ワーケーションという新しい働き方!仕事と休暇の区別はもう古い?
この記事のまとめ
・ワーケーションは「休暇を楽しみつつ仕事をすること」であり、新しい働き方の1つである
・アメリカでは、有給休暇消化後の手段としてワーケーションが使われる例もある
・ワーケーションで最も期待されるメリットは有給休暇取得率の向上
・ワーケーションの普及は新型コロナウイルスの感染拡大防止策とセットで対応が必要
・ワーケーションを取り入れる際は、就業規則への規定など、ルール整備も忘れずに
目次[非表示]
- 1.ワーケーションとは?仕事だけど休暇?
- 1.1.ワーケーションとは
- 1.2.ワーケーションの例
- 1.3.ワーケーションと類似した言葉
- 2.新しい働き方のワーケーション!企業や社員のメリット
- 3.ワーケーションのデメリットとその対応策
- 4.ワーケーションを取り入れる企業が準備すべきこと
- 4.1.対象者、対象時期を明確にする
- 4.2.管理や監督に関するルールを明確化する
- 4.3.就業規則の変更
- 5.まとめ
ワーケーションとは?仕事だけど休暇?
ワーケーションとは
「Work(ワーク)」と「Vacation(バケーション)」の造語であり、アメリカでは10年以上前から使われています。「Workcation」や「Workation」と表現され、一般的に休暇(バケーション)を兼ねてリゾート地などの非日常の旅先で仕事(ワーク)をすることを意味します。しかし、有給休暇の日に仕事をする意味ではありません。
勤務場所を問わない働き方がワーケーションの意味するところであり、これは有給休暇の取得が日本と同じく少ないアメリカで、有給休暇と併せた活用が想定された制度です。
ワーケーションの例
有給を使って海外旅行をする際に、どうしても仕事をしなければならない日があったので3日間の連泊ののち帰国を考えていましたが、当該日をワーケーションとして旅行先で仕事をすることで、帰国の必要がなくなり、トータル1週間の海外旅行が可能になるケースも生まれます(休暇6日+ワーケーション1日)。
また、著者の知人の話で統計データはありませんが、アメリカや日本の一部の企業では、例えば両親の体調が悪くなった際に、両親の実家に帰郷したいが有給休暇を全て消化していた場合などに、ワーケーションを使用する例もあるそうです。
特にアメリカでは、ワーケーションを「気分転換のために場所を変えて仕事する制度」ととらえている人も多く、休暇と合わせることなく取得するケースも多々あるとのことでした。
ワーケーションと類似した言葉
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ワーケーションが注目を集めているかたわらで、ワーケーションと似たさまざまな言葉を聞くようになりました。その代表例をいくつかご紹介します。
ワーケーションと類似した言葉
単語 |
語源 |
意味 |
Homecation(ホームケーション) |
Home + Vacation |
休暇を自宅で過ごすこと |
Stay-cation(ステイケーション) |
Stay + Vacation |
|
Bleisure(ブレジャー) |
Business + Leisure |
出張と余暇を組み合せること |
HomecationやStay-cationもそれぞれバケーションを組み合わせた言葉ですが、自宅で休暇を過ごすことを意味します。
Bleisureは、出張で例えば地方に行った際に、自費で延泊をして旅行を楽しむことを指します。このように出張と余暇を組み合わせることを推奨する動きも生まれています。
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新しい働き方のワーケーション!企業や社員のメリット
企業におけるワーケーションのメリット
まずは、企業におけるワーケーションの導入メリットを確認しましょう。
ワーケーション導入による企業のメリット
メリット |
概要 |
有給休暇の取得率向上 |
休暇先で仕事ができるため有給休暇取得率の向上が期待できる |
企業のブランド力向上 |
働き方の自由度が増すことで、ブランド力の向上が期待できる |
健康経営、業務効率向上 |
休暇取得の増加により社員の健康や業務効率化に寄与する |
特に、有給休暇については原則年5日以上の取得が義務付けられていますので、企業にとっては有給休暇の取得促進は非常に重要なアジェンダとなります。
また、休暇取得を促進させることで社員の業務効率が向上し、生産性を高めることができます。
