早期退職優遇制度とは?トラブルを避けスムーズに実施する方法

​​​​​​​退職届を提出する従業員

少子高齢化の加速により定年が徐々に引き上げられている一方で、2019年、早期退職優遇制度を実施する企業は大幅に増加しました。その背景には、企業の長期的な経営戦略が潜んでいますが、企業だけでなく従業員にとっても割増退職金などメリットのある制度です。

また、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により経済は大きな打撃を受け、従業員の給与や賞与を減額するだけにとどまらず、早期退職優遇制度を実施する企業数は上半期だけで2019年1年間のそれを上回りました。これは日本だけではなく、世界的に同様の制度を実施する傾向がみられます。

早期退職優遇制度はいわゆるリストラとは完全に同じではありません。リストラは主に整理解雇を目的として、本人の意思ではなく企業から解雇予告をされた上で職を失うことを指しますが、早期退職優遇制度は福利厚生制度のひとつとして、人員整理を目的とした臨時で実施するパターンと、定年より早く退職することでその後のキャリアプランの幅を広げることを目的とした常時実施するパターンがあり、退職金を割り増しするなどの優遇措置を条件に従業員自らの意思で退職することに違いがあります。

今回は、早期退職優遇制度の現状から、制度の種類や実施手順、注意点まで紹介していきます。早期退職優遇制度の概要が知りたい、具体的な実施に向けて知識を学びたいという担当者は、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.早期退職優遇制度の現状
  2. 2.早期退職優遇制度は2種類ある
    1. 2.1.早期希望退職制度
    2. 2.2.選択定年制
  3. 3.早期希望退職制度の実施手順
    1. 3.1.条件提示
    2. 3.2.希望退職者の受付・面談
    3. 3.3.辞令発令
    4. 3.4.退職手続き
  4. 4.早期退職優遇制度実施の注意点
    1. 4.1.退職は会社の承諾を条件にする
    2. 4.2.応募条件を定める際は計画的性と具体的性を定める
    3. 4.3.守秘義務を徹底
    4. 4.4.条件などの周知徹底
  5. 5.早期退職優遇制度導入の際は、不要な不安をあおらないことも大切!

早期退職優遇制度の現状

東京商工リサーチが実施した「2019年(1-12月) 上場企業「早期・希望退職」実施状況」によると、2019年における早期・希望退職者募集企業は36社にのぼるという調査結果が出ています。これは人数にすると1万1,351人となり、過去5年間の中で最多人数を記録しています。

また、「2020年(1-6月) 上場企業「早期・希望退職」実施状況」では、すでに41社が早期・希望退職者募集を実施したという調査結果が出ており、2019年の同期間と比べると2.2倍増加しています。しかし、人数にすると7,192人で、人数としては前年を下回っていますが、実施する企業数が増えたということは、それだけ多くの企業で人員整理をおこなわなければならない状態であるということがわかります。

2014年以降は、それまでと比較し低い水準で推移しており、2018年には過去20年間で最少を記録しました。
しかし、2019年は2018年を大幅に上回り約3倍増を記録し、2020年はすでに2019年を上回っていることと、先行きがみえない現状のままでは、さらに実施する企業数が増えると予測されます。

近年の特徴としては、経営不振による人員整理だけでなく、今後を見据え先行的に実施する企業の増加です。
経営が立ち行かなくなった結果、早期退職優遇制度の実施を余儀なくされているというよりは、経営体力が残っているうちに、人員構造の見直しを図る目的で実施するケースが多くなっています。


あわせて読みたいおすすめの記事

  VUCAの時代とは?現代に求められていることについて VUCA(ブカ、ブーカ)とは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英単語の頭文字をとった略語です。元々は軍事用語ですが、現代ではビジネスシーンでもよく使われます。今回は、ビジネス環境で言われるVUCAの捉え方を見ていきます。また、VUCA時代の企業や個人が生き残るために求められることについて解説します。 株式会社JTBベネフィット


