定年後の雇用を支援する制度「高年齢雇用継続給付金」とは

定年後の雇用を支援する制度、「高齢者雇用継続給付金」とは

※この記事は2020年10月7日に更新しました。


60歳以上65歳未満の被雇用者が受けられる「高年齢雇用継続給付金」という制度があります。これは、働く意欲と能力のある高年齢の方に対して、雇用の継続を援助、促進するための制度です。本記事では、申請方法やどのような人が対象になるのかなど、具体的に解説します。

目次[非表示]

  1. 1.高年齢雇用継続給付金とは?
    1. 1.1.高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の違い
  2. 2.申請・受給におけるポイント
    1. 2.1.資格・条件
    2. 2.2.金額・計算方法
    3. 2.3.申請先
  3. 3.高年齢雇用継続給付金早見表
  4. 4.注意しておくべきこと
    1. 4.1.60歳未満は対象外
    2. 4.2.ボーナス支給月には申請できないケースも
    3. 4.3.年金が減額されることがある
    4. 4.4.他の雇用継続給付との併用には注意が必要
    5. 4.5.高年齢雇用継続給付金は非課税
  5. 5.2025年以降は段階的廃止へ
  6. 6.高年齢雇用継続給付金の理解を深めておこう

高年齢雇用継続給付金とは?

高年齢雇用継続給付金とは、60歳到達時点の賃金と比べて60歳以後の賃金が75%未満に低下した場合に給付される給付金のことです。例えば、30万円だった月給が60歳以降に20万円になるといったケースが想定されます(この場合は賃金が66.67%に下がっています)。この給付金は、働く意欲のある高齢者に対して、雇用の継続を支援するために設けられている制度です。

少子高齢化によって労働人口の減少が続く日本では、育児や介護、さらには年齢といった事情があっても仕事が続けられるよう、政府は「雇用継続給付」として、高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付の支援をしています。これは「職業生活の円滑な継続を援助、促進」することを目的としています。

60歳到達後、違う職場に転職した際にもこの制度を活用できます。


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高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の違い

高年齢雇用継続給付には二つの種類があります。

一つが「高年齢雇用継続基本給付金」、もう一つが「高年齢再就職給付金」と呼ばれるものです。両者の違いは基本手当(再就職手当など基本手当を支給したとみなされる給付を含む)を受けているかどうかです。高年齢雇用継続基本給付金は基本手当を申請していないことが条件となりますが、失業保険を申請していた場合には高年齢再就職給付金の受給資格者に該当します。どちらも60歳以上で、再就職・雇用継続に当たり、賃金が75%未満になっている人が対象で、最大15%までの給付を受けられるので月額の違いはありません。ただし、再就職の際の支給期間は最大で2年ですが、状況によっては1年未満となる場合もあるため注意しましょう。


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申請・受給におけるポイント

具体的な申請や受給に当たって押さえておきたい条件や計算方法などのポイントは以下のとおりです。

資格・条件

高年齢雇用継続給付金は雇用保険に加入していることが基本的な条件です。この場合の加入というのは過去に通算で5年以上の加入期間があることを指します。気を付けておきたいのが基本手当です。先述のとおり、高年齢雇用継続基本給付金を受給するには、退職しても基本手当を申請・受給していないことが条件です。

基本手当を受給している場合には、高年齢再就職給付金を受けることができますが、この場合には再就職日の前日時点で残日数が100日以上残っていることが条件となります。100日以上残っていれば1年、200日以上の場合には2年にわたって高年齢再就職給付金を受け取る資格が発生します。なお、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金ともに年齢としては60歳から65歳までが対象となります。

金額・計算方法

高年齢雇用継続給付金は、原則として60歳時点の賃金と比較して、賃金が75%未満になっていることが条件です。具体的な金額を算出するに当たってのキーは、どの程度下がったのかという「低下率」です。例えば前述のとおり、30万円から20万円に下がった場合であれば、低下率は66.67%となります。

低下率が61%未満の場合には60歳以降の賃金の15%が支給されます。一方、低下率が61%~75%未満の場合は15%よりも低い支給率になります(74.5%が最少で0.44%の支給、この範囲内での最大は61.5%の場合で14.35%の支給)。厚生労働省が公開している計算式は、以下のとおりです。


低下率61%~75%未満
支給額=-183÷280×新しく支払われた賃金+137.25÷280×賃金月額


低下率61%未満
支給額=新しく支払われた賃金×0.15


賃金月額は60歳到達までの6ヶ月の給与総額を180で割り(日額算出)、さらに30をかけて算出します。この際の給与はいわゆる手取りではなく「額面」となり、賞与(ボーナス)は計算から除きます。先の例では低下率が66.67%で、その場合、賃金月額は16,340円となります。同じ例で、もし新しい賃金が18万円であった場合、低下率は61%を下回るため、15%をかけた27,000円が支給額となります。

なお、支給には上限があり、新しい賃金が365,114円(2021年7月31日まで)を超える場合には低下率にかかわらず、基本給付金・再就職給付金のどちらも給付対象にはなりません。

