介護離職の理由は何か?原因を知り正しく対策する

​​​​​​​​​​​​​​介護離職やダイバーシティなどに課題を持ち悩む人事担当者の従業員

人手不足・労働力不足の中で、家族の介護や看護を理由に離職する人材が一定数存在している現状があります。介護離職をする人は40代以上が多く、企業にとっては重要な人材を逃すことになります。介護離職が課題で、その原因を知って解決につなげたい人事担当者は多いでしょう。

そこで今回の記事では、介護離職に悩む人事担当者へ向けて、介護離職が減らない理由や介護離職にともなって起こり得る問題、介護離職を防ぐために企業が実践すべき取り組みを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.統計に見る介護離職の理由は?
    1. 1.1.少子高齢化による介護負担増
    2. 1.2.要介護者の増加による介護負担増
    3. 1.3.女性の介護負担が大きい
    4. 1.4.介護と両立できない労働条件
    5. 1.5.支援制度があっても申請できない
  2. 2.介護離職がもたらす問題
    1. 2.1.労働力が不足する
    2. 2.2.中堅従業員の持つ経験や人脈が失われる
    3. 2.3.育成コストが回収できない
    4. 2.4.離職者は経済的に困窮するケースが少なくない
  3. 3.国による介護離職への対策
    1. 3.1.介護休業制度
    2. 3.2.介護休暇制度
    3. 3.3.介護休業給付金
    4. 3.4.短時間勤務制度等の措置
    5. 3.5.時間外労働の制限
    6. 3.6.深夜業の制限
    7. 3.7.配置転換の制限(転居免除)
  4. 4.介護離職をどう防ぐか
    1. 4.1.柔軟な働き方を取り入れる
    2. 4.2.実態の把握と啓蒙に努める
    3. 4.3.介護の支援制度を利用しやすい環境を整える
    4. 4.4.従業員が気軽に相談できる窓口を設置する
  5. 5.従業員のニーズに合った施策で介護離職を防止する

統計に見る介護離職の理由は?

介護離職が改善されないのは、何が原因なのでしょうか。統計から離職理由を探ってみましょう。

少子高齢化による介護負担増

内閣府の「令和3年版 少子化社会対策白書」によると、少子高齢化が進む日本では、生涯未婚率(50歳時未婚割合)が急速に高まっており、男性が2000年、女性が2010年に全体の10%超となり、2015年には男性が23.4%、女性が14.1%でした。2040年にもなると生涯未婚率の割合は男性が全体の約30%、女性は約20%と推測されています。
また、株式会社大和総研の「介護離職の現状と課題」では、年齢階級別の共働き世帯比率は40歳前後から50歳前後が最も高く、夫婦とこどもだけの世帯でも共働き世帯比率は過去10年で増えています。

要介護者の増加による介護負担増

介護保険制度における「要介護又は要介護者等」は、内閣府の「令和3年版高齢社会白書」によると2018年度末で645.3万人です。これは、2015年度末では606.8万人となっており、2003年度末の370.4万人から236.4万人増えています。単身者や結婚はしているものの共働き世帯の増加と合わせて考えると、家族内で介護を担える人が不足していると考えられます。
また、前述の少子化や生涯未婚率の増加にともない、家庭内の介護人材が不足しているため働きながら介護をおこなう人にとって、仕事と介護を両立することによる負担は大きいと考えられます。周囲のサポートを十分に受けられないこともあり、介護離職を選択せざるを得ないケースが増えているのです。

女性の介護負担が大きい

共働きの家庭では、女性に介護負担が集中することで離職につながる特徴があります。
2016年に厚生労働省がおこなった調査結果では、介護をおこなっているのは「配偶者」が25.2%、「子」が21.8%、「子の配偶者」が9.7%で、同居している主な介護者のうち女性の割合は66.0%でした。
2017年の非正規雇用労働者の割合は女性が55.5%、男性が21.9%であり、各家庭の取り決めや女性自身の意思を考慮しても、働く意思があるものの育児や介護によって離職せざるを得ない女性は男性と比較して依然として多いといえます。

介護と両立できない労働条件

時間の融通が利かない労働条件では、介護と仕事を両立することはできません。

支援制度があっても申請できない

介護休暇制度などの制度があっても、職場がそれを受け入れる雰囲気ではないため利用できない人という人も少なくありません。
介護職で制度を利用できなかったことが原因で離職となれば、企業にとってはかえって人手が不足し、新たに人材を採用して育成するコスト増というダメージが大きくなります。やはり、労働環境の整備や業務効率化、従業員のリテラシー向上を目指した教育の実施などが必要になるでしょう。


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介護離職がもたらす問題

介護疲れや長時間労働でパソコンを見る目に疲労がある男性従業員

ここからは、介護離職によって起こり得る問題を見ていきましょう。介護離職によって起こる問題は、決して小さいとはいえないものばかりです。

労働力が不足する

従業員の離職は、結果として労働力不足に直結します。介護を理由に離職せざるを得ない職場であれば、今後、同じ状況になった従業員も離職を選択する可能性が高いです。

中堅従業員の持つ経験や人脈が失われる

介護人材のメイン層は、40代以上です。
この年代の労働者は企業にとって重要な戦力であることが多く、豊富な経験や人脈を持つ大切な従業員の離職は企業にとって大きな痛手です。

