時短勤務とは?導入の経緯や実態から短時間正社員との違いまで解説
働き方改革の一環で急速に普及が進んでいる時短勤務ですが、実際に自社に導入しようとした場合、その仕組みや対象者の条件がわかりにくいこともあるのではないかと思います。
そこで今回は、時短勤務の定義やメリットと、この制度と関係の深い雇用形態として注目されている短時間正社員との違いなどについて、詳しく紹介していきます。
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時短勤務とは?定義と推進の経緯、メリットなどを紹介
まず、時短勤務の定義についてですが、実はこの言葉は法律用語ではありません。厚生労働省の資料や法律では、「短時間勤務」や「所定労働時間の短縮」といった言葉を用いて、時短勤務の解説や紹介がおこなわれています。
一方、私たちが普段この言葉を使うときには、単に「短時間の勤務で早く帰宅できること」を意味している場合もあります。ここでは解釈を統一するために、企業が導入できる制度や法律的な観点から、「時短勤務」の定義づけなどをしていきたいと思います。
時短勤務の法的な定義
法的な意味での時短勤務とは、介護や子育てをする従業員の所定労働時間を、育児・介護休業法に則って短くできる勤務体系のことです。なお、具体的な時間などは、当該従業員の条件や企業側が講じられる措置によっても変わってきます。
時短勤務制度推進の背景
時短勤務に関わる制度改正や、企業における推進がおこなわれるようになった背景には、国や会社、従業員の抱える以下のような社会的問題が大きく影響しています。
・少子高齢化による労働者不足
・介護の必要性
・一億総活躍社会による女性の社会進出
・働き方改革 など
時短勤務のメリット
企業が時短勤務を導入すると、以下のようなメリットが得られます。
人材確保
時短勤務の導入は、社内で多様な働き方を認める取り組みでもあります。例えば、インターネット上の公開求人に「1日6時間の時短勤務も可能」といった記載をすれば、小さな子どもの育児でフルタイム勤務のできない人でも応募しやすくなります。
離職の防止
時短勤務には、介護や子育てによる事情で長時間勤務ができなくなった従業員にも、無理のない範囲内で仕事を続けてもらえるという利点があります。この方法で離職率が低下すると、欠員を補うためにおこなう採用活動や、人材教育にかかるコストも削減しやすくなります。
扱いの明瞭化によるトラブルの回避
明確な社内ルールのない環境で、短時間勤務を認めていると、許可範囲の曖昧さや不公平感により、従業員の中に不満が生じやすくなります。そこで、時短勤務の制度を導入し、雇用契約書や就業規則の中で明確化すれば、状況や管理者などによって起こりやすい曖昧さが解消でき、従業員に納得感を与えやすいでしょう。
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時短勤務の実態~認められる従業員の条件・内容を紹介
次に育児・介護休業法における時短勤務の条件を見てみましょう。
時短勤務が認められる従業員の条件
時短勤務が認められる従業員の条件は、この制度を利用する目的となる事情や、子育ての対象者によって大きく変わってきます。
就学前の子どもがいる従業員
小学校入学前の子どもがいる従業員の場合、条件によって労働時間における制限の内容が異なります。
・3歳未満の子どもを養育する従業員
・3歳以上小学校未就学児童を養育する従業員
企業では、3歳未満の子どもを養育する人に対して育児短時間勤務の導入が必要で、1日の所定労働時間を原則として6時間にしなければなりません。事業の性質などによってこの措置が難しい場合は、以下のような代替案を講じる必要があります。
・育児休業に準ずる措置
・フレックスタイム制の措置
・出退勤時間の繰上げや繰下げ
・事業所内における保育施設の設置 など
ちなみにこの短時間勤務制度の適用期間は、子どもが満3歳の誕生日を迎えるまでとなります。子どもが3歳以上の未就学児童になった場合は、先述の4項目が事業主の努力義務に変わります。
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要介護状態の家族がいる従業員
法律で定められた要介護状態の家族を介護する従業員に対しては、以下のような措置が事業主に求められます。