申請先

申請は勤務する事業所を管轄するハローワークに対しておこなうことになります。企業側は受給資格の確認をおこない、申請者が対象であることが確認できれば、高年齢雇用継続給付受給資格確認票と(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書に必要事項を記入し、「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」、申請者の雇用と支払われた賃金を証明する書類、および申請者の身分証明書を添えてハローワークに提出します。申請者本人が直接ハローワークに提出することも可能ですが、原則としては企業を経由しておこなうものです。この申請は書面による手続きだけではなく、電子申請でもおこなえます。


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高年齢雇用継続給付金早見表

支給額の上限額・下限額は2020年8月1日~2021年7月31日までの金額です。

支給上限額(月額) 365,114円
支給下限額(月額)  2,059円
60歳到達時賃金月額の上限 479,100円
60歳到達時賃金月額の下限   77,220円


支給
対象月
の賃金
60歳到達時賃金
15万円
20万円
25万円
30万円
35万円
40万円
45万円
479,100円
以上
10万円
8,170円
15,000円
15,000円
15,000円
15,000円
15,000円
15,000円
15,000円
11万円

16,500円
16,500円
16,500円
16,500円
16,500円
16,500円
16,500円
12万円

18,000円
18,000円
18,000円
18,000円
18,000円
18,000円
18,000円
13万円

13,065円
19,500円
19,500円
19,500円
19,500円
19,500円
19,500円
14万円

6,538円
21,000円
21,000円
21,000円
21,000円
21,000円
21,000円
15万円


22,500円
22,500円
22,500円
22,500円
22,500円
22,500円
16万円


17,968円
24,000円
24,000円
24,000円
24,000円
24,000円
17万円


11,441円
25,500円
25,500円
25,500円
25,500円
25,500円
18万円


4,896円
27,000円
27,000円
27,000円
27,000円
27,000円
19万円



22,876円
28,500円
28,500円
28,500円
28,500円
20万円



16,340円
30,000円
30,000円
30,000円
30,000円
21万円



9,807円
31,500円
31,500円
31,500円
31,500円
22万円



3,278円
27,764円
33,000円
33,000円
33,000円
23万円




21,252円
34,500円
34,500円
34,500円
24万円




14,712円
36,000円
36,000円
36,000円
25万円




8,175円
32,675円
37,500円
37,500円
26万円





26,130円
39,000円
39,000円
27万円





19,602円
40,500円
40,500円
28万円





13,076円
37,576円
42,000円
29万円





6,525円
31,059円
43,500円
30万円






24,510円
38,760円
31万円






17,980円
32,240円
32万円






11,456円
25,696円
33万円






4,917円
19,173円
34万円







12,614円
35万円







6,090円


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注意しておくべきこと

最後に、注意すべき点をいくつかまとめました。

60歳未満は対象外

意外と見落としがちなのは、60歳時点での賃金の比較となるということです。例えば、58歳で退職して59歳時点で再就職したときの賃金が仮に75%以下であったとしても、高年齢雇用継続給付の対象にはなりません。

ボーナス支給月には申請できないケースも

高年齢雇用継続給付金は要件の合う月であれば毎月もらえますが、賞与(ボーナス)が支給される月は賃金が上がるため、「要件の合う月」にならず、高年齢雇用継続給付金を受給できない場合もあります。

年金が減額されることがある

高年齢雇用継続給付金を受給することで、年金の一部が停止になることがあります。
ここでいう年金とは、在職老齢年金のうち老齢厚生年金のことです。ここでも賃金の低下率が変わってくるのですが、具体的には61%以下の低下率の場合、最大6%の年金が支給停止となります。61%を超える低下率については、高年齢雇用継続給付金の支給と同じく段階的に変化していきます(62%なら5.48%の支給停止率となり、最少は74%で0.35%)。厚生年金は60歳から受給開始が可能ですが、高年齢雇用継続給付金と併用する場合には総合的にデメリットとなってしまうことも考えられます。申請前に金額を詳しく確認しておくとよいでしょう。

他の雇用継続給付との併用には注意が必要

冒頭でも紹介した「育児休業給付」や「介護休業給付」が受給可能である場合、休業によって高年齢雇用継続給付金は支給対象月から外れます。ただし、月の一部のみを育児・介護のために休業した場合には、高年齢雇用継続給付金も受け取れる可能性があります。

高年齢雇用継続給付金は非課税

高年齢雇用継続給付金は課税の対象にはなりません。


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2025年以降は段階的廃止へ

2019年12月20日の「第137回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」において、高年齢雇用継続給付金は段階的に縮小することが適当であるとの見解が示されました。
その理由として、2019年度に約8割の企業で希望者が65歳以上まで働けるようになっていることと、今後は高齢の労働者を含め同一労働同一賃金が適用される見込みであること等が挙げられます。2025年度に60歳に達する人から給付率を半減させ、いずれは廃止されるとのことですから、高齢者が多く含まれる企業では早目の対応が求められるでしょう。


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高年齢雇用継続給付金の理解を深めておこう

高年齢雇用継続給付金は、ほかの給付金とあわせて「雇用継続」のために設けられているものです。少子高齢化が進み労働人口が減少していくなか、定年後の雇用についても企業はしっかりと準備しておかなくてはなりません。そのための基礎知識として、高年齢雇用継続給付金の中身や手続き方法についても正しく理解しておきたいものです。


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