育成コストが回収できない

会社の基盤となる従業員の育成は投資であり、企業を発展させるために入社時から時間をかけてさまざまな教育や研修を施します。長年コストをかけて育ててきた人材が介護離職をすれば、育成コストが回収できないことになり、企業にとって大きな損失となります。

離職者は経済的に困窮するケースが少なくない

介護離職をした従業員自身は、離職によって生活が困窮するケースが少なくありません。
自分の安定した収入の柱がなくなれば、利用できる介護サービスが少なくなります。介護者が40代以降であれば、親が亡くなった後、経済的に苦しくなってしまうケースが多いのです。


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国による介護離職への対策

ここからは、国が主導しておこなっている介護離職対策のポイントを紹介します。
以下の制度は育児・介護休業法によって定められており、管理者や人事担当者は必ず把握しておくべき制度です。

介護休業制度

家族の介護を目的に、通算93日までの休みを3回まで分割して取得できる制度です。対象となる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。有期契約労働者も条件を満たすことで取得することができます。介護休職中の給与の支払いは企業によって対応が異なりますが、無給とするところが多いです。

介護休暇制度

介護を必要とする家族1人につき1年に5日、対象となる家族が複数の場合は1年に10日の休暇を取得できます。介護休業との違いは、時間単位または半日単位での休暇取得ができる点です。対象となる家族は介護休業制度と同じですが、介護休暇制度は短時間から取得できます。

介護休業給付金

雇用保険の被保険者が復帰を前提に介護休業を取得する場合、一定の要件を満たすと介護休業給付を受給できます。有期契約労働者も、条件を満たすことで受給できます。

【計算式】
介護休業給付金制度で得られる支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67%

短時間勤務制度等の措置

企業は家族の介護をおこなう従業員に対し、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤制度、介護サービス費用の助成のいずれかの措置を講じなければならないと定められています。要介護状態にある対象家族1人につき、介護休業をした日数と合わせて、少なくとも93日間は利用できるようにする必要があります。

時間外労働の制限

要介護状態にある家族を介護する従業員には、原則として1ヶ月で24時間、1年で150時間を超えて時間外労働をさせてはなりません。

深夜業の制限

要介護状態にある家族を介護する従業員には、午後10時から午前5時の深夜労働をさせてはなりません。

配置転換の制限(転居免除)

就業場所が変わることで介護が困難になる従業員に対しては、介護の状況に配慮し、配置転換や転勤をともなう異動を制限する必要があります。


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介護離職をどう防ぐか

企業や組織が抱えるさまざまな課題に対して解決へ向けた提案をする従業員

介護離職を防ぐためには、「制度を利用できる」だけでは不十分です。ここでは、現場で介護離職を防ぐために企業が実践すべき施策を紹介します。

柔軟な働き方を取り入れる

介護職員は労働時間や勤務地などに幅を持たせることで、仕事と介護を両立しやすくなります。介護ではヘルパーや施設の利用時間に制限があることや、通勤時間が負担になりやすいことなどから、従来の画一的な働き方では離職を選ばざるを得ないケースが多くなりますので、テレワークでの勤務も効果的です。

実態の把握と啓蒙に努める

事業所では、支援制度を利用しにくい雰囲気がないか、配置や業務内容によって介護をおこなう従業員に負担がかかっていないかなどを調査して問題を早期発見し、対策を講じる必要があります。また、その姿勢を経営陣や上司が率先して従業員に示し、従業員の介護に対する理解とリテラシーの向上を図ることで、離職率の低下を目指しましょう。

介護の支援制度を利用しやすい環境を整える

国や企業が運営する制度は、存在するだけでは意味がありません。人間関係やコミュニケーションなどの悩みを気兼ねなく利用できる職場環境を整えましょう。そのためには、日頃から業務効率化をおこなって無駄な業務を削減することや、上層部を主体とした従業員への啓蒙が重要となります。

従業員が気軽に相談できる窓口を設置する

仕事と介護の両立は心身を疲弊させるため、職場にメンタルヘルスケアや介護に関する制度について不安や不満を相談できる窓口を設置することも効果的です。相談窓口を設置して有効に機能する状態を作れば、それ自体が介護をおこないながら働く従業員への理解を深めることにつながります。プライバシーに配慮し、匿名で相談できる窓口を設置しましょう。


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従業員のニーズに合った施策で介護離職を防止する

企業にとって、介護離職は頼りになる人材を失うという「損失」に他なりません。介護の負担が大きく離職を検討せざるを得ない従業員を未然に防ぐためには、従業員のニーズに合わせて職場の制度や環境を整えることが重要です。介護離職防止の例として、ホームヘルパーや有料老人ホームの利用斡旋、電話やSNSによる介護相談などがあげられます。

昨今は人生100年時代というように、平均寿命は延び続けているのと同時に雇用年齢も延長されており、幅広い世代が社会で活躍できる世の中になりました。年齢層が偏ることなくどの世代でも働ける企業は、人手不足に陥ることが少なく、その世代特有の固定概念を持たずお互いを受け入れて柔軟に対応していることと、世代に応じた得意領域を活かせることから、企業全体の生産性が高い傾向があります。さまざまなライフステージの従業員に無理なく快適に働いてもらうためにも、従業員のニーズに合わせた制度や環境を構築しましょう。


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