企業が働き方改革の推進力となる新たな労働スタイルを導入することで、社員の選択肢が増えることがポイントです。
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社員におけるワーケーションのメリット
続いて、ワーケーション導入による社員のメリットをご紹介します。
ワーケーション導入による社員のメリット
メリット |
概要 |
有給休暇の取得率向上 |
休暇先で仕事ができるため有給休暇取得率の向上が期待できる |
働き方の選択肢増加 |
業務か休暇かの2択ではなく、新しい選択肢が増える |
ワークライフバランスの充実 |
働き方の自由度が増すことで、ワークライフバランスが充実する |
社員にとっては働き方の選択肢が増えることなので、基本的にはメリットのみととらえることができます。
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ワーケーションのメリットを享受する観光地や関連企業の動向と事例
ワーケーションの普及により観光地や関連企業もメリットを享受できます。しかし、新型コロナウイルスウイルスの影響でインバウンド需要は激減しており、JTB総合研究所が取りまとめた日本政府観光局(JNTO)の発表統計によると、2019年度に約3,200万人だった訪日外国人は、2020年度の上半期で約395万人にまで落ち込んでおり、新型コロナウイルスの影響がいかに深刻であるかを把握することができます。
政府もGo Toトラベルなどの政策を打ち出して観光の活性化を図っていますが、新型コロナウイルスの影響で旅行客は伸び悩んでおり、新しい働き方であるワーケーションによる期待が高まっています。
福利厚生の一環としてすでにワーケーションを導入している企業もあります。場所を問わない柔軟な働き方が従業員の定着に役立ち、旅先にてリフレッシュすることで生産性向上と新たなアイデアやイノベーションの創出に効果があるとされています。
以下に事例をご紹介します。
1.環境省
環境省も前向きに取り組んでおり、例えば新宿御苑に仕事ができる基本設備を整えてワーケーションがイメージできる体験イベントを開催したり、Wi-Fiの導入支援をおこなうなどのバックアップ体制を整えています。
また、温泉施設や国立・国定公園のキャンプ場などでワーケーションをおこなう事業団体やツアー事業者に補助金の支給を採択しました。
2.和歌山県
和歌山県は地方自治体でのワーケーションの取り組みにおいてパイオニア的な存在で、ワーケーションプロジェクトである「Wakayama Workation Networks(ワカヤマ ワーケーション ネットワークス)」を立ち上げ、参画した企業や団体の取り組みを県が一元的に紹介しています。
特に温泉とリゾートで人気がある白浜町はワーケーションに最適とされ、モニターツアーを募集するなど関係人口の創出や地域経済の活性化を推進しています。
3.ホテル
ホテルでは、客室をテレワーク(リモートワーク)用にアレンジして貸し出すなどの動きが活発になっており、ワーケーションでの活用も期待されています。
4.中小企業
中小企業やベンチャーには、テレワーク(リモートワーク)を進める動きも強く、ワーケーションの受け入れを進める観光地や関連企業にとっては、追い風となる環境が整いつつあります。
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ワーケーションのデメリットとその対応策
ワーケーションは、社員にとっては選択肢が増えますが、企業にとってはワーケーションの導入によるデメリットもあります。企業におけるデメリットとその対策を中心に、以下で詳しくご紹介します。
企業側のデメリットとその対応策
ワーケーションのデメリットを企業側から確認しましょう。企業側のデメリットはテレワーク(リモートワーク)導入の際のデメリットと類似しています。
ワーケーション導入による企業のデメリット
デメリット |
概要 |
勤怠管理の煩雑性 |
オフィス外での仕事となるので、勤怠管理が困難となる |
人事評価の困難 |
ワーケーションの導入回数によるが、人事評価が困難になる |
導入コスト |
ソフトウェアやハードウェア、特にセキュリティコストが必要になる |
次に、対応しなければならない3つの課題とその対応策についてご説明します。
1.勤怠管理
以下の表は、テレワーク(リモートワーク)において企業が導入している勤怠管理の例です。どの程度、厳格に管理するかにもよりますが、基本的には始業、昼休み、終業の報告を受けて日々の勤務状況を把握し、業務課題や体調面も含めて日々社員に確認することをおすすめします。
