詳しくご紹介しました。
ポイントは以下の3つです。
・人手不足は人口減少の外的要因だけでは説明がつかず、業界や企業内部にも要因がある
・採用や配属の現場に改革を委ねるだけではなく、全社的な対策が必要である
・採用力の強化、人材の定着は福利厚生の充実や評価制度の見直しが効果的
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