看護師離職率が高い理由とは?原因と対策を詳しく解説
看護師はとても離職率の高い職業の一つといわれていますが、実際の看護師離職率をご存知でしょうか。スタッフの離職は残った人員に負担がかかり、人員の補充も簡単ではありません。また、長年育成したスタッフが離職することは、医療の質の低下や新人の育成がおこなえないといった問題にもつながります。
そこで今回は、看護師離職率を低下させる方法を検討している人事担当者へ向けて、看護師離職率の現状やその原因から、離職率低下のための対策を紹介します。
目次[非表示]
- 1.看護師離職率の現状
- 2.看護師離職率の高い理由とは
- 2.1.復職が比較的簡単に可能なため
- 2.2.職場内での人間関係
- 2.3.結婚や出産といったライフステージの変化
- 2.4.スキルアップやキャリアアップを目的とした転職
- 2.5.仕事の負担量が多い
- 3.️看護師離職率の低下には福利厚生を充実させることが大切
- 3.1.夜勤・残業手当の充実
- 3.2.看護師のライフスタイルに合わせてサポートする
- 3.3.看護師とのコミュニケーションを取ること
- 3.4.スキルアップのための研修や勉強の機会を積極的に設ける
- 3.5.復帰しやすい労働環境を整える
- 3.6.勤務環境の改善
- 3.7.業務の見直しと効率化
- 3.8.有給休暇取得の促進
- 4.充実の福利厚生で高い離職率対策を!
看護師離職率の現状
まず、看護師離職率の現状を見ていきましょう。
公益社団法人日本看護協会が発表する「2019年病院看護実態調査」の回答によると、2018年度の正規雇用看護職員離職率は10.7%、新卒看護職員離職率は7.8%となっています。
過去5年間の病院看護職員の離職率の推移を見てもあまり変動がなく、厚生労働省発表の「2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要」での全産業の一般労働者の離職率11.4%と比較しても、看護師の離職率が特別高いという風には見えません。
しかし、近年の医療現場では慢性的な人手不足が続いています。その背景には、日本における少子高齢化の加速や地域包括ケアシステムの構築にあたっての在宅医療促進、次々に開発される最新技術や機器への対応などがあります。
「2018年病院看護実態調査」では、「訪問看護機能を有する病院の割合は約5割」という結果が出ています。医療現場において発生する業務に対し、人員は決して十分な状態ではなく、この先も人員不足が課題となるはずです。
また、株式会社クラレが小学6年生に将来就きたい職業のアンケート調査を実施しましたが、今年は男女ともに「医師」「看護師」「薬剤師」など医療従事者の順位が上がりました。
原因としては、新型コロナウイルス対策に影響を受けたものだと考えられます。
一方で、コロナ禍でも最前線で対応している看護師の現在は、いわゆる第3波といわれる急激な陽性者数の増加にともない、限界を超えた業務量を抱える状態の継続が原因で「コロナ疲れ」に陥り、感染症に対するリスクから心身に不調をきたし、離職や休職に追い込まれるケースが増えています。現在、新型コロナの重症者数が今までにないペースで増加していますが、重症患者への対応には計算上、通常の約3.5倍にあたる人数の看護師が必要で、これが元来慢性的な看護師の人手不足をさらにひっ迫し、自治体によっては自衛隊へ看護師の災害派遣を要請せざるを得ないというきわめて深刻な現状にあります。
離職率を深刻に捉え、今後、離職率低下のための取り組みをおこなわなければならないといえるでしょう。
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看護師離職率の高い理由とは
医療現場のニーズに対し、看護師の離職が高い理由には以下のようなものが挙げられます。
復職が比較的簡単に可能なため
医療業界は慢性的な看護師不足のため、様々な理由で離職したとしても比較的簡単に転職が可能となっています。
専門的な知識や経験が重要な看護師の雇用が流動的になると、戦力としての育成や新規採用におけるコストなどの面で現場にとって負担が大きいため、本来は長期雇用を目指すべきところです。しかし、コロナ禍以前から看護師不足である現状が新たな看護師不足を招くループが形成されてしまっている現状があります。
職場内での人間関係
職場内での人間関係を理由として離職する人が多いのは、どの業界・職場にも共通していえることです。
しかし、特に看護職はチームワークでの動きが重要で、閉鎖的な人間関係となりやすいことなどからコミュニケーションや人間関係に悩み、離職してしまう人も多くなっています。
結婚や出産といったライフステージの変化
近年は男性看護師も増加傾向にありますが、業界の傾向として、依然、女性の比率が高く、結婚や出産といったライフステージの変化をきっかけに離職する人も多く、看護師の離職理由ランキング1位といわれています。
また、育児をしながらハードな勤務をこなすのは難しいことから離職するケースもありますが、離職後に他業種へ転職する人は少なく、同じ業界で他の医療機関へ転職する傾向があります。看護師になるには国家資格が必要で、給与も比較的高いというのが理由ともいえるでしょう。
スキルアップやキャリアアップを目的とした転職
看護師は資格職・専門職のため、「プロとして専門性を高めたい」、「スキルアップしたい」といった向上心による理由によって転職を望む人も多くいます。
また、「自分の希望する業務に携われる」、「管理職として活躍できる」といった看護師としてのキャリア形成・ステップアップを目的として転職する人も同様に多い傾向にあります。
仕事の負担量が多い