離れて仕事をしているため、特にサービス残業を含めた長時間労働にならないように注意が必要です。チャットの場合、手軽に社員とコンタクトを取ることができるので、こまめに社員の状況を確認するようにしましょう。(労働管理は使用者の責務であり、一切管理しないことは好ましくありません)。
ワーケーションの勤務管理の方法例
方法 |
備考 |
PCのログ管理 |
確認負荷が非常に大きく、導入企業は稀である |
WEB会議システムによるカメラまたは音声での管理 |
音声のみであれば導入する企業もあるが、映像も含めると監視に近く、導入する企業は稀である |
PCのスクリーンショット撮影システムの導入 |
不定期に各社員のPC画面をスクリーンショットするソフトで、比較的導入している企業が多い |
始業、昼休み、終業のチャット報告 |
最も容易で導入している企業が多い |
2.人事評価
ワーケーションをどれほどの頻度で取り入れるかによりますが、人事評価を懸念する場合は、結果主義の評価制度を取り入れることをお勧めします。
ワーケーション導入に伴う評価制度の改定骨子
項目 |
内容 |
評価内容 |
「結果」と「プロセス」に関する評価の割合(評価制度)を見直し、労使で合意する ※結果重視の評価とする |
目標設定 |
上司は部下と共に、目標の設定を具体的かつ可能な範囲で数値化する |
評価プロセス |
プロセスは見えない分、部下に説明する機会を与える |
あいまいになりがちなプロセスの評価がカットされる分、結果(アウトプット)×費やした時間のみで評価がなされるので、結果を残した社員が高評価を得て、高い報酬を得る明瞭な評価制度の実現も可能になります。
3.導入コスト
ワーケーションの導入に際して、企業がすでに社員へノートPCを貸与している場合は、VPNなどのセキュリティコストや通信環境の整備がメインになりますが、通信環境はすでに整っていることが多く、セキュリティ対策もワーケーション導入のメリットと比較すれば、必ずしも大きなコストではありません。
普段の業務がデスクトップ型PCの場合は、ワーケーションを適用する社員にノートPCを貸与することが、最もリスクとコストを抑えられる方法となります。ソフトウェアによるセキュリティ対策はもちろんですが、セキュリティ全般に関する考え方を以下でご紹介します。
「ルール・人・技術」によるセキュリティ対策
重要項目 |
内容 |
ルール |
安全確保のための作業方法(仕事の仕方)をルール化します。また、有事の対処法もルール化し、不足の事態に適切な対処を可能とする環境を整えます。 |
人 |
社員に対してセキュリティ対策を理解させる機会を与え、場合によってはルールの遵守違反に伴うペナルティを設計・提示することも効果的です。 |
技術 |
種々の脅威に対して「認証」、「検知」、「制御」、「防御」を自動的に実施するものです。これは特に、専門部署や専門業者と設計することが重要です。 |
出典:総務省 テレワークセキュリティガイドライン
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社員側のデメリットとその対応策
社員にとってデメリットとなる可能性が低いワーケーションですが、以下の点に注意が必要です。
JTB総合研究所の調査では、「仕事と休暇は完全にわけたい」「休暇中に仕事を挟みたくない」という声も一定数あり、ワーケーションが導入され定着するまでは、ワーケーションの恩恵を受ける社員とそうでない社員の差が顕著に生まれそうです。
ワーケーション導入による社員のデメリット
デメリット |
概要 |
移動費・宿泊費の負担 |
休暇先での仕事ですが移動費や宿泊費は原則自費となります |
休暇と勤務の区別が不明瞭 |
休暇と勤務の線引きが曖昧になる可能性があり、注意が必要 |
情報漏洩のリスク |
休暇先で仕事をすることで、情報漏洩のリスクが高まります |
基本的にワーケーションは休暇先で仕事をすることですが、休暇の使い方や休暇の滞在先は企業に指示、指定される訳ではなく、社員の自由意思による選択のために、移動費や宿泊費は社員の負担とすることが一般的です。
また、テレワーク(リモートワーク)と同様にパソコンと通信環境があれば仕事ができてしまうために、公私の切り替えが難しいことを認識し、時間を区切ることで、だらだらと仕事をしないことを強く意識する必要があります。
情報漏洩については、ルールを順守し、休暇であっても節度ある行動を心がけるようにしましょう。
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ワーケーションやGo Toトラベルに関連した観光地や関連企業の要対応事項