早期退職優遇制度は2種類ある

早期退職優遇制度には、次の2種類が用意されています。制度が目的とするものや、従業員の退職の扱いが異なるため確認していきましょう。

早期希望退職制度

早期希望退職制度とは、人員整理や経営の安定化などを目的としており、会社側の都合によって募集をおこなう制度を指します。

早期希望退職制度は、いつでも、何人でも可能というわけではなく、募集期間や人数制限を設けられます。企業によっては、設定した人数に満たなければ達するまで募集を繰り返すケースもありますが、まったく同じ優遇内容ではなく、初回以降、徐々に優遇レベルを下げている企業が多いです。

早期希望退職制度の利用者は、会社都合による退職と扱われるため、雇用保険において「特定受給資格者」となります。退職者が特定受給資格者になれば、待機期間なく長期で失業保険の受給が可能です。
そのため退職後は、失業保険受給中に納得のいく再就職や転職がおこなえたり、新たなスキルを身につける時間に充てたりすることができます。


あわせて読みたいおすすめの記事

  福利厚生のメリットとは?企業が力を入れるべき理由と、従業員に人気の福利厚生TOP3 今では様々な企業で導入されている福利厚生ですが、まだ導入していない企業にとってはどのようなメリットがあるのか、どのような効果を持つのかが不明な部分も多いと思います。福利厚生は今現在の企業においては導入することを避けては通れない道です。この記事では、企業が独自の福利厚生を導入する際のメリットについて解説します。 株式会社JTBベネフィット

選択定年制

選択定年制とは、会社の人事制度として設けられる制度で、会社の新陳代謝促進や従業員の新しい働き方を支援する目的があります。
選択定年制は就業規則に盛り込む必要があり、従業員は常時制度の利用が可能です。

対象者については、年齢や勤続年数によって制限されており、企業ごとにそれぞれ優遇措置が設けられています。
会社にとっては、ベテラン従業員が増えすぎた従業員構成を改善し若返りが図れるメリットがあり、従業員にとっては、新たなキャリアを構築するきっかけとなる制度です。

しかし、選択定年制の場合においては、自己都合による退職扱いとなるため、失業保険は受給期間が短く受給開始までも時間を要します。


あわせて読みたいおすすめの記事

  【新型コロナウイルス対応も網羅】非正規雇用者を会社・労働者の視点から解説!! 今知りたい「新型コロナウイルスの収入補償」と「同一労働同一賃金」も詳しくご紹介 非正規雇用者と正規雇用者(正社員)の働き方や賃金面などにおける違いを、会社と労働者の目線から分かりやすくご紹介します。また新型コロナウイルス助成金(COVID-19)の影響によって、解雇や自宅待機など様々な状況にある非正規雇用者の収入補償を各ケース別に細かく整理し、今月から施行される同一労働同一賃金についても詳しく解説します。 株式会社JTBベネフィット


早期希望退職制度の実施手順

従業員へ面談や重要事項の説明をする人事部長クラスの従業員

早期希望退職制度を実施する際には、以下のような手順で進めていきます。順番に要点を確認していきましょう。

条件提示

まずは、揉め事や事件にならないようにするためにも、早期希望退職制度の条件を明確に定める必要があります。募集人数、範囲、期間、条件などの詳細を決定しましょう。

この段階までには、幹部や役職者間でコンセンサスを定めておかなければなりません。
従業員からの批判や意見に対応していくためには、幹部や役職者全員が同じ方向性をもっていなければ、社内に混乱を招きます。

これらが固まった後、従業員へ周知します。方法としては、文書での掲示、回覧、社内報の発行、説明会の実施などが考えられます。

希望退職者の受付・面談

早期希望退職制度の実施を掲示した後は、退職希望者の申込みを受付、面談を進めていきます。文書での掲示、説明会の実施をおこなった場合においても、個別の面談は必須だと認識しておきましょう。

