有給休暇の義務化にどう対応する?「有給消化率」を上げるために企業が行うべきこと

有給休暇の義務化にどう対応する?「有給消化率」を上げるために企業が行うべきこと

働き方改革関連法の成立に伴い、雇用をめぐる環境は刻々と変化しています。そんななか、いよいよスタートするのが有給休暇の取得義務化です。2019年4月からすべての企業において「年5日の有給休暇の確実な取得」が義務付けられます。この法改正に伴い、企業はどのような行動を取るべきでしょうか。これまで有給消化率が上がらなかった理由と、今回の法改正への対応策を解説します。

目次[非表示]

  1. 1.日本の有給消化率はなぜ低い?
    1. 1.1.有給消化率は約50%
    2. 1.2.日本の有給消化率は世界最下位
    3. 1.3.有給休暇を消化できない理由
  2. 2.有給休暇の義務化、その中身とは?
    1. 2.1.有給休暇の義務化の内容
    2. 2.2.義務化の対象となる人は?
    3. 2.3.罰則にも注意
  3. 3.有給休暇義務化のメリットとデメリット
    1. 3.1.従業員側のメリット
    2. 3.2.企業側のメリット
    3. 3.3.従業員側のデメリット
    4. 3.4.企業側のデメリット
  4. 4.有給消化率を上げるために企業が行うべきこと
    1. 4.1.計画的付与制度の導入
    2. 4.2.時間単位の取得も検討
    3. 4.3.有給を取得するためのきっかけを提供
    4. 4.4.有給を取得しづらい環境を改善
  5. 5.有給取得義務化を足掛かりに意識改革を

日本の有給消化率はなぜ低い?

有給消化率とは、企業が1年間に付与した有給休暇のうち、従業員がどれだけ取得したかを表す数字です。日本の有給消化率の低さはかねてより問題視されていましたが、実態はどの程度なのでしょうか。消化できない原因もあわせて見ていきましょう。

有給消化率は約50%

厚生労働省の統計によると、2017年の有給消化率は51.1%です。企業が付与した有給日数は平均18.2日となり、そのうち従業員が取得した日数は平均9.3日です。従業員数の多い企業ほど消化率が高い傾向にあり、従業員1,000人以上の企業では58.4%、従業員30~99人の企業では44.3%と、約14%の開きが出ています。

日本の有給消化率は世界最下位

この有給消化率は諸外国と比較してどうなのでしょうか。Northstarが2018年に行った有給休暇の国際比較調査によると、世界19ヶ国中、日本の有給消化率は3年連続最下位です。消化率100%の国は、ブラジル、フランス、スペイン、ドイツ、香港、タイとなっています。また、ブラジル、フランス、スペイン、ドイツにおいてはその支給・取得日数は30日で、ワースト2位であるオーストラリアは支給日数が20日、取得日数が14日で消化率は70%ですから、日本の消化率は圧倒的に低いと言えるでしょう。

有給休暇を消化できない理由

日本の有給消化率はなぜ低いのでしょうか。厚生労働省の年次有給休暇取得促進特設サイトにまとめられた意識調査を見てみると、約6割の人が有給休暇の取得にためらいを感じていると答えています(「ためらいを感じる(22.6%)」と「ややためらいを感じる(41.1%)」の合計)。その主な理由がこちらです(複数回答可)。

■みんなに迷惑がかかると感じるから…73.3%
■後で多忙になるから…47.5%
■職場の雰囲気で取得しづらいから…28.2%
■上司がいい顔をしないから…15.2%
■昇格や査定に影響があるから…9.3%

上記から、業務体制や業務量の問題、職場や上司の理解不足など、あらゆる課題が見えてきます。


有給休暇の義務化、その中身とは?

政府は2015年に発表した第4次男女共同参画基本計画において、2020年までに年次有給取得率を70%まで引き上げることを目標に掲げています。しかし先述のとおり、有給消化率は低調続きです。その打開策として投じられたのが今回の有給休暇の取得義務化です。2019年4月1日から、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が以下のルールで運用されます。

有給休暇の義務化の内容

企業規模にかかわらずすべての事業所は、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、「最低でも年5日の有給休暇を取得させる」ことが義務付けられます。事前に従業員の意向を聞き、それを踏まえて企業は「取得の時季を指定」して従業員に有給休暇を取得させるといったルールです。

有給休暇は原則として従業員が時季を指定して取得するものですが、言い出しづらい環境やためらいによって、消化できないというのが現状です。今回の法改正では「企業が有給休暇の取得を促す仕組み」が加わったと考えるとよいでしょう。

ただし、すでに年5日以上の有給休暇(計画年休も含む)を取得済みの従業員は義務化の対象になりません。例えば、従業員が自ら時季指定をして2日、計画年休によって2日、合計4日の有給休暇を取得した場合、企業は残りの1日に対して時季指定をすることになります。

義務化の対象となる人は?

