離職率が低くければホワイト企業?ランキングだけではわからない、転職者や社員がつける企業評価基準の実態
この記事のまとめ
・ホワイト企業の条件は人それぞれだが、「働き続けたい」と思える環境づくりが重要
・ホワイト企業の中でも部署や上司によって状況が異なる場合もある
・ホワイト企業は採用活動や会社のブランドイメージ向上に高い効果がある
・「離職率」「福利厚生」「評価制度」がホワイト企業の3大キーワード
目次[非表示]
ホワイト企業とは? 〜会社の評価は何をもって決まるのか〜
ホワイト企業とは
ホワイト企業には明確な定義がありません。
ホワイト企業の要件や特徴には、傾向があるにせよ人それぞれ感じ方が異なるということです。
その一方で、「長く働き続けたいと思う会社」は一定の共通事項(※)だといえます。
それでは、国や就転職者がイメージするホワイト企業を確認していきましょう。
※独立や転職を前提としたキャリアステップの場合は、この限りではありません。
厚生労働省の見解
ホワイト企業について、国はどのような認識を持っているのでしょうか。厚生労働省は「安全衛生優良企業」の認定制度を設けており、この認定を受けた企業は以下にある「ホワイトマーク」を取得することができます。
安全衛生優良企業の要件は、以下の(1)〜(5)が十分に満たされていることです。
(1)過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がない等の基本事項
(2)労働者の健康保持増進対策
(3)メンタルヘルス対策
(4)過重労働対策
(5)安全管理
ここでは、労働者の心身における健康管理に重きが置かれていることがわかります。
メンタルヘルス対策には、長時間労働や休日出勤が少ない、ストレスを引き起こすような未経験で難しい業務を割り振られることがない、ハラスメント行為が起きていないなど、労働者のワークライフバランスが保たれていることが挙げられます。
現在、コロナ禍で推奨されているテレワーク(在宅勤務)や時差出勤も、感染拡大防止のため人との接触機会を減らす安全配慮義務から導入されていますので、健康管理を含む健康経営に対して積極的に取り組む企業は、ホワイト企業であると認定される傾向にあります。
この基準をクリアした認定企業の一覧は厚生労働省のHPで確認できます。
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就転職者が会社に求めること
新卒就活生が考えるホワイト企業とは
次に就活生が考えるホワイト企業を具体的に確認していきましょう。
2019年に実施された株式会社ディスコの調査によると、就活生がホワイト企業だと思う条件は、「有給休暇を取りやすい」「福利厚生が充実している」「離職率が低い」ことを重視していることがわかります。
参照:株式会社DISCO 就活生に聞いた「ブラック企業/ホワイト企業」への考え
転職希望者が考えるホワイト企業とは
次に、転職者が転職したいと思う企業の条件や特徴を具体的に確認していきましょう。
多くの統計データで、転職の条件「給与UP」が1位にランクインしています。
「給与」とは「労働の対価」のことなので、自分の労働や能力が適切に評価されていないと感じる社員が転職する傾向にあることがわかります。
株式会社プラストが実施した「転職に関するアンケート調査」では、転職の際にあえて給与以外で重視することに対して質問したところ、「休暇などの福利厚生制度」が48.8%、「希望職種で勤務できるか」が17.7%、「フレックスタイム制度」が14.0%とあり、転職時においてもワークライフバランスが重視されていることがわかります。
就職者や転職者が重視する項目(=社員が企業に留まる上で重要な項目)を確認すると以下のようになり、これらの点は厚生労働省の見解ともほぼ一致しています。
・低い離職率
・福利厚生の充実
・適切な評価制度
・有給休暇を取りやすい風土
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ホワイト企業ランキング元社員が語る ~ランキングだけでは見えてこない実態~
ホワイト企業ランキングは就職先や転職先の検討材料になりますが、ホワイト企業に入れば必ず期待する環境が用意されていると考えて良いのでしょうか。
そこで、ホワイト企業、ブラック企業と認知される会社で働いていた元社員にお話を伺いました。
2020年度版のホワイト企業ランキングTOP5の会社の元社員インタビュー
Q .ホワイト企業ランキングに毎年ランクインし、実際のところ離職率も1%に満たない会社ですが、働きやすさを実感しましたか?