その理由は、今後のトラブル回避のためには、この段階までにいかに従業員に会社の経営状態への理解が得られるか、条件などを漏れなく伝えられるかという点が重要であるためです。
文書の掲示や説明会の実施でも伝えることは可能ですが、より深い理解を得るためには、希望者一人ひとりと腰を据えて向き合う時間を取るべきです。

なお、面談の担当者は、会社の経営実態を把握した幹部や役職者が望ましいでしょう。

辞令発令

退職日が決定された後、退職者へ辞令を発令します。退職者が退職届を提出、会社側が辞令を発令することで、締結されていた雇用契約は効力を失います。

辞令の交付は、可能であれば社長や幹部、役職者から直接手渡しすることをおすすめします。
その方が、人事担当者が事務的におこなうよりも、退職者も良い気持ちで会社を去ることができるでしょう。

今までの貢献に感謝の気持ちを伝え、送り出してあげましょう。

退職手続き

最後に、退職金の支給や社会保険喪失手続きなどの退職手続きや承認を進めていきます。主な手続き内容として、以下のものが挙げられます。

・離職票作成、退職者へ交付
・雇用保険被保険者資格喪失届の作成、届出
・退職者へ雇用保険証書、厚生年金保険手帳の返却
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の作成、届出
・退職者から健康保険被保険者証の受領
・退職者への貸与物の回収
・給与の清算
・退職金源泉徴収票を退職者へ交付
・給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届の提出
・人事データに退職日などを反映


あわせて読みたいおすすめの記事

  定年後の雇用を支援する制度「高年齢雇用継続給付金」とは 高年齢雇用継続給付金は、60歳以降に賃金がそれまでよりも下がった場合に受給できる雇用継続給付のひとつです。基本給付金と再就職給付金の2種類があり、雇用保険に加入していることや75%未満に賃金が低下している、などの受給資格が設けられています。 株式会社JTBベネフィット


早期退職優遇制度実施の注意点

社外秘と捺印された社外へ口外・持ち出し禁止の資料

早期退職優遇制度を実施する際には、あらゆるリスクを想定し十分すぎるほどの対策をおこなうべきです。過去には、退職者とトラブルに発展し裁判沙汰になったという企業の事例もあるため、安易な実施はおすすめできません。

会社の信用や資金の損失を回避するためにも、以下のポイントに注意していきましょう。


あわせて読みたいおすすめの記事

  早期退職のメリット・デメリットを解説!新しい早期退職のかたちも紹介! 近年、早期退職制度を導入する企業が増加しましたが、「自社でうまく取り入れられるだろうか」と懸念している企業もあるかもしれません。今回は、早期退職制度のメリットやデメリット、変遷まで紹介していきます。早期退職制度の実施を迷っている人事担当の方は、今回の内容を参考に検討してみてください。 株式会社JTBベネフィット

退職は会社の承諾を条件にする

早期希望退職の利用は、会社の承諾が得られることを条件とする旨をあらかじめ掲示しましょう。

しかし、いくらなんでも無条件に誰でも確実に利用できるとしてしまうと、会社側にとって必要な人材まで流出する恐れがありますので、条件を記載するなどで引き止める必要があります。
そのため、早期退職優遇制度の条件掲示の際には除外規定を設け、業務上、特に必要だと認められる従業員は除く旨を記載しておきましょう。

応募条件を定める際は計画的性と具体的性を定める

早期退職優遇制度の応募条件を決定する際には、長期的な計画と具体性をもっておこないましょう。

早期退職優遇制度では、割増退職金を退職者に支払うことになります。そのため、一時的ではありますが通常よりコストが増加し、経営を圧迫することになるでしょう。
持ちこたえられる程度のコストであれば問題ありませんが、経営の安定化を図って実施した早期退職優遇制度によって経営が悪化してしまっては本末転倒です。

そのため、募集人数や退職金の割増率など、細かい部分までシミュレーションする必要があります。

守秘義務を徹底

早期退職優遇制度では、従業員の退職後に起こり得るトラブルまで想定した対応が求められます。

退職者が会社のノウハウを流出させるなどのトラブルを未然に防止するため、必ず守秘義務契約を取り付けましょう。守秘義務契約を結んでいれば、万が一、退職者とトラブルに発展しても、会社の立場を守ることができます。