看護師の業務量の多さはコロナ禍に始まった話ではありません。
特に、看護師不足の職場では、看護師1人あたりの業務量が過重になりやすく、十分な休息がとれない、勤務時間が長い状況など、心身ともに疲労がたまる労働環境であることが少なくありません。
辛い労働環境・条件などが理由で離職につながるケースも多くなっています。
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️看護師離職率の低下には福利厚生を充実させることが大切
他の職種と異なり、看護師が離職することは本人にとって決してマイナスではありません。
そのため、同じ医療機関で長く働いてもらうには待遇改善で囲い込みが必要です。
人員を確保できれば、採用にかかるコストを待遇面に充てることができ、従業員満足度の向上、ひいては従業員定着率の向上にもつながり、離職を防止することが可能です。
ここでは、看護師の離職防止のためにできる取り組みポイントを紹介します。退職率0%は容易ではないかもしれませんが、できるところから始めていきましょう。
夜勤・残業手当の充実
夜勤手当や残業手当を増やすことは、看護師のモチベーションアップにつながります。
夜勤手当の額は医療機関ごとに独自の基準で定めていますが、相場と照らし合わせて自医院の支給額が低い場合、他の医療機関に人員が流出し、退職する原因にもなります。
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看護師のライフスタイルに合わせてサポートする
看護業界でもワークライフバランスが重視される時代となっています。
そのため、一人ひとりのライフスタイルに合わせて勤務形態の見直しや時短勤務の採用、夜勤免除制度の導入など就業規定や業務実態を整備し、より多くの看護師が快適に働ける環境を作りましょう。
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看護師とのコミュニケーションを取ること
多忙な環境では、コミュニケーション不足による誤解やすれ違いが起こりやすいものです。しかし、日頃からこまめにコミュニケーションを取れば、看護師同士の人間関係による問題を早期発見し、方針の違いや理解の違いによる不満を解消することができます。
これには管理職が率先してコミュニケーションの活性化を働きかけ、円滑な人間関係の橋渡し役を買って出ましょう。
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スキルアップのための研修や勉強の機会を積極的に設ける
医療現場は研究が進むことで常に変化が求められるため、個人がスキルアップするためには日々勉強が必要です。
研修参加の推奨や、看護師の専門性を重視した業務を設けるなど、各看護師がスキルアップのために研修や学びの機会を設けることで、モチベーションアップにも効果的です。年代に合わせて新卒看護師向けや管理職向けの研修を設けても良いでしょう。
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復帰しやすい労働環境を整える
ライフステージの変化にともない、休職や離職した人が職場に復帰しようとする際に、看護業界の労働環境の厳しさが復職を阻む要因の一つとなっている可能性もあります。このような場合には、元々いた現場に復帰するのではなく、より柔軟性の高い働き方ができる職場への再就職を選択する看護師が多くなるでしょう。
病床数と看護師数のバランスや休日日数を整えることで、子育て世代も仕事に復帰しやすい労働環境が整い、たとえ休職や離職しても復職してもらえる可能性が高くなります。
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勤務環境の改善
医療現場は24時間365日体制ではありますが、予定に合わせて多様な勤務シフトを作ることで柔軟な働き方を実現させましょう。
勤務シフトが煩雑になるリスクや、そもそも人員が足りなければ実現することが難しいという課題はあるものの、多様な働き方を選択できる職場とすることで従業員の希望するライフスタイルや価値観の実現につながり、離職防止効果が得られるでしょう。
また、これまで働きたくても働けなかった人を雇用できる可能性も向上します。
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業務の見直しと効率化
IT化できるものはIT化し、業務効率化を図りましょう。データ同士が統合されていないのも医療業界の課題です。
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有給休暇取得の促進
医療現場は慢性的に人手が不足しやすく、有給休暇などは取得しづらい環境です。
しかし、休暇を取得しやすい環境や残業を減らす取り組みをおこない、ワークライフバランスを重視する従業員も働きやすい職場を作ることは離職防止に有効であり、看護師のロイヤルティ向上にもつながります。
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充実の福利厚生で高い離職率対策を!
一人ひとりがプロフェッショナルであることを求められる医療現場では、常に緊張感をもって業務に向き合う必要があり責任が重大です。人手不足によってさらに看護師の負担が多くなれば、離職につながることもあるでしょう。そのため、福利厚生の充実は離職率を下げる上で重要な要素といえます。
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