A .働く環境は良かったです。一方で必ずしも全ての部署がホワイトかというと、そうではありません。部署によっては月残業が100時間を超える場合や、ホワイトなイメージとは程遠い上司がいる部署もあります。当然、うつ病などによって休んでいる社員もいました。
また、離職率についても、キャリア形成における積極的な転職も多いので、必ずしもネガティブな数字ではないと思いますし、IT業界の友人は頻繁に転職をしています。
Q.ホワイト企業の場合、問題のある部署や上司(環境)は是正されるのでは?
A.ホワイト企業ランキングの結果一覧を見ると大手の会社が多いのですが、例えば従業員が1万人を超えてくれば、人事が全ての部署の「働く環境」を詳細に把握することは不可能に近いです。数字で残業は把握できますが、現場にしかわからない事情を並べられると、人事はそれ以上踏み込めないケースもあります。
このような背景で、部や課による独立したマネジメントとなることが多く、会社全体として「ホワイト」といわれていても、それは配属される部署や上司によって異なる、というのが実態ではないでしょうか。
ブラック企業大賞に選ばれたことのある会社の元社員インタビュー
Q .ブラック企業と認知されていますが、いわゆる「ブラック」な職場環境でしたか?
A.いえ、全くです。新卒で入社してから8年間、残業も月平均10時間ほどで、プライベートの時間を充実させた日々を過ごしていました。あるきっかけでブラック企業扱いされるようになりましたが、私も含め多くの社員がブラックである実感がなかったと思います。
Q .転職された理由は?
A.私自身は営業でしたが「もっと厳しい環境で自分を試したい」と思い、転職しました。転職の面接時も「前職の仕事は激務でしたか?」と聞かれてびっくりしたことを覚えています。
お二人の話はあくまで一例ですが、ホワイト企業に入ったから働き続けたい環境が整っていたり、ブラック企業だと必ず厳しい環境が待っているわけではないことがわかりました。
一方で、会社としてホワイト企業と認識されることには多くのメリットがあることも事実です。例えば、人材の確保に関しては圧倒的に有利に働く上に、ビジネス上でも提携や取引に際してそのブランドイメージは強みになります。
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社員や就転職者が評価するホワイト企業の特徴 その1〜離職率が低い〜
先ほど紹介したホワイト企業の特徴となる項目とその対策について、具体的に確認していきましょう。
まず、離職率が低いことは、CSR(社会的責任)上でも大切なことです。離職率は口コミと異なり「数字」で表れるために、非常に強いインパクトを持った指標となります。従業員が少ない会社にとっては、離職者数ではなく離職率で評価される点は不利であることも事実ですので、なおいっそうの従業員定着率向上の対策が必要です。
しかし、離職率が高い企業ほど採用に焦ってしまい、せっかく採用した人材がまた離職してしまうという悪循環が生まれています。これにはどのような対策を打つべきか、具体的に確認していきましょう。
離職する社員にその理由を詳しくヒアリングする
離職を希望する社員に、可能な範囲で離職理由を聞くことは非常に重要です。
離職理由に対しては会社で改善可能で、当該社員も納得するのであれば離職を防ぐこともでき、離職理由を把握することで社内の問題点を認識することができます。
社員が会社に望む条件を理解して職場の環境改善を図る
把握した問題点について、改善を図ることが大切です。しかし、時間を要する改善項目が多いケースがほとんどですが、さらなる離職はより状況を悪化させますので、リソースを割いてでも優先度をあげて対応することが必要です。また、環境を改善しないと、新たに採用した社員がまたすぐに離職してしまう可能性もあります。
採用時に就転職者の期待値と会社の実態や期待値を徹底的にすり合わせる
短期的な改善として、就転職者と会社間における期待値のすり合わせを強くおすすめします。求人に際しての募集要項作成や採用面接の時に、ネガティブな情報であっても会社の実態や、社員に求めることをしっかりと伝え、就転職者の会社に対する期待値を現実的な目線に調整した上で、自社に必要な人材か見分けることで離職リスクの低減が可能です。