条件などの周知徹底

早期退職優遇制度を実施する際には、内容の周知を徹底しましょう。万が一、条件が誤認されると後々トラブルに発展しかねません。

また、早期退職優遇制度により退職が決定した従業員は、あとから別の方法で退職を希望することはできない旨の周知も必要です。
例えば、数期にわけて何度か募集をかけたり、希望退職制度が複数用意されていたりする場合は、「そんな話は聞いていない」、「もっと自分に有利な条件が適用される制度があるのではないか」などといった混乱が発生する可能性があります。

そのため、希望退職優遇制度の募集工程や早期退職制度の種類などについて、徹底的に周知するようにしましょう。


あわせて読みたいおすすめの記事

  「離職率」の平均を比較 角度を変えて見ると分かる職場環境の重要性 離職率の定義に触れた上で、年齢別、性別、新卒者の離職率の平均について解説します。また離職率と入職率の関係性や、離職率と入職率の業界別平均値なども紹介します。 株式会社JTBベネフィット


早期退職優遇制度導入の際は、不要な不安をあおらないことも大切!

早期退職優遇制度の実施は、通常の退職者対応よりも慎重に進めなければなりません。
今まで自社に貢献してくれた従業員に感謝と敬意を示し、送り出しましょう。
また、実施の際は自社に残る従業員に対してのケアも欠かせません。早期退職優遇制度の実施によって、自社の経営状態に対しての不安をあおり、想定外の退職者を生み出してしまう可能性もあります。

そこで、JTBベネフィットの選択制企業型確定拠出年金の導入支援サービス「確定拠出年金導入支援」や、従業員の心身の健康をサポートする「コンケア」を活用し、従業員が長期的に安心して働ける環境作りに着手してはいかがでしょうか?また、従業員の予期せぬ早期退職を防ぐための次世代の相談ツール「お気軽☆LINE」もおすすめです。

ぜひ、JTBベネフィットが提供する各種サービスの導入をご検討ください。


  企業型確定拠出年金導入支援サービス 選択制確定拠出年金は、社員自身の判断で拠出することを決定できます。 会社は、労使合意に基づいて、現行の給与の一定額を社員が確定拠出年金に拠出することが可能な給与体系へ変更をします。(ここでは、選択金と仮称します) なお、選択金は、原則として確定拠出年金法で定められている月の拠出限度額となるため、現在は、55,000円になります。 株式会社JTBベネフィット


  コンケア 従業員の日々のコンディションを見える化し、不調者の早期発見をサポートするサービスです。 株式会社JTBベネフィット


  お気軽☆LINE 若手の離職抑制に特化した次世代の新相談サービスです。 株式会社JTBベネフィット


あわせて読みたいおすすめの記事

  確定拠出年金(401k)とは何か?概要やメリット・デメリットをわかりやすく解説 確定拠出年金(401k)は企業年金のひとつで、会社や個人の掛金を従業員が自分で運用していく制度です。今回は、この確定拠出年金(401k)の内容を詳しくおさらいします。 確定給付企業年金や退職金との違い、導入による企業と従業員それぞれのメリット・デメリットも解説しますので参考にしてください。 株式会社JTBベネフィット


  リテンションの意味とは?人事や管理職が知っておきたいリテンション施策の効果について 優秀な人材を確保するための人事・経営戦略として、「リテンション施策」に注目が集まっています。リテンションとは、本来は「維持・保持」という意味の言葉ですが、人事・マーケティングでそれぞれが異なる意味として使われています。企業や組織において、人材確保のためにリテンション施策がなぜ必要なのでしょうか?今回は、リテンションの意味とリテンション施策が必要な理由、メリットと効果について解説します。 株式会社JTBベネフィット


記事検索

記事アクセスランキング

アーカイブ

カテゴリー一覧

タグ一覧