・所定労働時間の短縮
・フレックスタイム制の措置
・出退勤時間の繰上げや繰下げ
・介護サービス費用の援助 など
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時短勤務を認めなくてよい場合
逆に以下の条件に該当する従業員は、労使協定の締結などによって、時短勤務制度の対象から外れることがあります。
・日雇いの従業員
・入社1年未満の従業員
・1週間あたりの所定労働時間が2日以下の従業員
・業務の性質などを考慮して、時短勤務の適用が困難な仕事をする従業員
この他にも、配偶者が専業主婦や専業主夫、もしくは育児休業の取得中だった場合は、労使協定を結んでいても時短勤務制度の対象外になることがあります。
時短勤務と残業時間
子どもの養育もしくは介護で時短勤務制度の対象となった場合、残業や深夜の勤務といった時間外労働にも制限がかかります。例えば、3歳未満の子どもの養育もしくは介護をする従業員であれば、本人からの免除申出によって事業主は、普通残業や22:00~5:00までの深夜帯勤務をさせることができなくなります。
一方、未就学児童の養育をする従業員の場合は、1ヶ月あたり24時間、1年で150時間以内の時間外労働であれば、事業主は条件付きで求められるようになっています。
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時短勤務と似て非なる短時間正社員の制度と活用について
厚生労働省では、就業意識の多様化に対応する取り組みとして、短時間正社員制度というものを提唱しています。
恒常的に勤務時間を短縮する短時間正社員
短時間正社員とは、以下の両方の条件を満たしながら働く従業員のことです。
・期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
・時間あたりの基本給および賞与、退職金などの算定方法などが、同種のフルタイム正社員と同等である
この働き方の比較対象となるフルタイム正社員とは、1週間の所定労働時間が40時間ほど(1日8時間・週5日勤務など)で、無期労働契約を締結している正社員のことを意味します。
短時間正社員における大きな魅力は、パートタイマーのような有期契約や、子育てや介護している従業員向けの介護・育児休業法とは異なり、短い時間で正社員と同様に期限の定めなく働き続けられることです。
賃金(時給・月給)の待遇はフルタイム正社員と同一
短時間正社員における賃金などの待遇は、フルタイム正社員と同一です。ただしそれは、算定方法や時間賃率が同じという意味となりますので、実際に働く時間が少なくなれば、フルタイム正社員と比べて月給が下がる可能性は十分に考えられると思います。
この部分の判断や考え方は企業によって異なりますので、短時間正社員として働くときには、必ず具体的な賃金体系や他の雇用形態との違いなどを確認するようにしてください。
育児・介護以外の幅広いニーズに対応
育児や介護に限らず、さまざまな従業員のニーズに対応できるところも、この制度の大きな魅力です。少子高齢化社会へと進む近年の日本では、定年退職をしたシニアの新しい働き方としても、短時間正社員が注目されています。
この仕組みを上手に活用すれば、大学の夜間部に通いながら仕事と勉強の両立をするといった形で、従業員のワーク・ライフ・バランスを充実させることも可能となるでしょう。
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時短勤務でさまざまなライフステージで働き続けられる企業へ
育児や介護などのライフイベントは誰しも起こりうるものです。そうした場合には育児・介護休業法に則ることで時短勤務に切り替え、仕事との両立を図ることが可能です。また、定年退職後の就労や勉強との両立が可能な短時間正社員制度を活用することも、従業員の継続雇用につながります。
JTBベネフィットの福利厚生サービス「えらべる倶楽部」では、育児や介護における幅広い特典をご用意しています。また、それ以外のジャンルでも多彩なサービスがありますので、従業員満足度向上に向けて新たな施策を模索中の方は、ぜひえらべる倶楽部をご検討ください。
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