ネガティブな情報を伝えることで、就転職者の自社への志望度が落ちてしまう可能性はありますが、離職者が出た場合の採用コストや採用にかかる時間を比較すると、必要な実施事項となります。
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社員や就転職者が評価するホワイト企業の特徴 その2 〜福利厚生の充実〜
先ほどの職場環境の改善にもリンクしますが、福利厚生の充実は、社員や就転職者が会社に求める項目としてあらゆる調査で上位にランクインしています。
ひとくちに「福利厚生」といっても、どのようなサービスが人気なのでしょうか。
あってよかった福利厚生ランキングTOP3
順位 |
福利厚生サービス |
1位 |
食堂、昼食補助 |
2位 |
住宅手当、家賃補助 |
3位 |
余暇施設、宿泊施設、レジャー施設などの割引制度 |
出典:マンパワーグループ株式会社 「実際にあった福利厚生でよかったと思うもの」
食堂や住宅など生活インフラに関わるものは根強い人気がありますが、導入にコストがかかることが特徴です。一方で、3位の余暇、宿泊施設、レジャーなどの割引については、アウトソーシングにより安価で容易に導入することが可能です。
有給休暇の取得日数が最低でも5日と義務化された現在、有給休暇と一緒に使うことができる宿泊やレジャーといった福利厚生制度を整備することで、従業員満足度が格段に高くなります。
また、女性への待遇面について、ホワイト企業では手厚い傾向があり、「育児休暇」「スキルアップ」がそれぞれ4位、6位とランクインされています。特に、20代、30代においては育児休暇制度を求めている傾向が高く、辞めることなく仕事を続けるために必要としています。一方で40代はスキルアップの需要が高いです。
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社員や就転職者が評価するホワイト企業の特徴 その3 〜社員が納得感を得る評価制度〜
転職目的の1位が給与UPであることは先ほどの統計でも説明しましたが、給与や年収が低いと感じる理由は、社員が給与も含めた評価制度に納得していないことを意味します。
社員のモチベーションを維持、向上させるためにも評価制度を見直すことは重要ですが、人事制度を根本から変えるには非常に大きな労力が必要になります。
そこで最近ではインセンティブ制度を導入し、評価制度全体の見直しではないにしても、成果を出した社員を評価する仕組みを取り入れる会社が多くあります。
外部のインセンティブ制度は、会社にかかる負担も圧倒的に小さい上に、安価に導入することが可能という大きな存在です。
インセンティブ制度を導入する際のポイントは、相対的に成果をあげた社員だけでなく、以下のように様々なインセンティブ条件を設けることです。これにより、多様な社員のモチベーションを向上させることが可能になります。
・成果は出なかったが努力を続けた社員
・個人的にパフォーマンスがあがった社員
・ユニークな発想で部署内に変化をもたらした社員
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まとめ
いかがでしたでしょうか。ホワイト企業の概要や実態、ホワイト企業と認知されるためのポイントとその対策について詳しく紹介しました。
今回のポイントは以下の4つです。
この記事のまとめ
・ホワイト企業の条件は人それぞれだが、「働き続けたい」と思える環境づくりが重要
・ホワイト企業の中でも部署や上司によって状況が異なる場合もある
・ホワイト企業は採用活動や会社のブランドイメージ向上に高い効果がある
・「離職率」「福利厚生」「評価制度」がホワイト企業の3大キーワード
本記事に登場した福利厚生サービスの一例
本記事に登場したインセンティブ制度の一例
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