ワーケーションやGo Toトラベルを政府が推進していることは既述しましたが、受け入れる各地域の自治体や企業においても、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ取り組みを充実させることで、より安全にワーケーションなどを普及させることができます。
例えば、移動手段として密になる観光バス・高速バスでは、車内の空気が5分で入れ替わる機能を活用するなどして対策を講じており、多くの利用者に安心感を与えています。
出典:三菱ふそうトラック・バス株式会社 三菱ふそう観光バスの新型コロナウィルス新生活様式への対応
ワーケーションスペースで利用者同士の距離を保つことや、換気に配慮するなど、さまざまな対策を積極的に講じることで、安全性のアピールとなり、それが利用者へのプロモーションにも繋がります。
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ワーケーションを取り入れる企業が準備すべきこと
ワーケーションを取り入れる際に最低限必要な企業の対応事項を以下にまとめました。
対象者、対象時期を明確にする
1.ワーケーションが利用可能な部署や職種の設定
部署や職種によってはワーケーションを利用できない場合もありますので、利用可能な部署や職種を設定しておくことで混乱を防ぐことができます。まずは、特定の部署で小さく導入し、効果や問題点を把握した上で、本格導入することをお勧めします。
2.ワーケーションの利用可能時期の設定
冒頭でご紹介した通り、アメリカのIT企業で働く方への取材で、有給休暇の不足を補う形でワーケーションを使用する例があることもわかりました。それも1つの方法として推奨すべき方向で検討を進めることも必要かもしれません。
一方で、有給休暇の取得推奨が目的である場合は、例えばGWや夏季休暇、冬季休暇など、長期休暇をまとめて取得することや、その休暇にさらに有給休暇を付加することを推奨して、その期間のどこかでワーケーションの利用を促進する方法や、長期休暇でなくても有給休暇と併せた取得を必須とすることも考えられます。
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管理や監督に関するルールを明確化する
始業・休憩・終了についてはチャットでの報告を必須とするなど、いくつかの管理・監督方法をご紹介しました。ワーケーションを含めたオフィスから離れた場所での業務は、長時間労働やサービス残業につながる可能性が高いことに注意し、社員の労働管理や監督におけるルールを明確にすることが必要です。
就業規則の変更
1.ワーケーションの取得単位(1日のみ、半日単位も可、時間単位も可など)
ワーケーションの取得単位を定める必要があります。例えば、旅行などの中日に1時間だけ会議に参加する必要がある場合などを想定すると、ワーケーションを時間単位で取得できるように制度設計することで、社員の利用促進に繋がることが想定されます。
2.ワーケーションの利用申請方法
ワーケーションの利用申請方法について、基本的には有給休暇の申請と同様で問題ありませんが、その申請方法を明記する必要があります。
3.移動費、宿泊費、通信費などの負担
ワーケーションを旅行と兼ねて申請する場合、移動費や宿泊費、通信費が自己負担となるのであれば、それを就業規則に定めておく必要があります。また、移動中の労災保険の適用についても定める必要があります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。ワーケーションの概要やメリット・デメリット、導入の際の企業の対応事項について詳しくご説明しました。この記事のポイントは以下の5点です。
この記事のまとめ
・ワーケーションは「休暇を楽しみつつ仕事をすること」であり、新しい働き方の1つである
・アメリカでは、有給休暇消化後の手段としてワーケーションが使われる例もある
・ワーケーションで最も期待されるメリットは有給休暇取得率の向上
・ワーケーションの普及は新型コロナウイルスの感染拡大防止策とセットで対応が必要
・ワーケーションを取り入れる際は、就業規則への規定など、ルール整備も忘れずに
10/1(木)にワーケーション関連のウェビナー(オンラインセミナー)を開催します!
終了しました。多数の方にご参加いただき、誠にありがとうございました!
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