年10日以上の有給休暇が付与される従業員はすべて義務化の対象となります。下記に該当するパートタイム従業員はもちろん、労働時間の規制がない管理監督者、高度プロフェッショナル制度対象者も含まれる点がポイントです。
具体的には以下のとおりです。
■継続勤務6ヶ月以上のフルタイム勤務の従業員
■継続勤務3年6ヶ月以上の週4日勤務のパートタイム従業員
■継続勤務5年6ヶ月以上の週3日勤務のパートタイム従業員
フルタイムで働く従業員は、入社後6ヶ月が過ぎると年10日の有給休暇の権利が生まれます。一方、パートタイム従業員の有給権利は勤務日数によって異なり、週2日以下の場合は有給休暇の付与が最大年7日となるため、今回の義務化においては対象外となります。パートタイム従業員の場合は、年次有給休暇の日数が所定労働日数に応じて付与されるため、確認しておくとよいでしょう。

罰則にも注意

違反した場合は罰則が設けられている点もポイントです。対象となる従業員に年5日の有給取得をさせなかった場合、企業側に一人当たり最大30万円の罰金が科せられます。ただし、すぐに罰則が発生するというよりは、是正に向けて指導し、改善を図るというのが労働基準監督署の考えのようです。


有給休暇義務化のメリットとデメリット

有給取得の義務化によって、従業員と企業にはどのような影響があるのでしょうか。従業員側と企業側それぞれのメリット・デメリットを考えます。

従業員側のメリット

■モチベーションがアップする
■ワーク・ライフ・バランスが整う
■作業効率がアップする

休暇は心身の疲労を回復させ活力を生み出すものです。きちんと休みプライベートを充実させることで、仕事への意欲も上がります。また、休暇を踏まえたスケジュールを組むことで時間管理能力が身に付き、作業効率が上がることもあるでしょう。

企業側のメリット

■企業パフォーマンスの向上が期待できる
■離職率が低下する
■残業コストの低減も期待できる

従業員のモチベーションアップは企業パフォーマンスにも良い影響をもたらします。ワーク・ライフ・バランスが整えば離職防止にもつながりますし、それを周知させれば採用面でも有利です。また、日々の作業効率が上がれば残業代の削減にも期待できます。

従業員側のデメリット

■社内環境が整わなければ別日の業務負荷が増す
■職場の雰囲気が変わらなければ有給を取ること自体がストレスに

有給は取得できても、それに見合う社内整備が整わなければ、逆にストレスが増える可能性があります。義務化のシステムだけが先行しないよう十分注意が必要です。

企業側のデメリット

■従業員にストレスが生じれば企業パフォーマンスが低下する
■作業効率が上がらなければ残業コストが増加する

有給休暇の義務化に対応するためには、それに備えた社内整備が必須です。変化のタイミングでは一時的に混乱が生じる可能性もありますが、中長期的な視野を持って取組んでいきましょう。


有給消化率を上げるために企業が行うべきこと

それでは、有給の取得義務化に対応するために、企業はどのような対策を取ればよいのでしょうか。四つに絞って解説します。

計画的付与制度の導入

計画的付与制度(計画年休制度)とは、労使協定を締結することにより、有給日数のうち5日を除いた日数については計画的に付与することができる制度です。これにより労務管理がしやすくなり、導入している企業は有給消化率が高い傾向にあります。

個別対応も可能ですが、年末年始など比較的休暇を取りやすい時季に一斉に付与したり、部署ごとの繁忙期に合わせて付与したりするケースが多いようです。

時間単位の取得も検討

有給休暇は1日単位で付与するのが原則ですが、労使協定を締結することで、年5日の範囲内で時間単位の取得が可能です。1日の所定労働時間×5日で計算し、1時間未満の単位については切り上げるルールで運用します。

丸1日休むよりも周囲への影響が少ないため、従業員は有給を取得しやすくなります。数時間だけ子どもの学校行事に参加したり、親の介護で病院に付き添ったりと、プライベートの用事にフレキシブルに対応できる点が特徴です。

有給を取得するためのきっかけを提供

上記の制度を用いて有給取得を促しても、いつ、どのような目的で使えばよいのか迷ってしまう従業員もいるはずです。そこで注目したいのが、福利厚生の一環として、具体的な活用例を提示した有給制度を導入するという方法です。

例えば、プロジェクトが終了したタイミングで休暇を取る「プロジェクト休暇」や、セミナーや勉強会に参加するために休暇を取る「ライズ休暇」。あるいは、恋人や家族の誕生日に休暇を取る「LOVE休暇」や、親孝行のための「親孝行休暇」などがあります。こうしたユニークな休暇制度は社内で話題に挙がりやすいため、有給取得の意識付けに大いに役立ちます。

休暇制度の事例は、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」でチェックすることができます。

有給を取得しづらい環境を改善

周囲に迷惑が掛かることを懸念して有給取得をためらう従業員が多いということは、ほかのメンバーに負荷がかからない仕組みを作ることが必須であるということです。業務を共有し、交代制で担当できる業務フローを確立させましょう。また、そもそも休暇を取れないほど業務が多いのであれば、業務計画そのものを見直す必要もあります。

各部門の管理職とすり合わせ、実態に基づいた環境改善に着手するといいでしょう。そうすることで管理職の意識も変わり、「休みにくい雰囲気」も改善されていくはずです。


有給取得義務化を足掛かりに意識改革を

日本では長らく「有給は取れなくても仕方がない」というような風潮がありました。そこに一石を投じる今回の義務化は、従業員が自分の働き方を見つめ直すきっかけにもなります。「年5日の取得」という義務をクリアすることを目的にするのではなく、「良い仕事をするためには有給休暇が必要だ」という意識を一人ひとりに浸透させることが重要です。その風土の礎を築く人事の役割は、とても大きなものと言えるでしょう。


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